試 乗 記 録 (特別編) 国鉄急行型車両を訪ねる旅 99年冬
取材期間 1999年11月25日(木)〜28日(日)
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11月28日(日) 4日目 (その1)
今日も目覚めた時は、紀伊勝浦の手前だった。 トイレに行くついでに、車内を観察してみる。 乗客数はさらに
減っており、3両編成全体で約10名強の乗客数だった。
しかもその内約半数は、私と同じ鉄道ファンらしい方であった。 (ちなみに私が乗車していた車両は、私を含め
3人で、全てファンの方だった!)
多分、紀勢(東)線のキハ58系がお目当てなのだろうか・・・。 こんな状態なので、俗称「太公望列車」も「鉄チャ
ン列車」になってしまった様だ。
いよいよ、新宮駅の構内に入線してきた。 今日も
定刻通り2番線に到着した。 私はこれから紀勢(東)線
の始発に乗り、さらに東を目指すのだが、まだ発車時刻
まで1時間位の余裕があった。
この時間で朝食を取る為に、一番線側に移動し、早朝
から営業している駅そば屋に向かった。
キハ58系の車内
夜明け前の寒いホームで冷え切った体には、温かいそばがよく利く。 ここもやはり「関西だし」の店だった。
体が暖まったら、また2・3番線に戻った。
ホーム上では何人かが、始発の到着を寒そうに待っていた。 やがて熊野市始発の一番列車がやってきた。
これは、キハ40系の単行列車だった。 このキハ40系が車庫に引き上げると、今度は新宮始発の一番列車が、
回送で到着した。 もちろん原色のキハ58+キハ28であった。
車内にさっそく入ってみるが、暖房が効いていて大変温かい・・・。
一旦シートに荷物を置き、三脚とカメラを取り出すと、ホームに出て出発間際のキハ58を撮影した。
旅程表(11月28日) |
11月28〜29日(日〜月) 「紀勢線新宮行夜行」 → 新宮駅 → 「紀勢(東)線普通」 → 波田須 〜 徒歩 ※キハ58系とDD51重連の貨物列車を撮影。 三瀬谷駅 → 「紀勢(東)線普通」 → 多気駅 → 「紀勢(東)線普通」 → 亀山駅 → 「関西線普通」 → 名古屋駅 → 「ムーンライトながら」 → (車中泊) → 29日早朝横浜着 |
撮影後また車内に戻り、青色のモケットが張られたシートに座ってみた。 何か無性に懐かしい物を感じずにいら
れなかった。 確かにボックスシートは、先程まで乗っていた165系と、さほど変わりがないのだが、こちらは未だに
製造時の姿をとどめていた。 これはモケットが張りかえられていた165系と、対照的な部分ある。
また最近は外されている事が多い、シートのヘッドレストも残っており、車内は国鉄時代とまったく変わっていなか
った。 だから無性に懐かしさを感じたのだろう。
こんなシートに座り、発車へのひとときを待つ・・・。 なんて優雅な時間だろう・・・。
なんて事を考えている内にドアが閉まる音がし、やがてエンジンの轟音が響いて来た。 ディーゼルカー特有のゆっ
くりとした牽き出しで、新宮駅のホームを離れていった。
現在時間は6:05分である。 少しウトウトしながら、キハ58の旅をしばし楽しむ事にしよう。
熊野駅に停車中のキハ58系普通 熊野特産「那智黒」とキハ58
やがて、熊野川を橋梁で渡りきると、いよいよ三重県内に入ってきた。 暗闇の中を、列車は進んでいく・・・。
やがて遠くの空が、薄く明らんできた。 こんな車窓をぼんやり眺めている内に、列車は熊野市に着いていた。
熊野市では後からくる特急の待避と、新宮行きとの交換の為、長時間停車した。 この時間を利用してホームに
出て撮影を行なった。
やがて新宮方からキハ85系「ワイドビュー南紀2号」がやってきた。 「南紀」は僅かな乗客を乗せて、すぐに発車
していった。 さすがに、カミンズ社製強馬力エンジンの咆哮は迫力があり、朝の駅構内に響いていた。
「南紀」が発車した後は、こちらの発車である。6:50分、また私達を乗せたキハ58は動き出した。そして6:57
分、今日の撮影ポイント最寄駅となる波田須駅に到着した。
波田須駅は両側を山に囲まれた無人駅で、駅のホームからは熊野灘が眺望できた。 この波田須駅を出て、細く
急な坂道を昇って行くと、今日の撮影ポイントへと到達する。
この周辺はとても自然に恵まれているので、時折野猿が顔を出して来るような所だった。 余り今日は天候が良くな
い様であったが、周辺には私の他にもファンらしき人が見受けられた。 ちなみにその中にいた大阪のIさんには、
この後、1日中お世話になるのであった。
国鉄色キハ58系普通 DD51型重連の貨物列車
ここではキハ58系の他、9:20分頃に通過するDD51重連の貨物列車を撮影してみた。 海が望めるのどかな
風景の中を、国鉄色のキハ58やDD51が通過していく様は、大変絵になっていた。
ただDD51重連の貨物列車は、まったく一台もコンテナを積んでおらず、(要するに空荷!)少し寂しかった。
丁度隣にいたIさんと顔を合わせ、「空荷だよ!」と叫んでいた。 噂ではこの貨物列車も、キハ58系の引退と共に
廃止になるとか・・・。 こんな状況を見ると、妙に信憑性のある情報に感じた。
この後Iさんは、新鹿(あたしか)の浜を見渡せるポイントに行くとの事で、「一緒にどうですか?」と声を掛けてき
た。 はっきり言って現地の土地勘に乏しい私は、このご好意に甘える事にした。
新鹿は、先程下車した波田須駅の隣駅で、海岸には白浜が広がる風光明媚な土地である。
Iさんの話によると、近くに「新鹿温泉」という温泉もあるらしいとの事だった。
しばらくロケハンをする為にあちこち走り回ったが、やっと良いポイントが見つかったので、ここで撮影を行なう事
にした。 眼下を見下ろすと、先程まで走っていた道がとても小さく見えた。
私達はだいぶ高い所まで昇ってきた様で、とても徒歩では来れない場所だと感じた。
さっそく、機材のセッティングを行ってみたが、次の列車まではまだまだ時間があった。 ちなみに当日は余り日
が当たらず、うら寒い1日だった。 まあお陰で?光線周りを余り気にせず撮影出来たのだが・・・。
またここは道路上だったので、たまに車が通っていく。 しばらくすると、そんな一台に乗っていたおじさんに声を
掛けられた。色々とお話をしていたが、最後にこのきれいな景色を是非、PRして欲しいとの事だった。
またこの方から名刺を頂いたのだが、名刺を見てビックリした。 この方は地元の議員さんだった。
Iさんも私も名刺を出し、名刺交換をしていた。 まさかこんな所で!? 名刺交換になるとは思わなかった。
確かにきれいな景色が、目の前に広がっている。 こんな感じの風景ですので、ご覧になって下さい。
新鹿の白浜とキハ58系
(表示時間の関係で画質を落としてあります。)