H 演技をつける

監督の重要な役割のひとつに、演技を作り上げるという仕事があります。その手法は監督によって様々であり、それが作品の個性に直結することはいうまでもありません。

その過程で私たちが最も大切にしていることは、作品世界のリアリティを模索することです。演技を“つける”という作業は、監督が俳優に演技を押しつけることでもなく、俳優が持ち前の演技力を主張することでもありません。作品にとって何がリアルなのか、それを探し出す共同作業なのです。

また、演技は俳優だけのものと思われがちですが、私たちは撮影、照明、音声、美術に至るまで、すべてが作品世界をきっちりと演じなければならないと考えています。作品に関わる俳優とスタッフの全員が作品の意図を理解し、その中でリアリティとは何かを追求する、これが演技をつけるという作業なのです。

監督は、俳優やカメラをどう動かすかについて頭を悩ませる前に、まず、このシーンで何を描くべきかということを明確にし、それを現場に徹底させることが必要です。その上で、俳優やスタッフと意見を交わしながらそれぞれの“演技”を作り上げ、洗練していかなければなりません。もちろん、生み出された“演技”が「OK」か「NG」か、それを見極める力が監督に求められることはいうまでもありませんが…。

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