各種の紹介-3

ミナミヌマエビ

 本州から九州にかけて分布している陸封性のヌマエビです。他のヌマエビ類と異なり大きな卵を産むので,水槽内でも繁殖が可能なヌマエビです。孵化した子は最初からエビの形をしているので,ほっといてもいつのまにか水槽内を稚エビが歩いていたりします。河川本流(中流に多い)にもいますが,私が昔住んでいた愛媛県では,平野部の湧水で多く採集することができました。

 水草の上にいることが多く,また浮遊性の餌を与えるとすぐ水面に集まってきます。地味なヌマエビですが,よく見ると個体間の色彩変異が意外と多いことがわかります。場所や季節によっては,青っぽかったり,赤茶色だったり,いろいろな色彩の個体が採れたりします。

 下の写真は,熱帯魚店で購入したものです。ある日突然おかしくなって,1週間ほどの間に全滅してしまったことがあります。特に水質を悪くしたような前兆もなかったので,かなりショックでした。神経質な種を飼育する場合以外でも,定期的な水質チェックは必要ですね。

 なお,ペット用や釣り餌用として流通しているミナミヌマエビの中には,中国や韓国などから輸入される別亜種も多いようです(参考:「蝦三昧」さん)。額角の長さが識別点になるようですが,交雑があるようだと識別が難しいようです。上の個体の場合,額角が触覚の付け根部分まで達していることから,ミナミヌマエビの可能性が高いと思います。まあ,コンタミ(外部集団からの遺伝子の混入)云々まで話がいくととっても面倒くさいので,厳密な区別はやめておきます。

 けっきょく,生殖的隔離が働いていない‘亜種’においては,両者の中間的な個体(群)が存在することも多く,どこからどこまでがどの亜種と厳密に区別できないのが実際です。ただし,分類学の専門的な話とは別に,地域ごとに独自な性質を持つ天然個体を保全し維持していくためには,飼育している生物のむやみな放流はしないことが重要です。特にミナミヌマエビのように陸封され他と隔離されている水生生物では,水系ごとに固有の遺伝タイプを持っていると言われており,大きなダメージになることも考えられます。

2006年6月9日更新

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おわり