←↑→ 基礎知識(10)性転換手術

さて、この文書の先頭で、男の子からちんちんを切り取っても女の子になれるわけではありませんと言ったのですが、実際問題として「性転換手術」というのはおこなわれています。これは実際にはどのようにするのでしょうか。

■■■男性から女性への性転換手術
男性から女性への性転換手術はしばしば「ポールとボールを取ってホールを作る」と表現されます。ポール(陰茎,ちんちん)とボール(睾丸,たまたま)を無くして、代わりにホール(膣,ヴァギナ)を作るわけです。手術はだいたい次のような感じで進行します。

(1)陰嚢の中央の線に沿って切開し、睾丸を取り出して切除する。
(2)陰茎を皮と海綿体と尿道と亀頭に分解する。海綿体はハサミでチョキンと切ってゴミ箱へ。
(3)女性の膣があるべき場所に指や器具を使って穴を開け、そこに陰茎の皮膚を押し込む。
(4)亀頭は一部は陰茎皮膚といっしょに押し込んで膣の再奥部に設置し、一部は陰核として再利用する。この部分のやり方は医師によって様々。
(5)尿道を女性の尿道口がある部分に固定してその先の余分な長さは切り捨てる。ただし医師によっては本来の女性の尿道口の位置より後ろに設置する人もいる。そのほうがおしっこがしやすいため。
(6)陰嚢を利用して大陰唇・小陰唇を形成する。

長年の女性ホルモンの服用で陰茎が萎縮していて、陰茎の皮膚だけでは膣の長さに足りない場合は、大腿部の皮膚や腸の一部を利用して足りない分の膣を補います。腸の組織は元々膣の組織と同じ物なので伸縮性もあり良いのですが、最大の問題点は分泌物が多すぎることで、そのため腸を使用して膣を作った人は、いつもナプキンを当てておく必要があります。陰茎皮膚だけで膣を作って欲しい人は、(特に女性ホルモンをはじめた後)日々自慰をおこなって陰茎が萎縮しないようにしておかなければなりません。

性転換手術は大手術ですので手術の直後は新しく作った陰部が腫れていたり傷が残っていたりで、必ずしも美しいものではありません。手術が終わってから半年もたてば落ち着いてきて、普通の女性の陰部のようになります。

■■■女性から男性への性転換手術
男性から女性への性転換手術に比べて女性から男性への性転換手術はひじょうに大変です。これは「あるものをなくす」のは簡単でも、「ないものをつくる」のは困難だからです。手術には色々な方法がありますが下記はその一例です。

【1度目の手術】
(1)卵巣と子宮を除去する。膣口をふさぐ。
(2)尿道口の真上10cmほどにメスを入れて、上下が下腹部につながった取手状のものをつくる。これをあとで陰茎に加工するわけだが、この部分が落ち着くまで数ヶ月待つ。

【2度目の手術】
(3)取手状の部分の上を身体から切り離して亀頭の形に加工する。
(4)シリコン製のチューブで元々の尿道口と、新設した陰茎の先端とをつなぐ。これは陰茎の芯も兼ねる。
(5)大腿部から採った皮膚で陰嚢を形成し、内部にシリコンボールを2個入れて睾丸とする。

このようにして作った陰茎は普通に見ただけでは通常の男性の陰茎と区別が付きません。こういう方法を採らずに最初からシリコン製の陰茎を付ける流儀もあるようですが、やはり本人の肉体から形成したもののほうが感触も満足感も良いようです。ただしこの陰茎は常に同じ大きさであり、寒さで縮んだり性的に興奮して大きくなったりすることはありません。むろん女性との性交で膣に挿入するのには問題ありません。

■■■半陰陽の人の性別決定
上記に紹介した方法は、元々独立した性を持っていた人の外性器の形状を異性のものに変更するものですが、もともと半陰陽であった人についてはケースバイケースで色々な方法が採られます。

1970年代頃までは半陰陽の場合、性別がよく分からない場合は女性としておくように言われたものです。これは手術で女性の形に変えるほうが、男性の形に変えるよりも簡単で本人の身体にも負担がかからないためです。しかし今日ではそのような乱暴な意見はなりをひそめ、半陰陽の人をどちらの性にするかは、本人がある程度大きくなってから本人の意志で決めるべきだという意見が強くなってきています。



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