←↑→ 基礎知識(2)社会と性

■■■社会上の性別
社会で暮らしているとしばしば私たちはまず男性か女性かということを判断されます。そして現在男性と女性ではその扱われ方がかなり違うのが現状です。

※服装の区別 clothes
現代の日本では男性は下着はブリーフかトランクスにシャツ、上着はワイシャツにズボンなどを着ます。これに対して女性は下着はショーツにブラジャー・キャミソール又はスリップ、上着はブラウスなスカートなどを着ます。女性は普段着にはズボンを履いてもいいですが、会社などで履いているとたいてい上司からスカートを履くようにと注意されます。男性はスカートは履きません。

もちろんこれは原則であって男性がスカートを履いたりショーツやブラジャーを付けてもいいですが、少し変わった人だと思われます。会社で男性がスカートを履いていたら、たいてい上司が即ズボンに着替えろと言うでしょう。逆に女性がブリーフを履いているのは、恋人などに見られない限りあまり問題にされません(実際防寒のために履いている人はよくいるようです)。

また服装の大きな違いとして、男性の服はワイシャツもズボンの前開きもすべて右前袷せになっているのに対して、女性の服はブラウスが左前袷せになっています。女性のズボンの場合は、カジュアルなものでは右前袷せが多く、フォーマルなものはほとんど左前袷せです。前開きがなくて横ファスナーになっているズボンもありますが、最近はあまり好まれないようです。スカートのファスナーの場合は右前袷せも左前袷せもどちらもあります。一般には女性はフォーマルな装いを要求されるような場所以外ではも右前袷せの服を着ても構いませんが、男性が左前袷せの服を着ていると、変な人だと思われることが多いようです。

1990年代後半に男性のスカートファッションが少し流行り掛けたことがあり、当時はかなり頻繁にスカートを履いた若い男の子を見ましたが、最近はなかなか見ないようになりました。昔にくらべると男性のスカート姿に対する世間の抵抗感は少しは小さくなってはいるようですが、本格的に男性がファッションとしてスカートを履くようになるのはまだまだ先かも知れません。

そういう意味では逆にスカートというのは、内心自分は女ではと思っている男の子にとっては憧れの服であり、自分のスカートを持つ、スカートを履いて過ごす、スカートを履いて外出する、というのは、MTF傾向のある男の子が10代後半から20代前半くらいにかけて、少しずつ体験していくドキドキしたステップになります。そしてスカートを履いた自分に違和感を感じなくなるにつれ、自分は間違いなく女だという確信を強めるのです。

※お化粧 makeup
お化粧が誰に許されるかというのは、その時代・民族により様々な状況にあるのですが、現代の日本では女性はお化粧をし、男性はお化粧をしないのが通例になっています。女性がお化粧せずに会社に出ていくと「口紅くらい塗ってこい」と言われますし、男性がお化粧して会社に出ていくと「顔洗ってこい」と言われるでしょう。ただしこれは業界による差異もあり、男性のお化粧が比較的許容される業界もあります。また近年サッカーのベッカム選手がマニキュアをしているのが刺激になって、男性のマニキュアはあまり珍しいものではなくなったように思われます。

内心自分は女と思っている男の子にとってお化粧というのもまたひとつの憧れです。そういう男の子はしばしばひとりで家で留守番している時に母や姉の化粧品をこっそり付けてみて鏡に見入ったりしているでしょう。そういう傾向の人が一人暮らしをするようになってまず買うのが、スカートと口紅ともいいます。

※性差別 discrimination
戦後のウーマンリブ運動や、近年成立した「男女雇用機会均等法」などにより状況はかなり改善されたのですが、それでも社会上で女性はかなり差別されています。

会社で同じような仕事をしていても、たいてい男性のほうがたくさん給料をもらっていますし昇進するのも早いです。これは社会的に「男性のほうが仕事の能力がある」と思いこんでいる人が多いことと、女性はしばしば結婚するとすぐに仕事をやめてしまう人が多く、責任ある仕事を任せにくい状況があったためです。ただし近年は会社の側からそれまでの「終身雇用性」を破棄するところが多くなっており、逆に若い男性たちもかなりドライになっていて、その会社より条件のいい所があったら簡単に転職し、また上司と対立すると平気で即退職する人も多くなってきており、男性のほうが仕事上期待できるという状況はほぼ崩れてしまいました。

ただ会社や役所の幹部クラスがいまだにほとんど男性で占められているため、どうしても女性は差別されてしまう傾向があります。こういう問題は今後しっかり是正されていくよう、世論も醸成し、制度や意識も変えていく必要があるでしょう。

※結婚 marriage
現在の日本では結婚すると多くの女性が仕事をやめています。また結婚する時にやめなくても最初の子供を妊娠したところで仕事をやめています。この問題は結果的に企業側に、女性にはあまり責任のある仕事を任せたくないという気分を作っています。

女性側が仕事をやめざるを得ないのは、夫や周囲が女性が仕事をしていることにあまりいい顔をしないことが大きいと思われます。またふたりの居住地が離れているような場合は、一緒に暮らすためにはどちらかは仕事をやめざるを得ないわけですが、その場合何も言わなくても女性側が辞めるのが常識のように思われています。

また結婚する時にふたりの姓(苗字)を統一することになっていますが、この場合もたいてい女性側が男性側の姓に合わせています。このあたりの問題をどう平等な方向に持っていくかは今後のひじょうに大きな課題です。



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