I 光をつくる

撮影スタジオの大型セットを使うことが難しい自主映画の撮影は、通常、一般の建物や野外で行われます。現場には大型の照明機材や大容量の電源もなく、専門の照明スタッフもいません。けれども、それを悲観することはありません。私たちには太陽があります。それは映画にとって最高の光を与えてくれます。自然光を使いこなすことができるか。自主映画作家である私たちは、つねにその表現力を試されています。

映画に描かれるのは自然の光です。その光をいかに魅力的に描くか。その光に何を語らせるのか。そして光のない闇は…。私たちが光をつくる上で大切にしていることは、それが自然の光であるかということです。たとえライトを使ったとしても、それが自然光とのバランスを欠いたものであれば光の魅力は失われてしまいます。

もちろん私たちも撮影にはライトを使います。ただしライトを使う場合には鉄則があります。「光のあるところには必ず光源がある」というものです。その光は太陽か、部屋の電灯か、街のネオンか、車のヘッドライトか、ということです。被写体が暗いからという理由だけでライトを当てるような行為は映画表現とはいえません。夜景や室内の撮影も必ず“光源”を設定し、それに従い照明プランを練ります。その光には登場人物の心理や作品のテーマまでを描き込むことが重要なのです。

光を待つ。私たちは作品への思いを託す光を求めて歩き、そこに美しい光が降り立つのをじっと待ちます。それが映画づくりだと考えています。

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