−それぞれの幸せ−
6
「…………?」
クレスは困ったような顔をして、何やら考え込んでいた。
「………………今見たのは、クラースさんにミラルドさん……だよな」
クレスは昨日と同じ様に、クラースが出てくる夢を見た。その夢の内容は、クラースとミラルドが結ばれて、平穏な夫婦生活を送っていると言うものだった。
だが、夢にしてはあまりにも現実感がありすぎた。
「おはようございます、あなた。……今日も良い朝ですね」
部屋から出てきたミントが、ちょっと寝ぼけ気味の笑顔でクレスに挨拶する。
「ああ、おはよう。……今日は早いね」
「ええ。……昨日は、早く寝ましたから」
それからクレスとミントは、チェスター達が起きてくるまで他愛のないお喋りをした。
「なあミント」
「なんですか?」
「……実は、今日もクラースさんの夢を見たんだ」
「私も見ましたよ」
「………クラースさん、幸せそうだったね」
「そうですね。……ミラルドさんも、とても嬉しそうに微笑んでいて」
二人は、今朝見た夢の事で語りあい、その中で起こった事を自分の事の様に喜び、微笑みあっていた。
「よかったよね、クラースさん達も幸せになれて」
「はい」
眠気覚ましのお茶を飲みながら、クレスとミントはそう言って笑った。
「何だ。結局お前達も見ていたのか」
チェスターは、ちょっとがっかりしたような口調でそう言う。
「ええ、見ましたよ。…クラースさんもミラルドさんも、とても幸せそうでした」
「そうそう。まさか、アタシが旅している間にそんな事があったなんてねぇ〜。ほんと、ミラルドさんの花嫁姿奇麗だったねぇ〜」
チェスターの言葉に、二人の女性はそう答えた。
今彼等は、ユークリッドの墓地へと向かっていた。過去の仲間の墓参りをして、自分達の事とかを報告するために。
「ねぇ。そのクラースって、どんな人だったの?」
エーチェが、誰にともなくそう聞く。
「クラースさんか……そうだな…………」
その後、チェスターは娘にクラースの事を教え始めた。所々でクレスやアーチェが付け足したり直したりしたものの、チェスターはしっかりとクラースの事をエーチェに教えた。
「ふぅん。……良い人なんだね」
みんなの説明を聞いた後、エーチェは明るい笑顔でそう言った。一体どこまで理解できていたのかは謎だが、本人が満足しているのだからそれでいいだろう。
「……良い人ねぇ…」
「……まあ、気になさらないで」
アーチェは頭を掻きながら、困った様に呟いた。ミントはその光景に、少し苦笑していた。
BACK← →NEXT