焼けた線路の上の死体

    テキスト『創元推理』 17(東京創元社)
    季節とアリスの学年
夏休み中/一回生



三人は転げるように駆けてくるのだけど、からくも間に合ったというスリルにキャッキャと喜んでいる様子だった。両腕を広げて飛行機の真似なんかしているのもいる。(308p上段)

  ・
キャッキャと騒いだのは経済学コンビ、飛行機の真似をしたのは信長とみた。
  ・江神さんにはそのどっちもやってほしくないと思う私。


縁あって京都の一私立大学に今春入学し、何の因果かこんな得体の知れない集団に入ってしまった。
(309p上段)

  ・
そんなこと言っていいの?
  ・初の英都大学ものゆえ、キャラの性格がまだ固まってない感じ。しかし、アリスの辛辣さは既に顕著ですね。


僕は犬や猫を見る目で先輩方のそんな様子を観察していた。(310p上段)

  ・
アリスって、そこはかとなく性格悪い…


早食いの江神さんが本から顔を上げずに尋ねた。(311p下段)

  ・
部長が早食いというのはちょっと意外な感じ。
  ・かといって、遅くもないと思いますが。


僕が『大金塊』や『怪奇四十面相』に出てきた暗号を暗唱すると、織田はポプラ社刊の乱歩ものの題名を番号順にまくしたて、江神さんは各作品ごとに二十面相が狙った獲物を挙げていき、望月は乱歩先生のアイディア盗用箇所とその出典を指摘して一席ぶった。(311p下段)

  ・
やはりモチが一番オタクっぽい。他の三人のは記憶力の問題で済むことだけど。
  ・ちなみに私は、アリスレベルです(笑)


「おい、行くぞ、小林少年!」
江神さんが呼ぶと、望月はようやくこちらを向いた。いささか不満げに。(314p上段)


人一人が通れるほどの幅しかない路地に面した床屋の唐突の出現が、シュルレアリスムの名画か、あるいは炎天下の白日夢かと思えた。
(中略)
この南の町は、幻想で一杯だった。(315上段)

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この箇所を読んだ途端、デ・キリコの名画『街角の神秘と憂鬱』を連想させられました。
  ・えっと、単にツボだっただけなんです〜


「そしたら、他殺やってんね?」(315上段)

  ・
この言い方がたまりません(笑)
  ・やたらに科白回しの可愛いモチが満載。


僕が斬り返すように即答すると望月は、
「ちぇっ、知っとる。こんなんやったら先に信長に聞くんやった」(322p下段)

  ・
モチ対アリスはとりあえずアリスの一勝。
  ・しかし、そんなにムキに返さなくても、と思うんですが。


僕は警察の捜査の不備を発見する自信があってそう言ったのではない。単に望月をのせるのが面白くて反論しているだけなのだ。(322p下段)

  ・
アリスも負けていない。
  ・モチ対信長の漫才とモチ対アリスの張り合いは同レベルですね。


「どうでした?」と聞くと、
「喜べ、アリス。だいたいのとこ判ったぞ。もう一回、田辺へ戻って捜すもんがあるけどな」
「もう判った?―――何を聞いたんです? 何が判ったんです? 何を捜すんです?」
「まあ待て、モチ。説明するやないか」(326p上段−下段)

  ・
真相に辿りついた江神さんに食い下がるアリスとモチ。
  ・ここでも張り合っているんでしょうか。
  ・信長は彼ら二人に呆れているのか、不参加。


「ほんに立派な先輩に恵まれて周平は幸せです。お手柄でしたなぁ」(332p上段)




−おまけ−     
デビュー作再録について      
(有栖川有栖先生の小文)      


いずれは学生アリスシリーズの短編集を東京創元社でまとめてもらい、それに収録するつもりではいたのだが、(335p上段)

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あああ、は、早く一冊にまとめてほしい〜〜〜
  ・読み返す度、大きさも厚みも違う本のページを捲らなきゃいけないのが少し悲しい。
  ・お陰でどの本にも、シッカリ開き癖がついてしまいましたわ…


将来、短編集に収録する際には筆を入れるつもりだが、今回はほとんどいじらなかった。(335p下段)

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モチが無免許運転している箇所は絶対に修正される筈(笑)