1999.04.29公開/2002.11.26修正

水鼠1913年にモンゴル人の首都ウルガ(ur ga)において、チベット・モンゴル二者が平等の権利を確立する 条約

 チベット人と、モンゴル人の二者は文殊皇帝陛下(man ju 'gong ma)の支配のもとから離脱してシナ(rgya nag) とは別々に
なった。自由・独立の政府を樹立して、モンゴル・チベット両政府は互いに永らく宗
派を同じくしてきたという友誼と、以前からの友人としての交誼を深めるために、自
由を有するモンゴル人の国家の外務大臣代理ニクタビリクトゥ=ダーラマ・ラプ
テンと軍総司令・大臣心得マンライバートル=ベイス=ダムディンスレン、チベット
の保護者ダライラマの使者・侍従・侍読・僧官長ロサンガワン*、銀
行主管・知賓ガワンチェージン、秘書ゲンドゥンギェンツェン等が下
記の如く承認せることは、
 第一条 黄帽の教えの主ジェプツンタンパがモンゴルの国
  家元首(lung pa'i bdag po)であると鉄豚の年十一月九日に宣言した通りに、チベットの首長
  ダライラマは認定し、承認・信任すること。
   第二条 保護者ダライラマが自由独立のチベットの
  元首であると、モンゴルの国家元首ジェプツンタンパは認定し、承認・信任すること、
 第三条 モンゴル・チベット二国は念入りに協議して
  内道の教え〔=仏教〕が弘通し発展する方法を勘案すること、
 第四条 これより以後、チベット人とモンゴル人の国家に外寇と
  内乱がどこから生じても一方が他方に常に援助なさること、
 第五条 チベットとモンゴル人の領域の上において仏法と商業など
  の公用・私用の旅客たちに保護と援助を行うこと、
 第六条 チベットとモンゴル人の二国家は各々の国の
  産物と家畜などは旧例どおり全て売買して、手工業の工廠、文
  明などを発展させること、
 第七条 これより以後、諸々の貨幣の貸借は、政府の命令
  と無関係に貸借の契約を交わしてはならない。もし命令と無関係に交わし
  たなら、政府は督促の応援をしない。本条約が締結される以前にそのような
  契約書があり、解決に至らない大きな貸借があったなら政府は応援
  して給付させる。しかしこれらの負債がシャポナルとホションであるなら政府は認
  定・信任しない、
 第八条 この条約に入っている条項を削除し、その後
  挿入する必要が生じた際にはチベットとモンゴル人の二政府は新たな使者を任命
  して時宜に応じた添削を行うこと、
 第九条 本日条約に証明を締結してより以後、
  この主旨を永遠に遵守すること、である。自由を有するモンゴル人の政府の条約
締結員,外務大臣代理ビリクトゥ=ダーラマ=ラプテンと軍総司令・心得
マンライバートル・ベイス・ダムディンスレン、自由を有するチベット政府ダライラマの条
約締結員,侍従・侍読・三品僧官ロサンガワンと銀行主管・知
賓ガワンチェンズィン、秘書ゲンドゥンギャンツェン等の書名と調印を
行った。モンゴル人の独立第二年十二月五日、チベットの水鼠年十二月五日に
条目を終え本文件を概括して書き記した。

底 本:
Sha sgab pa, Bod kyi srid don rgyal rabs(An Advanced Political History of Tibet), Kalimpong, 1976. pp.633-635
備 考:条約はチベット語・モンゴル語の二カ国語で締結され、チベット語原本はチベットで、モンゴル語原本はモンゴルにおいて保管されたと推測される。
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