−それぞれの幸せ−
17


…………半年後…………

「この分だと、もうそろそろだね。……元気な子、生まれるといいね」
「はい。頑張って、元気な子を産みますね。……でも、大丈夫かもしれませんね。よく、蹴ってきますから」
「随分と元気なんだね。……きっと、早く生まれたがっているんだね」
「ふふふ。……そうかもしれませんね」
昼。アルベイン家で、ミントとアーチェはお喋りをしていた。
ミントはもう臨月に入っている。その証拠に、彼女のお腹はとても大きくなっていた。
「……そう言えば、この前夢を見たんです」
「どんな夢なの?」
「……不思議な夢なんです。とても、不思議な……」
ミントは、その夢の事をアーチェに話した。
「…………それじゃあ、今度生まれてくる赤ちゃんは……」
「………多分………いえ、絶対に……だと思います」
「……もしそうなら………凄く………」
「……嬉しい事ですね」
「うん、そうだね。…………以前の記憶は無いけれど」
「…………また……会えるのですからね」
「クレスは?…………クレスは、その事を知っているの?」
「知っていますよ。………同じ夢を見ていましたから」
「そうなんだ。………でも………じゃないのが、少し残念だよね」
「………この子が……さんの生まれ変わりなら………多分」
「いずれ…………巡り合えるって事?」
「……人の運命とは……そう言うものですよ」
「……………だといいね」
「………そうですね」
ゆっくりと流れていく時間の中で、二人はゆっくりとお喋りを楽しんでいた。
クレスとチェスターが、久しぶりの狩りから帰ってくるまでずっと。


それから数日後。ミントは、元気な女の子を出産した。
クレスとミントは、その女の子に『ミルダ』と言う名をつけた。
それは、あの夢を見た時からずっと決めていた事だった。
二人の子供が、ミラルドの生まれ変わりだと言う夢を見た時から、ずっと決めていた名前だった。


クレスとミントの愛を受け、ミルダはすくすくと元気に成長していった。
彼女が年頃の頃には、聡明で美しい女性と言う表現がぴったりな程になり、町の男性達の、憧れの的になっていた。
だが、男性達は彼女に憧れてはいたが、告白しようとする者はいなかった。
何故なら、彼女には既に心に決めている人がいるから。

………記憶の中に無くとも、変わらぬ愛を誓い合える人がいたから。
………以前の事は忘れてしまっていても、二人はいつも一緒だから。
………たとえ体と名前が変わってしまっても、二人の魂はいつまでも、決して離れる事はないから。

生まれ変わってからも、彼はミルダの尻に敷かれていた。
生まれ変わってからも、彼はミルダにいいようにからかわれていた。
生まれ変わってからも、ミルダは彼の世話を焼いていた。
生まれ変わってからも、ミルダは彼の側にいた。
生まれ変わっても、二人の絆はずっと続いていた。


二人の絆は、何よりも強いから。


終わり


BACK←     →あとがき


BACK