←↑→ 基礎知識(8)妊娠と結婚

■■■女性の生理周期と妊娠の仕組み
女性は思春期になると月経(生理,メンス,月のもの)が始まり、妊娠が可能な身体になります。この月経というのはどういう仕組みで起きているのでしょう。

女性の身体の中では1ヶ月に1度卵子が卵巣から排出され(排卵)、子宮に移り、ここで精子との出逢いを待ちます。この時期に男性と性交(セックス)をすれば、精子が膣から子宮へと上っていき卵子と出会えば受精が起きて、妊娠するわけです。妊娠すると約10ヶ月後に出産に至ります。

さて一方、卵子が子宮で待っている間に精子が来なかった場合は、子宮の中で妊娠用に準備されていた受精卵用のベッド(子宮内膜)が剥がれ落ちて、死んだ卵子とともに排出されます。これが月経の時に膣から出てくる出血です。この月経はだいたい3日程度続き、その期間は女性は気分がすぐれず、精神的に不安定になる場合もあります。中には学校や会社に出てこれない人もいますので、女性には「生理休暇」が認められることになっています。

さて排卵が起きるのはだいたい月経の11〜16日程度前の時期です。ということは、その時期を外して性交をすれば妊娠することはないのでしょうか?

それはそううまくは行きません。この「排卵日」と予想される時期を外して性交することで妊娠を避ける(避妊する)方法として「オギノ式」とか「基礎体温法」というのがあるのですが、女性の身体はとてもデリケートで、排卵日でない時にでも、男性と性交することで卵巣が刺激されて、排卵が起きてしまうことがあります。精子は女性の身体の中で3日くらいは生きていますので、その間に排卵が起きれば妊娠してしまうのです。

ですからやはり避妊は後で述べるようにコンドームかピルでやる必要があります。

■■■結婚と子作り
恋愛はいわば結婚の「試食」ということもできます。結婚したふたりは社会的に子供を作ることが奨励されますので、一般に妊娠をおそれずに性交をすることができます。むろん種々の事情ですぐには妊娠したくない場合は、結婚後もしばらくは避妊を続ける場合もあります。

結婚しているふたりが性交の結果、妊娠した場合はそのふたりで協力してその子供を育てていくことになります。結婚するつもりではいてもまだ結婚していない内に、うっかり妊娠してしまう場合というのもあります。その場合、ふたりがもう結婚するつもりでいたのであれば多くの場合、急いで結婚して、生まれてくる子供を育てる準備をはじめます。

しかし不幸にして、結婚していない状態で妊娠してしまったのに、結婚できないということもあります。その時にできてしまった子供をどうするかは、主として妊娠している女性側の考え方によります。ひとりででも産んで育てたいと思う人は「シングルマザー」の道を選びますし、育てる自信がなかったり、その相手の男性の事が嫌いであの人の子供なら産みたくないと考える場合は、中絶する場合もあります。

中絶は要するにお腹の中の赤ちゃんを殺してしまう訳ですが、妊娠していた母体側にもかなりの負担がかかります。特にある程度月数が進んでしまってから中絶する場合は、ほとんど出産するのと同じ程度の負荷がかかり、かなり大変です。

中学生や高校生が妊娠してしまった場合は、中絶を選択する人が多いのですが、中学生・高校生の場合は大人の女性以上に、身体への負荷は大きくなります。それゆえに中学生・高校生の男女交際では避妊はしっかり確実にやる必要がありますし、そもそも避妊に悩まなくてもいいように、性交そのものをできるだけ控えるようにしたほうが良いでしょう。

■■■避妊法
避妊にはいろいろな方法がありますが、基本的に次の2つ以外の方法は考える必要がありません。

 コンドーム
 ピル

■コンドーム

コンドームは男性の陰茎にかぶせて使用するもので、ゴムで出来ています。この中で射精する限り、精子は女性の体内に進入することはできませんので、ひじょうに確実に避妊することができます。避妊の成功率は99%くらいと言われています。コンドームは薬屋さんで簡単に買えますので、恋人とセックスしたい人は必ず事前に準備しましょう。

コンドームを使っても妊娠するのはだいたい次のような場合です。

(1)挿入前からちゃんとコンドームを装着していなくて、最初は陰茎をそのまま(生で)入れておき、そろそろ射精かなという時に初めて装着したような場合。
射精する前でも精子はわずかながら流れ出ています。ですから最初に膣に挿入する前からちゃんと装着しておき、決して生では入れないようにしなければなりません。

(2)一度使用したコンドームをもう一回性交するからといって再利用した場合
コンドームは性感が落ちないようにするため、ひじょうに薄く作られています。2度の使用には耐えられません。再利用すると、コンドームに小さな穴が空いてしまうことが多く、そこから精子が漏れます。

(3)陰茎を自分の手で勃起させて、その手の指を前戯で相手の膣の中に入れたりした時
勃起させた時に勢い余って精子が少し飛び出してくる場合があります。そして指に付着した精子が指とともに膣に入ればとうぜん妊娠の可能性があります。前戯で女性を刺激して「濡らして」あげる場合は、自分の方は後回しにしてください。男性のほうが速く臨戦態勢になれますので、相手が塗れてきてからこちらの陰茎を勃起させるので、充分間に合います。

■ピル

ピルは女性側が使えるものですが、できれば避妊はコンドームでやりましょう。コンドームは避妊の効果と性病予防の効果がありますが、ピルは避妊だけにしか効果がありません。

ただ、男性側の協力がどうしても得られないような場合は、これを使用しても構いません。

ピルはとても軽いホルモン剤です。これを毎日飲み続けることによって、身体が妊娠中と類似のホルモン状態になり、妊娠中は排卵は起きませんので、これによって避妊をすることができます。

ピルは正確に言えば、自分の生理周期に合わせて21日間飲んだら生理前後の7日間ほど休み、それからまた21日間続けて飲む、ということを繰り返す必要があります。ピルもひじょうに成功率の高い避妊法であって、きちんと飲んでいればほぼ確実に避妊できるのですが、実はピルをやっていたのに誤って妊娠してしまった人の大半が「月経明けの薬の飲み忘れ」です。

そこでこの飲み忘れを防ぐため、月経の期間中も飲める偽薬(何の薬効もない錠剤)を7日分セットしてあるものも販売されています。基本的にはこのタイプを入手するようにしたほうが良いでしょう。

なお、ピルは毎日飲まなければいけませんので、きちんとした性格の人にしかお勧めできません。自分がだらしない性格だと思う人はピルはやっとも無駄です。

なおピルは国内の薬局では医師の処方箋が無ければ買えません。これはとてもおかしなことだと思うのですが、法律が今のところはそうなっているので仕方がありません。中学生や高校生がピルが欲しいと言うと、お医者さんによってはゴチャゴチャ言う可能性もあります。話の分かりそうな婦人科のお医者さんに相談してください。

■■■膣洗浄はあくまで最後の手段
男性はとってもいい加減ですので、女性側がコンドームを付けてと言っているのに「絶対中出ししないから生でさせて」と言って、避妊具をつけずに挿入したがる人がいます。

これは先にも述べましたように、中で射精しなかったとしても精子は少量ながら漏れてくるので、コンドームをつけないまま入れてしまったら、たとえすぐ抜いたとしても、妊娠の可能性はあります。

更にはこういうことを言った男性に限って、失敗して中で射精してしまうものです。こういう場合にはとにかく、膣を洗うしかないのですが、洗浄したことで妊娠を避けられる確率はとても低いといわざるを得ません。

コーラで洗うと良いという話もありますが、完璧な迷信です。妊娠したくなかったら、絶対にコンドームを付けさせること。これは女性側としては絶対に譲ってはいけません。また男性も、妊娠させたらまずい場合は絶対に付けること。これは最低限の男女交際におけるマナーです。

■■■不妊手術
結婚して子供が何人かできて、もうこれ以上は欲しくないという場合に、永久に妊娠しないようにする手術を受ける夫婦もいます。これを不妊手術といいます。不妊手術の影響は永久的で、これをしてしまった場合、あとでまた子供が欲しくなっても、もう無理です。ですから不妊手術はよくよく考えて受けなければなりません。

不妊手術は男性側が受ける場合と女性側が受ける場合があります。男性側のほうが簡単な手術ですが、日本の現状では男性側が受けたがらずに、やむを得ず女性側が受けている場合が多いようです。

不妊手術は次節で説明する去勢と違って、睾丸・卵巣を除去することはありませんので、妊娠ができなくなるだけで、ホルモンバランスなどを崩すことはありません。

俗に男性の不妊手術を「パイプカット」といいます。これは昔は精管を切断することによっておこなっていたためですが、現在では精管を切断するのではなく、結んでしまうようになっています。しかし結んだ所は癒着してしまいますから、あとでそれをほどいて精子が通るようにすることは、ほとんど不可能です。女性の不妊手術の場合も卵管を結んで卵子が子宮まで来ないようにしてしまいます。

なお男性の不妊手術をしても、精嚢にたまっている分の精子はまだ放出可能ですので、不妊手術後数回の射精の中にはまだ精子が入っています。そこで不妊手術をした直後に性交してしまい「あれ?妊娠してしまった」と悩むカップルもしばしばいます。



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