第六章 立法 

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 第六章 立法 
第三十八条 立法権
すべての立法権は、ダライ・ラマ猊下の同意を条件として、国民議会に属する
第三十九条 国民議会の構成
  1. 国民議会は次のように構成される
    1. 地方選挙区の人々によって直接選挙された議員七五パーセント
    2. これについて制定された法律に基づいて、寺院および宗教機関によって選挙された議員一〇パーセント
    3. これについて制定された法律に基づいて、地方および地区議会によって選出された議員一〇パーセント
    4. ダライ・ラマ猊下によって直接指名された議員五パーセント。そのような人物は芸術、科学、または、文学の分野から、それぞれのすぐれた業績により選ばれる
  2. 本条項山の(1)の(a)の目的のため、国を地方選挙区に分割する。各選挙区は、有権者の割合を平等とする。各選挙区に割り当てられる議員数は、これに関してダライ・ラマ猊下が任命した選挙委員会によって決定される
第四十条 国民議会の期間
  1. 期間内に早期解散がない限り、国民議会は毎期、定められた第一回集会の日付から五年間継続するものとする。それ以上はない。五年の期限切れは議会解散の作用をする
  2. 議会の開会中は、国民議会常任委員会を置くものとする
  3. 国民議会は、常任委員会の任務、権限、委員数に関する案を作成し、承認を得るため、それをダライ・ラマ猊下に提出する
第四十一条 国民議会議員の資格
次の者は国民議会に選出される資格を有する
  1. チベット国籍者で二十五歳以上の者
  2. 国民議会が規定した法により無資格者と認定されていない者
第四十二条 国民議会の会期
  1. ダライ・ラマ猊下は、適時、定められた時と場所において国民議会定例会議を毒する。ただし、前会期の終わりから、定められた次の開会日まで六か月以上の期間をおかないものとする
  2. 本憲法の条項に従いダライ・ラマ猊下は
    1. 国民議会を休会、または
    2. 国民議会を解散することができる
第四十三条ダライ・ラマ猊下の国民議会講演と教書
  1. ダライ・ラマ猊下は、総選挙後の最初の会議の開会、および、毎年度、最初の会議の開会にあたり、国民議会で講演し、召集の理由を議会に知らせる
  2. ダライ・ラマ猊下は、議会で未決定の法案、その他に関して教書を国民議会に送ることができる。議会はできる限り速やかに教書が要求する件を考慮する
第四十四条 臨時会議
  1. ダライ・ラマ猊下は、内閣、または、議会議員翠数の要請によつて、国民議会臨時会議を墓できる
  2. すべての国民議会臨時会議は、ダライ・ラマ猊下の命令により開会され、閉会される
第四十五条 閣僚の議会出席の権利
各閣僚は、国民議会の議事、および、彼が委員として指名された国民議会のどの委員会の議事にも出席し、発言する権 利を有する。但し、投票権は持たない
第四十六条 国民議会議長
  1. 国民議会は、総選挙後、最初の会議において、その議長、および、副議長となる議会議員二名をそれぞれ選出する。そして、議長、または、副議長の地位が空席となった場合は、その都度、議長、または、副議長となるはかの議員を選出する<
  2. 議長、または、副議長は、国民議会議員であることを止めた場合、または、議員総数の三分の二以上により、解任決議がなされた場合、辞職する
  3. 国民議会議長、および、副議長には、法に基づき、国民議会が定める俸給、およぴ、手当を支払う
第四十七条 議会議員の特権
  1. 国民議会議員は、国民議会、または、議会委員会において行なった発言、投票に関して、いかなる法廷訴訟においても、法的責任を問われない。さらに、また、議員は、国民議会の権限において出版された報告、文書、議事録などの出版物に関して法的貴任を問われない
  2. 議会の開会中、議員は、現行犯逮捕を除き、国民議会議長の事前認可のない限り、民事、または、刑事犯罪で告訴、または、逮捕されることはない
  3. 国民議会議員の特権の細目については、国民議会が適時、法によって定める
第四十八条 議員の宣誓、または、確約
すべての国民議会議員は、議員就任に先立ち、議長、または、代わりに任命された者の前で、法によって定められた形式に基づき、宣誓、または、宣誓に代わる確約を行い、かつ、署名するものとする
第四十九条 議会における票決
  1. 本憲法に特に規定する以外は、国民議会のどの会議においても、すべての間靂は、議長、または、議長代理を除く出席議員の投票数の過半数によつて決定される。議長、または、議長代理は、第一回目には投票しないものとする。ただし、票数が可否同数の場合は、決定投票を行使する
  2. 国民議会はその議員の空席(欠員)のいかんにかかわらず行動する権限を有する。そして、資格のない者が出席し、または、投票し、あるいは議事に参加したことが、その後、発見されても、議会のいかなる議事も合法で効力を有する
  3. 国民議会の会議の定足数は、議会議員総数の五分の一とする
  4. 国民議会のある会議が開かれている間に、もし、定足数が足りない場合は、定足数に達するまで、議会を休会にするか、あるいは、その会議を中断することを議長、または、議長代理に義務ずける
第五十条 欠員
  1. もし、国民議会議員が、摂政会議、または、閣僚会議の一員に選出された場合、あるいは、次の条項に示す議員資格の喪失のどれかに該当するとき、または、本人が直筆で議長あて議席を辞するむね表明した場合、その結果として彼の議席は空席、欠員となる
  2. もし、国民議会議員が議会の許可なく、すべての会議を六十日間欠席した場合、議会は、彼の議席を欠員空席と宣言できる。その六十日間の計算には、議会が連続四日以上、停会、または、休会した期間は計算しないものと規定する
第五十一条 議員資格の喪失
  1. 次の者は国民議会議員の資格を喪失する
    1. 国民議会が法に基づき、議員資格を失わないと、宣言した公職以外のチベット政府傘下の営利役職に就いた者
    2. 正当な権限を有する裁判所によって、その者が精神異常者と宣告された場合
    3. 負債の返済不能な破産者
    4. チベット国籍でない者、または、外国に対する忠誠と支持を認める者
    5. 国民議会が制定した法によって資格を失った者
第五十二条 議員資格喪失の決定
国民議会議員が前条項に示す資格喪失に該当するか、否かの問題が生じた場合、その問題は最高裁判所長に付託し、その決定を最終とする
第五十三条 議員宣誓以前、または、議員資格喪失後の出席と投票に対する懲罰
その者が、議員宣誓、署名以前に、または宣誓に代わる確約、署名以前に国民議会議員として出席、投票した場合、または、その者が無資格者、あるいは資格喪失者と知りながら出席、投票した場合、また、国民議会が定めた法によって禁止されているのに出席、投票した場合、その者は、出席し、投票した日数に応じ、罰金刑を科する
第五十四条 議員の俸給と手当
国民議会議員は、議会が、適時、法に基づいて定める俸給、および、手当を受ける権利を有する
第五十五条 法案の提出と通過
  1. 税金の課税、撤廃、免除、変更、または、調整、あるいは、チベット政府による借用金の調整、または、政府保証の付与に関する法案は、内閣の勧告がないかぎり、提案、または、動議を提出されないものとす代ただし、減税、または、税金の廃止に関する条令の修正案は、そのような勧告を必要としない
  2. 前項に明記された責に関する法規作成は、単に、罰金、または、金銭による他の刑罰、許認可料金、または、与えられたサービスに対する料金の請求、支払いを規定するだけである、という理由から、どの事項に関しても、法規の作成は考慮しない
  3. チベット政府の支出費用関係の法案は、内閣の勧告がなければ、国民議会を通過できない
  4. 前項規定の理由について、国民議会議員は、いかなる法案、または、決議動議の提出、あるいはいかなる法案の修正も提案することができる
  5. 議員が個人で提出したすべての法案、または、動議、および、内閣が提案したすべての法案は、もし必要ならば、その目的のため特に任命された委員会に、考慮のため、付託する
第五十六条 年度財政報告
  1. 内閣は、毎会計年度の内訳について、その年度の概算収支報告を国民議会に提出する
  2. 報告書に具体化された支出概算は、次の点を別々に明示するものとする
    1. 支出の支払いに必要な金額は、次の(3)の項目下に、国家収入の負担とする
    2. その他の支出支払いに必要な金額は、国家収入からなされるよう提議する
  3. 次の支出は国家収入によって負担されるものと考慮する
    1. ダライ・ラマ官庁の必要経費、猊下の尊厳のため必要とされる経費
    2. 国民議会議長、および副議長の俸給と手当
    3. 最高裁判所の裁判官に支払われる俸給、手当および年金
    4. 利子の支払い、負債償却積立金、償還金などを含む、政府が法的責任を有する債務
  4. 国家収入が負担する支出関係の破算額は、国民議会の投票採決に付託しないものとする、ただし、本箇条は、これらの概算を国民議会において審議することを妨げないと考える
  5. その他の支出関係の概算額ほ、助成金交付要請の形式で国民議会に提出されるものとし、議会はいかなる要請にも、同意、または、拒否する権利、あるいは、明記された金額の削減要求に同意する権利を有する
第五十七条 議事運営の娩則
本憲法の諸規定に従い、国民議会は、議事運営の手続、および、その進行を規制する規則を作成する
第五十八条 討議上の制限
国民議会は、最高裁判所の裁判官の任務遂行上の行為について討議しない。但し、裁判官の解任を要望する文書をダライ・ラマ猊下に提出する動議に関する場合を除く
第五十九条 ダライ・ラマ猊下による法令の公布
  1. ダライ・ラマ猊下は、国民議会が閉会中でも、直ちに処置をとることが必要な、緊急状況が存在すると確信すれば、いつでも、国民議会常任委員会と協議して、状況が必要とすると思われる法令を公布することができる
  2. 本条項に基づいて公布された法令は、国民議会で可決された法令と同様な効力と拘束力を有する。しかし、国民議会の提案により、そのような法令は、すべて、ダライ・ラマ猊下によって、修正、変更、または、廃棄されてもよい
第六十条 法案に対する同意
国民議会によって可決された法案は、ダライ・ラマ猊下に送付される。ダライ・ラマ猊下は、その法案に賛成か、または、同意を差し控えるかを表明する。猊下は、その法案の再審議または、その明確な規定化を、特に、猊下自身の修正案を取り入れるよう、希望する勧告を付して、その法案を国民議会に還付することができる
第六十一条 国民議会議事に関する司法権の不介入
  1. 国民議会の合法有効性は、議事進行の規則違反という申し立てを理由に違法性を問われることはない
  2. 本憲法によって、議事進行の調整、議会業務の管理、国民議会内の秩序の維持などの権限を与えられた議員は、これらの権限の行使に関し、いかなる司法権の介入も受けない


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