第五章 行政 

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 第五章 行政 
第二十九条 行政の権限
  1. 国家の行政権限は、ダライ・ラマ猊下が十八歳に達したとき、彼に帰属する。その権限は、本憲法の規定に基づいて、直接、彼により、または、彼に従属する役人を通じて行使される
  2. 前述諸条項の一般原則を損なうことなく、国家元首として、ダライ・ラマ貌下は次の国事行為を行う
    1. 外国駐在外交代表の信任、派遣と退任、召喚、外国外交代表の接見、国民議会、または、国民議会常任委員会が先に柔認した国際条約の批准
    2. 恩赦、執行猶予、赦免、犯罪によって収監されている者の刑の一時停止、減刑、刑の免除
    3. 功績に対する叙勲、位階の授与
    4. 抱束力と有効性を持つ法律と法令の公布
    5. 国民議会の召集と閉会
    6. 国民議会に教書を送る。彼の裁量により、必要と考慮すれば、いつでもその教書を議会で演説できる
    7. 本憲法に規定する国民投票実施の認可
  3. 本条項は、国家、およぴ宗教界の最高首長としてのダライ・ラマ猊下の権限、および、権威に何らの変更、あるいは、影響を与えるものではない
第三十条 閣僚と内閣(Kashag)
  1. ダライ・ラマ猊下は、適時、必要数の閣僚を任命する。それらの閣僚の中から猊下は首相を指名する、そして、他の五人以上が閣僚となる
  2. 閣僚は国民議会の議員を兼務できない
  3. 閣僚に任命された者が、国民議会の議員である場合、議席から退くものとする
  4. 閣僚の就任に先立ち、ダライ・ラマ猊下は、法に定むる形式と手続により、就任と守秘義務の宣誓を取り行う
  5. 内閣は、国家行政府の行政執行に関して、ダライ・ラマ猊下を補佐し、助言する
  6. 閣僚の俸給と手当は、国民議会が、適時、法により定めるものとする
第三十一条 閣議
  1. ダライ・ラマ猊下は内閣会議の議長を務める。猊下が不在のときは、首相、または、最長老閣僚が議長を務める
  2. ダライ・ラマ猊下は、他の大臣を閣議に招請することができる
第三十二条 法律の公布
ダライ・ラマ猊下は、国民議会が諸法律を最終町に承認して、内閣に送付後、二週間以内に、これらを公布する。猊下は、いつでも、この期間内に、その法律、または、条令の再審議を議会に求めることができる。その場合、議会は、猊下の書信に基づき、それを再審議する
第三十三条 国民投票への服従
ダライ・ラマ猊下は、自己の判断、または、内閣の勧告により、提議された法律の制定を国民投票にかけることができる。もし、その提議された法律が、有権者の過半数によって承認された場合、猊下は、その法律を前条項に明記する期間内に公布する
第三十四条 国民議会の解散
ダライ・ラマ猊下は内閣、および、国民議会議長と協議ののち、議会を解散することができる。そのような場合は、常に、解散後、四十日以内に総選挙を行うものと規定する
第三十五条 政府業務の遂行
  1. チベット政府のあらゆる行政行為は、ダライ・ラマ猊下の名において行われる
  2. ダライ・ラマ猊下の事前承認を得て、内閣は、チベット政府の業務を、より円滑に処理するため、また、それらの業務を閣僚間に配分するため、規定を作成する。その後、その規定案は承認を得るため、ダライ・ラマ猊下に提出される
第三十六条 摂政会議
  1. 次のような状況下においては、摂政会議が行政権限を行使する
    1. 転生ダライ・ラマが、先代たちの権限を引き継ぐ年令に達するまでの期間
    2. ダライ・ラマ猊下が、先代たちの権限を未だ引き継がない期間
    3. ダライ・ラマ猊下の行政、機能の行使を妨げるような心身欠陥が起こった場合
    4. ダライ・ラマ猊下が、国に不在の場合
    5. 国民議会が、最高裁判所と協議して、国民議会議員の三分の二以上が、国家の最高利益のため、ダライ・ラマ猊下の行政機能を摂政会議が行使することが絶対必要であると決定した場合
  2. 摂政会議は国民議会によって選出された三名からなり、その一名は僧職代表とする。国民議会議員が、摂政会議のメンバーに選出されれば、彼は議席を退くものとする
  3. もし、閣僚が、摂政合議のメンバーに選出された場合、彼は、その職を辞するものとする
  4. 摂政会議のメンバーに選ばれた者は、法に定むる形式に基づいて、国民議会において、就任の宣誓を行うものとする
  5. 掃政会議のメンバーが、死亡、その他の理由で職務の遂行が不能となった場合、国民議会は新しいメンバーを選出する
  6. もし、国民議会の開会中に、摂政会議のメンバーを解任する必要がある場合、議会常任委員会は内閣と協議の上、当該メンバーの職務を剥奪し、あとで、その者の解任を国民議会に勧告できる。議会はその勧告を妥当と考慮すれば当該者を解任し、同会期中に、摂政会議の新メンバーを選出する
  7. 国民議会の開会中に、もし、摂政会議のメンバー二名、または、三名全員を解任する必要がある場合、議会常任委員会は内閣と協議して、議会の緊急会議を召集し、国民議会に当該人物の解任を勧告できる。議会はその勧告を妥当と考慮すれば、全員または、それらの者を解任することができる。議会は、また、同会期中に解任された者の代わりに新しいメンバーを選出する
  8. 摂政会議メンバーの任期は、国民議会議員の任期と同期間とする
  9. 摂政会議は、内閣、僧職評議会、および国民議会常任委員会と協議して、ダライ・ラマ猊下の転生者の捜索を行うものとする。次に摂政会議は、転生者の決定と就任に関する調査結果とその見解を、決議採択のため、国民議会に提出する
  10. 摂政会議は、国家の領土のいかなる部分も譲漬し、または、国家の独立に関連するいかなる国際協定にも加入する権限を持たない。ただし、本憲法の条項に基づいて施行された国民投票において、有権者の過半数が事前に承認した場合および、これに代わって、国民議会が、そのような他の法律を制定した場合を除く
第三十七条 僧職評議会
  1. ダライ・ラマ猊下の直接の権限下に、頗内の全寺院および宗教施設の業務を管理する僧職評議会を設ける
  2. 僧職評議会はダライ・ラマが適時、直接任命する五名以上のメンバーから成る

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