衣裳は決して一人歩きをしません

衣裳美術  藤野 雅子

舞台は ”昭和50年夏”。夏生まれの私はちょうど2歳になったばかりでした。私の記憶は定かではありませんが、当時の写真には、「裸にチューリップハット」という格好でビニールプールで遊んでいる様子や、ホースを持って水撒きしている様子が残っています。脚本と私の思い出が重なり、何となく懐かしくて温かい、そんな気分になりました。そして、この脚本を、映像として是非観てみたいと思ったのが、伴野さんの作品に参加するきっかけになりました。

衣裳の製作にあたり、当時の様子を母にじっくり聞いてみました。この時代の子供服は、まだ母親の手作りのものが多かったそうです。当時の庶民的な様子をなんとか出せたらと、母の記憶と写真を元に、当時の時代の再現と、それぞれの性格を特に大切にして製作させていただきました。 
 
映画・舞台には必ず背景があるという事を知った時、突然目の前に道が広がったような気持ちになりました。映画・舞台の衣裳は決して一人歩きしません。脚本があり、登場人物がいて、時代背景がある。それをいかに表現できるか。それが衣裳創りの魅力なのでしょう。今回、衣裳デザイナーという形で初めて映画づくりに参加させていただき、いろんな分野の人が集まって、一つの作品を作り上げていく楽しさを経験させていただきました。俳優、スタッフ、それぞれの感性が一体になって作品に命を吹き込んでいく映画創りは、私独りでは決して感じる事の出来ない素晴らしい経験でした。
 
妥協しない映画づくり。限られた枠があり、その中で最良のモノを作りたいという気持ちに、共感いたします。これからも、お互い志を高く持ちながら、追求したモノ創りをしていきましょう。

 

●兵庫県出身 服飾デザイナー
上田安子服飾専門学校卒業 その後、受注生産という形で、デザインから、パターン、縫製に至るまで一点物を多く手がける。映画「トトオ」に参加し、これをきっかけに本格的に映画・舞台衣裳の世界へ進出。ホームページはこちら MACO SACO
○伴野さんの撮る空が好きです。とても穏やかで広がりを感じます・・・

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