Last update Jun.21,2000

Gary Moore / a different beat

今回のレビューは、わたしが参加しているサークルMidships!のHoly Snowの作成がそろそろのっぴきならないところまで来たので、 とりあえずメールのログを整理した際に発掘したふぁくとり氏宛てのメールから手直ししたものです。

ギターは顔で弾けという究極の極意をわたしに教えてくださった心の師匠Gary Moore(以下、師匠)の最新アルバムです。

'90年代はブルーズ一辺倒だった師匠が本当に久しぶりに発表された前作で、 突如としてデジタルビートとサンプリングを大幅に導入して 昔からのファンを困惑させましたが、この「a different beat」もその延長線上にあります。

その前作では、人間国宝とまで謳われた師匠のギタープレイがほとんどフューチャーされておらず、 また、初めての試みということもあってか デジタルビートとの融合はいまいち消化不良といった感は否めず、 どうにも聴きどころの無い作品でしたが、 今回はサウンドエンジニアにブルーズ時代に師匠の片腕を勤めていたイアン・テイラーが復帰したこともあってか、 師匠の鬼神のようなプレイが高密度に詰め込まれていて非常に楽しめるものに仕上がっています。

マジ、このイアン・テイラー只者ではありません。すっげーミックス技術です。

前作があまりといえばあまりな出来だったので、今回のアルバムは買うまいかと思っていたのですが、 何かの用事でアキバのあきばおーというショップに寄った際に なんかえらいカッコ良い曲がかかっていて、

「へー誰の曲だろう?」

なんて考えていたらなんかどこかで聴いたことのあるタッチ・・・も、もしかして師匠の新曲ですか?

で、そのまま速攻でゲット!
早速聴いてみるとズバリ正解。 しかし、さすがは師匠。ピッキングのタッチを一発聴いただけで師匠のプレイだと判りました。

相変わらずいい音出してます。
いや、師匠がめちゃくちゃギター巧いってのもデカイですが、 Green God=ピーター・グリーンから受け継いだレスポール・スタンダードは奇跡のギターですな。
極上です。

マジで、このレスポール持たせて、オーバードライブトーンでブルーズを弾かせたら 世界最強間違いなしでしょう。

楽曲についてですが、最初に聴いたときはこのCD Review記念すべき一回目で取り上げた ギターサイボーグ=Jeff Beckと同じ方向性だと思ったのですが、実はぜんぜん違っていました。

Jeffの方は、あくまでも最近のダンスビートを卓越したミュージシャンの生演奏で 実現することによって、他の追随を許さない孤高の領域に踏み込んでいましたが、 師匠の「a different beat」は、どんなバックに重ねようとも

「自分のギタープレイさえあれば、 どんなスタイルでもGary Mooreにできるぜっ!」

というソロイストとしての壮絶なまでの存在感を 見せつける作品に仕上がっています。

ようするに、師匠の初期作品の2000年バージョンって感じです。

世間では前作に引き続く問題作。
などといわれてますが、そういった意味ではあきれるほどに何も変わっていません。

しかし、デジタルビートの上であんなに壮絶なブルーズプレイができるなんて・・・ さすがは人間国宝。

師匠以外だとB'zの松本があと何年かすればこの境地まで到達できるかもしれません。

JeffのWho eles!では、ギタリスト以外に聴いて欲しいと書きましたが、 このa differnt beatはギタリストにこそ聴いてもらいたいです。