5、前 世 を 信 じ た 人



 洋介(仮名)は前世を信じていました。そして、悪い事をした人が死ぬと動物になったりすると考えていました。そのためか、生きている間に善い事をしなければ、といつも考えていたのでした。
 
 彼が50歳を過ぎた頃、妻の悦子(仮名)がこう言いました。
 「あなたはいつも、善い事をしなさい、って言うけど、世の中って、何が良くて何が悪いのか良く分からない事が多いと思うの。私、ついていけない気がする。」
 洋介は言葉を失いました。これまで、単純に、善い事をする、としか考えてこなかったからです。
 悦子はなおも言いました。
 「私は自分では善い事をしているつもりなのに、あなたは、良くない、って言う事があるでしょ。この間なんか、あなたのために良いと思って買った洋服を、あなたは勿体ない事をする、って言うし、お母さんなんか、私がいくら善い事のつもりでいても、今の若い人は駄目だ、って言うのよ。
 私、もうどうしていいのか分からない。」

 この日から洋介の葛藤が始まりました。ただ単に善い事をするという事が何か難しい事に思えてしまったのです。
 洋介は本当に来世で動物に生まれる事があるのかどうか、それを知りたいと思い、書店へ足を運びました。書店で前世や生まれ変わりに関する本を探したのでした。
 洋介はびっくりしました。驚く程たくさんの本があり、それらの主張は実に様々なのです。決して動物には生まれないという本もあったのでした。
 彼は悩みました。そしてとうとう、何も考えなくなりました。

 やがて、他界する時がやって来ました。側には、インド人の霊魂がいました。この霊魂が、側でずっと、善い事をしろ、善い事をしろ、という思いをぶつけていたのでした。ところが、彼がそれを考えなくなってから、腹を立てたようで、何かと、激しく攻撃的な念を洋介にぶつけていたのです。
 洋介は他界しました。しかし、あれほど、善い事をしたはずだったのに、あまり良い世界には行けませんでした。彼の霊魂になってから使う身体が、霊の念で傷ついていたので、レベルの高い幽界には入れなかったのです。
 
 彼の守護霊は、生前何度も側に寄ろうとしましたが、それができずにいました。
 そして、とうとう、可哀相な結果が出てしまったのでした。

 指導霊だった霊魂が、洋介にこう言っていました。
 「何が善いか悪いかは地上の基準。霊魂の世界には別の基準がある。何よりも、霊を知って欲しかった。
 人が死ねば人間の霊魂になる。たとえ、再生しても、人間としての霊的な仕組みが変わることはない。決して動物には、生まれることはないのだ。」
 
 また、守護霊も言いました。
 「前世は今の自分に対して影響を与えている。あなたの『動物に生まれるかもしれない』という気持ちの奥には、過去の人生の心情による影響があった。私はむしろ、それを知って欲しかった。
 書店にそれに触れた本があったのに…。そして、私の部下があなたに必死に思いを飛ばしたのに、あなたは気付けなかった…。」

 過去世に対する誤った見解が、洋介を不幸にしたのかもしれません。

                                        
-終わり-
           
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