つれづれ話
「正しい音」

 「正しい」って表現は適切でないような気がするんだけれども。

 ディスクオルゴールの大半は、100年ほど前に作られた骨董品なわけですが、「オルフェウス」や「ステラ」は最近10年ほどの間に作られたものです。そういう、新しく作られたものも少ないながらあるんですよ。
 で、それら新しいものは、古いものと明らかに音が違うんです。角が立った、くっきりとした音なんです。古いものは角が取れた感じで。例えて言うと、新品の煉瓦と利根川を50kmほど流された煉瓦ぐらい違う感じ(*1)。
 どちらが好きかというと、古いものの音の方が好きなんですけど、まてよ、と考えてしまうのです。この違いは設計の違いによるものなんだろうか、経年変化によるものなんだろうか。

 経年変化で音が変わっているのは、たぶん間違いないことです。櫛は疲労しているだろうし、箱は枯れているだろうし。清里ホール・オブ・ホールズの「エロイカ」なんて、裏板がひび割れてますもん。
 新品当時の音とどのぐらい変わってしまっているのか、また、どう変わってしまっているのか。「よりいい音になった」のか、「ぼけてもなお、こっちの方が好みに合う音」なのか、「古くなってぼけてしまった音をありがたがっているボケ」なのか。それを確かめることはできません。「100年後のオルフェウスの音」も、「100年前のエロイカの音」も、今聴くことはできませんから。
 まさか「100年後にいい音になるように」と考えて作ったとは思えないんで「よりいい音になった」ってことはないと思うんですが。

 でも、楽器でもありますよね。「300年前のバイオリンの名器が、ニューヨークのオークションで○○万ドルで落札され」みたいな話題が。それを考えると、古くなるほどいい音になるものもあるのかなとも思うのです。

 また、置き場所についても考えてしまうことがあります。音がふわっと広がって好きなんで、私はよく清里に行きます。「レジーナ」はここでは音がもやっとしてしまってそれほど好きな楽器ではありません。
 ところが箱根で聴いたレジーナはまるでオルフェウスのようにくっきりした音で鳴っていました。箱根は部屋が狭いし、コンクリートの壁なんで、音がカンカンと響きます。この楽器は、こういうところでこそ生き生きと鳴るんだな、こういうところで鳴らすように作られたのかな、と。この楽器は、清里よりここが合ってるんだな、と思いました。

 それはそれでいいんですが、それが「オルフェウスのような音」というところで考えてしまいます。やっぱりこういう音が本当の「いい音」、もしくは設計者が意図した音なのかな、と。

 もちろん、私の考えすぎで、音の違いは楽器の個体差(整備状態もふくめて)のせいかもしれないのですが。

(*1)こんな例え、わからんって。(^◇^)
 ほかの例えとしては、「おろしたての石鹸と3日間使った石鹸ぐらい」「煮込む前と、2時間煮込んだ人参ぐらい」「ステップワゴンとエスティマぐらい」でしょうか。

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