←↑→ 基礎知識(11)性転換の意味

性転換手術というものを知って心をときめかせする人は多くあります。自分は男の子に生まれてしまったけど、こういう手術を受ければちゃんと女の子になることができるんだとこの手術に大きな夢を託す人は多いです。

しかし「性転換手術」というのは実は「性を転換するための手術」ではありません。むしろ「性を転換してしまった人のための手術」なのです。現在の(男性から女性への)性転換手術の技術を確立させたモロッコのジョルジュ・ブロー博士(故人)は「私は男を女に変える手術をしているわけではない。女として生きやすくするための手術をしているにすぎない」と言っています。

本当の性転換というのは本人の強い意志と努力によって達成されるものであり、性転換手術というのはその最後の仕上げにすぎないのです。ですから本人が充分生まれた時の性と反対の性で生きていて、それで特に不便も感じていない場合、結局最後まで手術を受けないケースもあります。

男性が女性に本当の意味で性転換するには次のようなステップが必要です(女性から男性への性転換も同様)。
(1)まずは女装してみる。
(2)女性としての自分に名前を付ける。女装することになれたら部屋の中ではいつも女装しているようにする。
(3)お化粧を覚え、女装で積極的に外を歩くようにする。髪ものばす。女性名でメールアドレスを作りホームページなども作ってみる。
(4)学校や会社に行く時も下着は女物を使用するようにする。友人達にカムアウトし、友人達からの手紙は女性名でもらえるようにする。(後で改名する時に重要)
(5)自分が女であるという気持ちが動かないものとなったら女性ホルモンを取りはじめる。
(6)必要に応じて、豊胸手術や永久脱毛などをする
(7)学校や会社にも女装で出て行けるようにする。
(8)最終的に性転換手術を受ける。
(9)戸籍を女性に変える

ここでは大雑把な流れをあげました。詳しいことは次章で書きます。

上記の(7)の所までで事実上の性転換は既に終わっています。(8)や(9)はドラマティックではありますが、それは「本人は女性なのだから、ちんちんやたまたまが付いているのは変だ。だから取ってしまう」あるいは「本人は女性なのだから戸籍に男性と記されているのは変だ。だから女性と修正する」ということです。

ですから、この文書の冒頭でも言ったように、ちんちんを切ったからといって女の子になれる訳ではないのです。ただ、女の子にちんちんが付いてたら変だから切る、というのはありなのです。

これを勘違いするとおかしなことになります。もう20年以上前にアメリカで、赤ちゃんの時に医療事故でちんちんを失ってしまった男の子を、いっそ女の子として育てようといって陰嚢も取り、女性ホルモンも投与して女の子として育てた例があります。しかしこの子は思春期までは順調に女の子として育ったものの、中学生頃から「男になりたい」と漏らすようになり、最終的には男として生きる道を選択し、理解のある女性と結婚しました。

ちんちんが付いているからといって男として生きていかなければならないということは無いのと同様に、ちんちんが無いからといって女として生きられるかというとはそれも違います。男として生きるか女として生きるかは本人の素質と意志の問題であって、ちんちんがあるかどうかというのは、実はたいした問題ではないのです。

ですからこの文書の冒頭で、男と女を区別する方法として

  髪が長くてスカートを履いてたら女性、髪が短くてズボンを履いてたら男性。

というのを挙げた上で、そのあとでちんちんの有り無しを言ったのですが、ちんちんの有り無しは比較的どうでもよい話であって、本人が男として生きているか女として生きているかで全ては決まるのです。



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