小ネタの部屋

 

その51

「スナニワ金融ファイト」その1

灰原達之(本人=中居正広)が、スマ国金融に出社しようとしていた時だった。きっちりスーツに、さらさらヘアで、いかにも頭良さそー!なキリリと、心あったかそーー!な、フワリを絶妙に配置した表情で、今日の灰原も絶好調。
そして角を曲がったところで、
「きゃっ!」
「あ、だ、大丈夫ですかっ?」
もちろん、曲がり角ではいつでも出会いが待ちうけていて、そしてそれは運命の出会いだったりするのだが、一人の女性とぶつかった。細い灰原の腕の中でも、さらに華奢なその女性は、小さな顔、すけるような白い肌、ほっそーーい、かっるーい、きゃっしゃー!な体をしており、黒いその洋服は。
「喪服・・・?」
「あ、す、すみません・・・」
灰原の手をかり立ちあがった女性は、喪服姿の宮園冴香(本人=宮沢りえ)だった。
「大丈夫ですか?」
「えぇ、だいじょ・・・、あ・・・っ」
イギリスでは、上流夫人のため、失神の仕方を教える教室があるらしい。その教室でも、かなりな優等生になれるであろう見事な失神っぷりで、冴香は意識を失った。
「あっ!しっ、しっかりっ!」
「灰原くぅーーん!」
「桑田さん!」
「見てしまったー。見てしまった、灰原くんが、灰原くんが、朝っぱらから道端で喪服の美人をどーこーしようとしているところを見てしまったぁ〜。あああ!社長に報告ぅ〜!」
「してないって!」
桑田澄男(木村拓哉)は、あわあわと携帯を取り出そうとして、殴られた。
「いたいなぁ〜、灰原くぅ〜ん」

うまい。うまい?
と目線で会話した二人は、失神している宮園冴香を運ぼうとして、どうやって運ぶかで揉めた。
「灰原くぅん、大丈夫。そんな、こんな細い人、一人で運べるがな」
「いや、俺だって運べますよ」
「いやいや、ええから。灰原くん、細いんやから、無理せんと」
「桑田さんこそ、先輩なんですから。こんなことは、下っ端の仕事でっ」
うつぶせに倒れている冴香の肩はひくひくと震えているが、その冴香の体は、桑田、灰原、桑田、灰原、休んで、休んで、また桑田、というように移動させられた。
「桑田さん!やめて!奥様、今確実に気分悪くなってる!」
「気分ってゆーか、気持ち悪いですか?奥様?」
「え、えぇ・・・、ちょ、ちょっと・・・」
ちょっと涙目までになっていて、これはいけない、本当に運ばなくては!と、桑田が、それ、桑田のキャラじゃないじゃん!というお姫様だっこで冴香を抱き上げ様とした時だった。

「やめろぉ!」
「あ、あなたは・・・!」
「誰!?」
灰原に尋ねられ、彼は、一歩前に出てきた。
「井原満(本人=草g剛)だ」
「あ、どうも、灰原です」
「桑田ですー」
穏やかな名刺交換の時間が流れ、改めて。
「あんた何やってんだよ!」
満が冴香に言う。
「まさかこのスマ国金融にお金を借りようなんて・・・!」
「その通りよ!宮園総合食品を守るには、現金が必要なの!」
「何言ってんだ!宮沢総合食品ともあろうものが、マチ金から金を借りるなんて・・・!」
「マチ金なんてぇ?
灰原は、スマ国金融に誇りを持っていた。そんなことを言われる覚えなんてなかったのだ。
きっ!と満を睨み、ご融資ですか?と冴香に尋ねる。桑田は、ちゃっかり、冴香の肩を抱いてしまっていた。
「桑田さんっ!」
「あっ!この手が!あかんがな、あかんがなー、灰原くーん」
「うちの事務所はすぐそこです。ご融資の条件などもありますから、どうぞ、おいでになってください」
その灰原の物腰に、こっくりうなずいてしまう冴香。しかし、満は、冴香にそんなことをさせる訳にはいかない!と、冴香の腕をつかんだ!
まさにとの時!

「ひっどぉぉぉぉーーーーーいぃぃぃぃぃぃーーーーーーー!!!!!!!」
ムチムチと、ガタイのいい田村麻奈美(香取慎吾)がマッハのスピードでやってきて、満をふっ飛ばした。
「満さぁん、ひどいわ、ひどいわぁぁーーー!!」
「あはははは!すごいなぁ、麻奈美さぁん」
加賀見俊介(プリンスメロン様=稲垣吾郎)も、にこやかに笑いながら、スタジオのすみまでふっとんだ満を眺めている。
「満さんっ!私というものがありながらっ、なんで、そんな人とっ!」
「細いからじゃないのかなぁ」
「ひっどぉぉーーーーいぃぃぃぃーーーー!!!」
再び吹っ飛ばされる満。
「と、とにかくっ!」
それでも満はへこたれなかった。
「宮園総合食品を、マチ金なんかに任せる訳にはいかないんだ!勝負だ!」
「勝負だと?」
「フードファイト・・・」
またもや、すかさず腰に手を回していた桑田の耳に、冴香の声が聞こえる。
「フードファイトしか、ないわね・・・!」
「フードファイト・・・!?」

そしてついに、スマ国金融VS宮園総合食品のフードファイトが行われることになったのだ!

「それじゃあ、灰原くん、がんばってー」
「えっ?く、桑田さんっ?」
「こーゆーことは若いもんじゃないと」
「うそ!俺聞いてねぇもん!」
「いやいや、灰原くん、主役なんだから、活躍しないと(笑)!」
カカカと行ってしまおうとする桑田のスーツを灰原がとっつかまえる。
「何?えっ?く、桑田、さん・・・?」
「いや、ここは灰原がいけと、社長がいってるから」
ウソ!とスタジオの隅を見ると、スマ国金融社長、金子高利(本人=緒形拳)が笑っていた。
「うそぉー!」

どうなる!フードファイト!以下次週(笑)!


その52

「スナニワ金融ファイト」その2

ええええ、と、困惑し、目がキョロキョロ泳いでいる灰原は、そそくさとフードファイトの会場に連れていかれた。
「えー!ちょっとー!」
抵抗しようにも、もう、そこには、フードファイトの会場がセッティングされている。美術スタッフ渾身のリアルな作品だ。
「いや、ちょっと、まじでまじで・・・!」
「灰原くーん、頼んだでー!スマ国金融のためやからなー!」
「うわー!!桑田さんがやるってゆってたじゃーん!」
「こらっ!先輩に向かってなんて口の聞き方や!ねぇ、社長〜♪」
「そうやでー?灰原、しっかりせなあかんでー」
スーツにコート姿でニコニコ笑っている金子は、観覧席に座ってご満悦。そしてその隣に、冴香が座って、さらにご満悦。
しかし、反対側に、麻奈美が座った時、笑顔は崩さなかったが、コメカミあたりがちいさく、ひくりとした。
「えー、社長さん、なんですかぁ?」
のんびりした口調で、首を傾げ、上目遣い、さらに、マスカラばっちり!アイ、で金子は見上げられ、もう片方のコメカミもひくりとさせながら、そうだよ、と返事をする。
「あっ、僕もっ、僕も加賀美グループのトップなんですっ、うふふっ!」
目をぎゅーーっと閉じて、顔一杯でうふふふ!と笑うプリンスメロン様を見ても、なおも微笑んでいられる。
それが、本当の金融屋だ。
今、満の側には、チームドクターの如月(斉藤洋介)がついており、アドバイスをしていた。
「灰原に勝つのは・・・、無理だ」
「なんで!あんなに細くて、食える訳ない」
「やつのレントゲンだ・・・!」
「レントゲン?」
そこには、アニメなどで使われる、典型的なガイコツが描かれたレントゲン(らしきもの)があった。
「・・・普通じゃないか、胃袋だって」
「違う!ここだ!」
「あっ!!」
レントゲンの時には、はい深呼吸してー、と言われるが、なぜか灰原は、その時に、口の中にも空気を貯めてしまうクセがあった。
「こ、これは・・・!」
「そう。ヤツは、人類でありながら・・・!頬袋があるんだ!」
「頬袋ーーーー!!!!」
レントゲンには、ぷっくりふくらんだ両方のホッぺが映っていた。
「いくらおまえの胃袋が宇宙でも、ヤツは頬袋に食べ物を詰め込める限り、いくらでも口に入れられるんだぞ!?勝てる訳がない!」
フードファイトって、全部飲み込まなくてもいいんだっけ??とか、そういうことを考えている満の視線は、
「もー、だって俺、くえねーもーーんっ!」
と桑田に文句を言い、ぷくーーーっと頬を膨らませた灰原に釘づけになった。
なんとしなやかに広がりそうな頬なのか・・・!針でつついたら、ぱん!と割れそうなほどの・・・!
「あっはっはっは!灰原くーん!なんやそのほっぺはー!笑えるのぉー!」
桑田はその頬を、両手でぐりぐりと潰してします。頬袋を潰された灰原の顔は、すっきりと小造りで、むしろ頬はこけてみえるほど・・・。つまり頬の余裕が普通より多いということだった。
『・・・・・勝てるのか・・・!?』
無敵のチャンプ、井原満の背中を冷たい汗が初めて流れた。

「今日の対戦メニューは」
喪服の冴香がすっと立ちあがり、よく通る声で宣言した。
「ハンバーガーです!」

「はぁんばーーがぁーーーーーー?」
不服気な声は灰原からだった。
「なんか、もっと・・・・、なんかもっと、すげえの食ってんじゃん!米は魚沼産こしひかり、とか!」
「何ゆーてんえん、灰原くん。ハンバーガーもすごいハンバーガーに決まってるやないか!肉は、米沢産和牛とか!」
そうですよね?と二人から見上げられ、冴香はにっこりと微笑んだ。
神々しくも美しい表情、そして、夢見勝ちな唇から零れ落ちた言葉はこれだった。

「65円バーガーです」

「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
「てめふざけてんのかーーーー!!!!」
灰原の声に、冴香はそっと眉をひそめる。
「・・・今の宮園総合食品にできるのは、これくらい・・・!」
泣くものですか。
冴香はきゅ、と唇を噛む。
夫の残した大事な会社。泣いているヒマなんて、私にはないの・・・!
小さく震える肩を、金子がぽん、と叩いた。

「桑田ぁー」
「はいっ?どしました、社長っ」
「おまえー、ちょっと呼んで来いやー」
「ん?ん?誰をでっか?社長っ」
ちょいちょいと呼ばれた桑田は、金子から耳打ちされ、へぇ、と笑顔で出ていく。
「灰原ー。ちょー待ってやー」
「しゃ、社長?」
「奥さんも、ええな?」
「は、はい・・・?」
愉快そうな笑顔で、金子は全員を見まわした。
「ハンバーガーもええけど、もっとええのがあるやろ」
「え、じゃあ・・・!」
冴香は、ひしっ、と金子を見上げる。
「いやいや・・・」
その美しい視線を独り占めして鷹揚に頷いていると。
「社長さん、すっごーーーい!!!」
と反対側から麻奈美に突進された。冴香ごと倒れた。
「いやっ!社長さん、どーしたのっ!ねぇ、大丈夫ぅっ!?」
「麻奈美さんっ!僕だって、僕だって、素敵なメニューを提供することなんてできるんだよ!麻奈美さんっ!」
「プリンスメロンなんていやーー!!せめて夕張にしてーー!!」

観覧席は大騒ぎ。
どうなる!フードファイト!以下次週(笑)!


その53

「スナニワ金融ファイト」その3

頬袋の調子は最高だ・・・。
椅子に無理やり座らされた灰原は、逃げたいたい気持ちを押さえることに成功した。
かつてないほどに、頬袋の調子がいい。どこまで大きく膨らむつもりなのか、灰原自身にも想像がつかなく、恐いほどだ。
灰原とて、街金の男。フードファイトなどという怪しげなギャンブルが行われているらしい、ということは聞いていた。そして、フードファイトに使われる料理は、量はもちろん、味も一級らしいとも。
それなのに、65円バーガーなんて!
あの奥さん、美人なのに、ホントにお金がないんだな!?

きっ!と灰原の鋭い視線を受けるはずだった冴香は、うっとりした表情で、金子を見上げていた。
「年上&金持ち」
このキーワードに弱い冴香だった。

「しゃーーちょーーーー!!」
そこに桑田が帰ってきた。連れられているのは、泥沼亀之助(本人=梶原善)。
「泥沼さんっ!?」
「いやいや、灰原さーーん!」
「何やってんですか!泥沼さん!」
「あ、今日は違うんですよ、大丈夫大丈夫!今日は、これ持ってきただけですからー!」
これ!と、おかもちを見せる泥沼は、幸楽(某ドラマの有名なラーメン屋)の店員か!という衣装を着ている。
うふふ、と微笑む泥沼がおかもちから取り出したものは。
「・・・餃子・・・?」
「ただの餃子やないでー!灰原くーん!」
桑田は、きらびやかな扇子をぱたぱたさせながら鼻高々だ。
「フカヒレ入りやでぇ〜?」
「え!フカヒレ!」
食べたことないから、どんな味か解らないっ!
満と灰原の気持ちは同じだった。
「さらに、マツタケ餃子!」
「ま、マツタケ!」
「餃子の皮には金箔入り!」
「き、き、金箔ーー!」
「ええか?灰原くん、この餃子は一人前6個。これを全部食べたら次の皿にいってもらうからな!」
「6個ってことは、フカヒレ3個に、マツタケ3個ですか?」
「ちっちっちっちっ」
桑田は指を振る。
「誰がそんなことゆーたんやー、あかんがなー」
「え、違うのか?」
満もそうかなーと思っていたので、ん?と首を傾げる。
「フカヒレ!マツタケ!ときたら、後は、肉!野菜!野菜2!」
「普通じゃないですかー!桑田さーーん!」
「アホやなー、灰原くーん!最後まで聞きなさいー、先輩の言うことは、気をつけてして聞きなさい〜」
なぜか、灰原も満も気を付けをさせられてしまった。
「残りがすごい!これの前には、フカヒレもかすむで!よう聞きやー!」
「はいっ!」
「美味しんぼでも評判の、黒糖餃子!」
「げーーーー!!!!」
「美味しんぼで出てきたほどやで!」
「いやーーー!!」
「いやでもなんでも!それ食わな、次の皿いかさへんからなぁ!!ぴっ!ってカウントせぇへんでぇーー!」

「麻奈美さん。黒糖餃子って食べたことある?あれって、実は美味しいんだよっ」

うふふっ!うふふっ!と微笑みながら、隣にいるはずの麻奈美の方角に、がくん!!と90度首を曲げたプリンスメロン様はそこに空っぽな空間を見た。
「だーべーだーいぃぃーーー!!!」
観覧席の最前列、今にも落ちそうなほど身を乗り出して叫ぶ麻奈美。
「うふふっ、麻奈美さんったら、牛みたですねっ♪」
だらだら流れるよだれは、真下にいるスタッフを濡らしたと言う。

スタッフ絶叫。
どうなる!フードファイト!以下次週(笑)!


その54

「スナニワ金融ファイト」その4

「黒糖・・・?」
つぶやいた灰原は、桑田を見上げて首が飛びそうなほど横に振った。
「んー?どしたかなー?灰原くーん」
「・・・無理・・・っ!」
「無理ってなんや、無理って!」
「だって!無理だって!」
「おっ?逆ギレかぁ〜?」
キレて目が吊りあがっている灰原に、こっちも金融屋としての、凶悪な視線を向ける。
びしぃぃ!!
二人の間で飛び散る火花!あちちっ、と慌てるスタッフ!

そんな中、満はがっくりと肩を落としていた。
「どうしたんだ!満!」
「黒糖・・・!」
「何言ってるんだ!おまえは大福だって食べてきたじゃないか!」
「でも、黒糖は・・・また別だろう・・・!?」
「満・・・。サイズを考えろよ、サイズを。あんなもん、一口で食べれるだろう?味わう必要なんてないじゃないか!」
「そ、そうか・・・!」
それならいける!満は思った。おそらく、食べ物に対する好き嫌いなら、灰原の方が遥かに多い。それなら、口に、頬袋に入れることすら拒否するはずだ!
「俺の胃袋は宇宙だ・・・」
思わず先に決め台詞を言ってしまうほど、満は自信に満ち溢れてきた。

『ではここで!』

天からの声(別名ナレーション)に、全員の顔が引き締まった。

『罰ゲームを発表します!』
「罰げぇむぅーーーーー!!!??????」
勢いよく立ちあがり、椅子を後ろに転がせる灰原に満。
「なんだそれ!なんだそれ!なんだそれぇ!!」
「勝負やからな・・・」
「勝負じゃねぇよー!しらねぇよそんなのーーー!!」
『灰原くん!静かにしてください!』
「できるかぁーーー!!」
『そんな灰原くんが率いる帝国金融チームがもし負けた場合!』
ナレーションは、深みのある声で、きっぱりと告げた。
『ミレニアム日本シリーズ!東京ドーム、ダイエー側スタンドのものすごく目立つ位置で、ダイエーの応援をしてもらいます!』
「なんだそれーーーーー!!!」
それは、灰原にとっては、富士登山より辛いバツゲームなのだ。
「がんばれよー!灰原くーーん!」
桑田は、巨人だろうが、ダイエーだろうが、どこの応援でも別に構わないので気軽なものだ。
満もそんなの俺だってどうだっていいぃーー!と思ったのに。

『そして、フードファイトチームが負けた場合は!』
しかし、わざわざチームごとに分けているのだから、そんな罰ゲームにもならない罰ゲームがやってくるはずがない。
『もう1度いいいことを!ハートフル海のゴミ拾い28時間半!を行ってもらいます!』

「ちょっとまてこらぁーーーー!!!」
今時のキャミワンピを着ていた麻奈美が、観覧席の手すりに足をかけて怒鳴りあげる。
「まっ!麻奈美さんっ!見えちゃう!見えちゃうっ!?」
あわあわするプリンスメロン様だが、麻奈美はナレーターの声がした天井のスピーカーに怒鳴るのだ。
「フードファイト『チーム』ってのは、どーゆーことだぁーーー!」
「え?チーム?」
いきなり素になって驚くプリンスメロン様。
「チームだよ!?つよぽん負けたら俺らまたごみ拾いじゃん!」
「こらー!つよぽんって誰やーー!」
「みっ!満さんっ!負けないでぇーー!」
「大体、罰ゲームに差がありすぎるでしょー!帝国金融は負けたって痛くもかゆくもないじゃない」

気軽に言ったプリンスメロン様は、ふと寒気を覚え、その冷気の方角を探る。
「あ」
その冷気は、どんどん部屋中に満ちていっていたいけれど、その出所は、机に突っ伏した灰原の全身から漂ってきていた。
「頬袋だけかと思えば・・・!どこまで人間離れしてるんだ!」
「・・・できない〜・・・!」
その声は、あたかも、おいてけ掘で、「おいてけぇ〜」と人間を脅しているかのような、低い割れた響きを持っていた。
「そんなことぉぉぉ・・・・・・・・俺にはぁぁぁ・・・・・・・・でぇきぃなぁぁいぃぃぃぃ・・・・・・・・・・・・」

「な?そやからがんばれーゆてるんやがな、灰原くーん♪」
それはもう楽しそうに桑田は言うのだ。もちろん、そんな声は、灰原の脳裏には届いていなかった。灰原は、常に最悪を考えて行動する慎重な性格だ。
まさか、そんな状況に陥ってしまって、そして、もし、長嶋監督に、そんなところを見られたら・・・!
見られてしまったらぁーーーーー!!

きっと、自分はそのまま石になってしまう・・・。
あぁ、桑田さん。
俺が石になってしまったら、俺の部屋の、貯金紙箱のお金と一緒に、そっと、綺麗な海に流してください。大阪湾はいやです。綺麗な海を希望します・・・・・・・。ぶくぶくぶくぶく・・・・・・・・・・。

「それじゃあスタートするでぇ!」
ゴングがなり、倒れている二人の前に、豪華餃子が運ばれてきた。
ちなみに、どれが、どの餃子かは、解りません!順番ばらばらです!」
「きたねーー!」
「でも、急いで食べないと、どうなるか解ってるかなぁ〜、灰原くーん」

きっ!
桑田を睨んだ灰原は、端っこの餃子を箸で掴み、一気に口に入れた。
それを見た途端、打ちのめされていた満も、我にかえる。
勝たなくては!
誰のためでもない。自分のために勝たなくては!
二人は、ぽいぽいと、調子よく餃子を口の中に入れ、そして同時に。
「げぇぇ」
とカエルのような声をあげた。今回の黒糖餃子は、右から4つ目に仕込んであった。
どうすればいい!
なんとかごっくん飲み込んで灰原は考えた。
「は・・!そ、そうだ!」
灰原は、残り二つを口に入れ、さっと手を上げた。
今度は半分に割っていけばいい!そうすれば、不意打ちは避けられる!
割って食べ、割って食べ、割って食べ、割って食べ、割って・・・来た!今度は5つ目だ!
よしこれは頬袋に!と割った黒糖餃子を頬袋に入れて、6つ目、残っているフカヒレ餃子を口にいれようとした灰原は。
「う・・・っ」
頬袋中に広がる黒糖の甘味に、ちょっと倒れそうになってしまったのだ!

「どうすれば・・・!」
満も迷っていた。
他の5つとの味のバランスが悪すぎる!味わわないに限るが、無視できるほどでは・・!
た、試しに・・・!
位置かバチかわからなかったが、ともかく、満は、ラー油を取り上げ、餃子にまわしかけた。たっぷりまわしかけた。ドロドロになるほどまわしかけた。
「味を変えるのか!?」
如月は驚いたが、そうではない。
満は。
自分の舌を麻痺させようと思っていたのだ。
舌が麻痺すれば、味は感じない・・・!黒糖だろうが、フカヒレだろうが、同じように食べられるはずだ!

ぱく!
「げー・・・・・」
が。まだ麻痺する前に、黒糖餃子ラー油たっぷりがけを食べてしまった満は、しばし石のごとく固まった。あああ・・・舌の上をとろりとした黒糖と、とろりとしたラー油が流れてゆくよ。
うふふうふう。
楽しいね。

フードファイトチームって私も入っているのかしら・・・。
私も、ゴミ拾い・・・?
ハラハラしている宮沢りえ!
どうなる!フードファイト!以下次週(笑)!


その55

「スナニワ金融ファイト」その5

結局それは、どっちがどうイヤか、という精神力の勝負となった。
かつて一度やってみて、大変だったけど、まぁ、できるな、と思っている満と、長嶋監督の前でダイエーの応援なんて、死んでもできないと思っている灰原。
「灰原〜!」
ご機嫌な金子の声は、皿数の違いに対してのものだ。
「満!」
如月は声をかけたが、まだ慌ててはいなかった。わずか6個の餃子にして、2皿差がついているだけだ。
しかし、おそらく満は忘れているであろうことを、如月は告げる。
「今回は1ラウンドしかないぞ!」
「ぅえっ!」
ぶはっ!と吹き出される野菜餃子!
「きったねーーーー!!」
かかるはずもないのに叫ぶ灰原!
「えっ!何!今日、1ラウンドっ!?」
「・・・時間の関係でな・・・」
とんとん、と腕時計を叩かれ、激しく反応したのは、観客席の麻奈美だった。
「つっ・・・、み、満さんは、3ラウンド目で大逆転するスロースターター!どうするのよー!!満さぁーーーん!!」
「麻奈美さん!落ちる落ちるぅ!」
麻奈美のキャミワンピの背中を引っ張りながらも、プリンスメロン様も今にも落ちてしまいそうだ。

そんな雑音は、灰原の耳には届いていなかった。
彼はひたすら、頬袋に餃子を詰めていっていたのだ。几帳面な性格を現わすかのように、丁寧に、確実に、皮を破らないように、詰め込んだ餃子に隙間ができないように押し込めていく。そして、確実に黒糖ではない!というものが解れば、それは喉を通した。
ほっそりとしていた顔が、ふっくらと可愛らしく丸くなっていく。
その着実さに、満は、一瞬慌てた。
味がどうとか言ってる場合じゃあない!とにかく口に入れなきゃあ!

・・・それが間違いだった。
『口に入れなきゃあ!』は間違いだった。
『食べなきゃあ!』と思い込めばよかったものを、奇跡の頬袋を持つ男、灰原達之と同じように餃子を6個、一気に『口に』入れてしまったものだから。

「・・・み、満さん・・・?」
もうほとんどそれは、観覧席から吊るされてるといっても過言ではないほどになっている麻奈美がつぶやく。
「満くん・・・」
プリンスメロン様も心配そうな声になる。
「・・・!」
思わず冴香も美しい口元を、ほっそりとしなやかな両手で押さえてしまったが、満は硬直していた。
「み、満!!」
慌てた如月だが、助けに行く訳にはいかない。フードファイトは、一対一の勝負なのだ。
たとえ、満が喉に餃子を詰まらせていても、助けるわけにはいかないのだ!

ある種の動物に襲われて噛まれた時、むしろ、奥に自らつっこんでいけ、という教えがあるそうだが、口の中が一杯になりすぎると、噛むこともできなくなるのだろう。
今の満は、まさに、口中に肉を突っ込まれた猛獣だった。

・・・猛獣にしては、華奢だが。

しばらく硬直していた満だったが、唐突に立ちあがった。そしていきなりセットを出ていこうとする。
「てめ!どこいくんだよ!」
頬袋に餃子を詰めてても灰原は喋れる。
「どっかで出してくるつもりだろー!てめ、きたねーぞぉーー!」
そっと振りかえり、ふるふると無言で首を振る満は、捨てられた上、雨に降られて、入れられたダンボールもボロボロ、の子犬のように哀れを誘う。
あ・・・!と冴香の胸は、ぎゅ、と痛んだ。のだが。
しかし。灰原は金融屋。
「出ていくんだったら、俺の皿数、2皿プラスさせてもらうからな!」
「灰原くーん、3皿いっとこうや〜」
桑田が嬉しそ〜に言い、灰原が、じゃあ、3皿、と言おうとしたところで。
「5や」
金子が片手を広げて言った。
「一皿足りともまからんでー?なぁ、灰原〜」

なんて、ひどい・・・!
冴香は隣に座る男を睨んだが、その奥のある笑顔に、どうしても惹かれてしまう自分を感じずにはいられなかった。
あぁ・・・!今の満は、捨てられた上、雨に降られて入れられたダンボールがボロボロになった上、大きな野良犬に追い払われて、必死に逃げたらそれが水位上昇中の川の中州で、あぁーー!今にも濁流に流されてしまいそーー!!な捨て犬みたいな状態なのに、私ったら・・・!
そしてまさしくそのような状態になってしまっている満は、5皿プラスと言われても、頷くしかなかった・・・。
もう。口の中はすごいことになっていて、気をぬくと、口の端から、たりって。
たりって、何かの汁がタレそうな。
そんな感じになっている。
「満さーーん!!だめよー!そんなのー!!」
いくら麻奈美にそう言われたって、あぁ、もう片一方の口の端からも、たりって、なりそう・・・!

満はそのままセットを飛び出し、灰原の電光掲示板には、5皿がプラスされた。さらに、満が戻って来るまでの間に2皿を詰め込み、二人の皿数差は、9皿と広がってしまう。
残り時間は後5分!
灰原の頬袋はなおも絶好調だった。
10皿差になったところで、ようやく戻ってきた満は、何かをなし終えたような、安堵と幸せに満ちた表情で、ふぅ、と席につく。
「こらーー!!落ちついてる場合かあーーーー!!」
麻奈美の女を忘れた叫び声で、はっ!と我に返った満は、これはいけない!

とにかく口に入れなきゃあ!

と・・・!
再び口に詰めはじめ、そして・・・
「ぐぐぐ・・・・・・・・」
「あんたバカーーーーー??????」
再び、詰まらせる満だった。

勝った。
灰原は確信した。
これでもう1度出ていってもらえば、今度は10皿プラスしてやる。
待っててください!長嶋監督っ!!
さすがにぱんぱんになりだした頬袋に、なおも几帳面に餃子を詰め込んでいた灰原は、目の前で突然起こったできごとに、詰め込もうとしていた黒糖餃子を飲み込んでしまい、目を白黒させる。
観客席から、麻奈美が飛び降りてきたのだ。
キャミワンピがワイルドなミニになっている。
「な、なんやおまえーー!!」
「私たちはチームだものーー!!」
麻奈美はまだ温かいはずの鉄板を片手で掴み、大きく空けた口の中にざらざらと流し込んだ。
「ごっくん」
そしてニ皿目も。ごっくんと一気に飲み込む。
灰原も、桑田も、金子さえも呆然とした。
それは、生ゴミがディスポーザーに吸い込まれるどころではなく、水が水道管を流れていくかのごときスムーズさだったのだ。
「く、桑田・・・!」
「はいっ」
残り時間も少ない。文句を言うより突き放した方が!と桑田も参戦したのだが、水を飲み込むように餃子を飲み込んでいく麻奈美の敵ではなかった。

「やりぃーーー!!!」
3分の間に、20皿の餃子を飲み込んだ女麻奈美が、ガッツポーズを取る。千切れたワンピースから覗く足は、あくまでもワイルドだ。
「麻奈美さん・・・!」
千切れたワンピースの切れ端を手にプリンスメロン様もうっとりと見惚れている。
「さ!いくわよ!満さん!」
よいしょ!と、肩に満を担ぎ上げ(満はまたもや、口の端から、たり、っと何かの汁がタレそうな状態だったが、心の中でつぶやいていた。

「麻奈美さんの胃袋は宇宙以上だ・・・・・・・・・・」

そして、灰原は、まさしく、灰となった・・・。
真っ白な。真っ白な灰に・・・・・・


その56

「bo・ttakuriレストラン」

あなたは、その日、少しウキウキしているかもしれない。長い間手間がかかっていた仕事がようやく一段落して、祝杯をあげたいような気分だけど、もう時間は10時を回っている。勇気を出してどこかの店に入ってみたい気もするけれど、いつも、友達や、彼と一緒に出かけるあなたには、そんな経験がなくて、どうしようかなぁ、もうこんな時間だけど、誰か呼ぼうかなぁと思っている。
そんなあなたの前に、明るいレストランが見えた。
あなたが会社に行く時にはオープン前で、残業をして帰ってくる頃には、ラストオーダーの時間はとっくに過ぎているレストランなのに、今日はまだ開いているようだ。
高いんだろうなぁ〜・・・と思いながら、その明るさに引かれてちょっと覗いてみると、店のスタッフと目が合う。
ほっそい、華奢な、黒いスーツ姿のオーナーは、にっこり笑いながらあなたのためにドアを開ける。
「いらっしゃいませ」
「あ、あの・・・。まだ、いいんです、か・・・?」
「はい。お客様がお望みの限り、いつでもうちの店は開いています」
オーナーの後ろには、ソムリエが控えていて、優雅に席に案内してくれる。渡されるメニューは手書きで、いかにも一番いい食材を選んでメニューを組み立てているんだな、と思わせた。
「何かいいことがございましたか?」
ソムリエの声は、深みがあって、ふんわりと包み込まれるよう。ふわふわするのは、アンティークの椅子のクッションのせいだけではないはず。
「解ります?」
「えぇ、とてもお幸せそうですから」
すっと目の前に差し出されるワインリスト。
「乾杯されてはいかがでしょう?」
まぁ、ワイン・・・。でも、一人なのに、ボトルなんて無理だし・・・。そう思っても心配しなくても大丈夫。優しいスタッフが一緒に乾杯もしてくれるのだ。
「お料理のメニューはこちらですが、もし、お好みの料理がありましたら、何でも作らさせていただきますよ?」
質のいい赤ワインをデキャンタージュするために席を離れたソムリエに代わり、ニコニコと笑顔のオーナーがやってくる。
「好きな料理?」
「はい。一応メニューはありますけど、当レストランでは、お客様のお好きな料理をお出しさせていただいております」
勇気を持って言ってみたらどうだろう。
「さっき、赤ワインをお願いしたんですけれど・・・、何かそれに合うお料理を」
「はいっ」
オーナーは、厨房に向かって、ちりちりとクリスタルのベルを降り、オーダー!と声をあげる。
「今選んだ赤ワインに似合う料理ー!」
「ウィー、ムッシュ!」
厨房からの複数の声は、張りがあって、自信に満ちあふれていて、気持ちがいい。どんなお料理が出てくるのか、ワクワクしながら待っていると、もう一度ソムリエが現れる。
「さきほどのワインは、もう少し時間を置いた方が味が開きます。いかがでしょう、食前酒は?」
もちろん、食前酒も頼む。あなたがそんなにお酒に弱くないことは、彼も、友達も、あなた自身も知っているのだから。
典型的だけど、間違いのないキール・ロワイヤルを頼み、自分で自分に乾杯すると、前菜が運ばれてくる。シェフ自らが穏やかな微笑みとともに持ってくる前菜は、真っ白なお皿の上で、楽しそうな彩りが踊っていた。それぞれの前菜を説明してくれる言葉は、ちょっと慌てた風で、でも、可愛らしい。
一人で食べるのがもったいない。誰かとこの美味しさを分かち合いたいなぁ、って思い始めた頃、オーナーとソムリエがやってきて、そっとワインを注いでくれる。
「乾杯、させていただいていいですか?」
にこ、っと笑うオーナーや、ソムリエもグラスを持って、そっと目の高さにグラスを掲げた。マナーにはないけれど、茶目っ気たっぷりなオーナーは、かちん、とグラスをぶつけて、楽しそうに笑うだろう。
「いかがですか?」
「美味しいですぅ」
素直にそう言うと、オーナーは、ちょっと羨ましそうな顔をする。
「美味しいですかぁ・・・」
自分のお店なのに、どうしてそんなに?とちょっと慌てるあなたに、ソムリエが笑って告げる。
「すみません、オーナー、ちょっとおなかがすいてきてるんです。赤ちゃんみたいでしょう?」
「違いますよっ!」
目を見開いて、違います、違いますっ、と手を振るオーナーは、小さな、白い顔をぽっと染めて、それはとても可愛らしい。
「あ、あの、よかったら・・・」
自分のフォークを渡そうとして、あ、でも、それじゃあ失礼かな、と思い、あなたは、自然にもう一皿前菜を頼むに違いない。いやいや、そんな!と抵抗していたオーナーも、実際目の前に現れた美しい前菜には心を奪われて恥ずかしそうにあなたの向かいに座る。
頼んだワインは、今まで飲んだことのない深みをあなたに教えてくれて、ますます幸せにするだろう。そしてその幸せは、目の前で食べるオーナーの頬袋によって、さらに助長される。
「メインでございます」
ソムリエとはまた違う深みの声に、どきり、と振り向くと、すぐ側までワゴンを押したシェフが来ていた。
ワゴンの上の大皿を見て、あなたは息を飲み、オーナーは、うわ、すっげー・・・!と心からの賞賛を送る。
「仙台牛なんですけれども・・・」
大きな肉の塊はこんがりといい焼き色がついていて、そのかぐわしい香りがまとわりつく。
「こちらを」
大きなナイフで、柔かなバターを切るかのように簡単に切り分けていき、温められた皿には、その中心部分だけが置かれた。
「・・・これだけですか?木村さん」
「火は通っているけど、食感は生なんです」
とろけるような肉は、ナイフとフォークより、箸の方がふさわしい。一口大にカットされたそれを、あなたとオーナーは至福を感じながら平らげてしまう。
最後のデザートにたどり着く頃には、あなたはデザートワインを口にしているだろう。
甘い、とろける感触が喉を通りすぎていくのは、なめらかな快感だ。
パティシェは、大きな体で、とても繊細なデザート作り上げていて、その細かな細工に、少し泣きたいほどの気持ちになってしまうはず。
デザートが出てきたら、それを食べてしまったら、あなたはこの店を出なくてはいけない。

「ありがとうございました」
オーナーが、そっと差し出す勘定書きに、「ん?」一瞬あなたは首を傾げるかもしれない。でも。
「カードも使えますよ」
その言葉でもう大丈夫。
「リボにしときますね?」
ほら、何も心配ない。

ふわふわと幸せな気分のまま帰ったあなたは、そのレストランのことが忘れられず、お休みの日に、もう1度行ってみる。
しかし、そのレストランは確かにあるのに、あのオーナーはいない。あのソムリエも、あのメニューも。そして、素敵なシェフたちもいないのだ。
あの夜は夢だったのか。
とても素敵な、幸せな夢だったのか。

それが夢じゃなかったことを、カード会社だけが知っている。

あなたも行ってみたくはないですか?この「bo・ttakuriレストラン」に。

<bo・ttakuriレストラン、裏メニュー(一部)>

★木村シェフがお隣でお取り分け:時価。
☆木村シェフがお隣でお取り分け薀蓄付き:時価。
★木村シェフがお隣でお取り分け薀蓄・笑顔付き:時価。
☆レストランの裏にある帝国金融まで、桑田さんが案内してくれる:時価。
★レストランの裏にある帝国金融まで、社長が乗ってるベンツ(運転手灰原)で、一緒に連れていってもらえる(12mほど):時価。
☆ソムリエ稲垣のワインに関する薀蓄が聞ける:(聞く時間により)時価。
★慎吾シェフのおーいしー!リアクションが見られる:時価。
☆剛シェフが、不器用そうに大きな手巻き寿司を作ってくれる:時価。
★オーナーが頬袋を一杯にしている時に、その頬袋に人差し指で触れる:時価。

私はめちゃめちゃ行きたいです。この「bo・ttakuriレストラン」に!!


その57

「シークレット・・・」

「さ!あけましておめでとうございます!」
「うそぉ・・・」
そこは、ビクターの社員が、お正月はハワイだもんね。オアフじゃないのよ。あえてコナだもんね、と旅行にでかけた後のマンション。
「ちょ、どしたの、ここ・・・」
木村がおそるおそる尋ねたが、中居は鍵を振りまわしながら、我が物顔でソファの定位置に座る。
「どしたのおまえら!ほら!座って座って、始まるよ!」
「始まるって、なんだよ、中居くんっ!」
慎吾は玄関から入っていいのかどうかも判別がつかず、靴をはいたまま叫んでいた。
「いいから座れっつってんのー!!ほらー!!」
剛も、吾郎も、離れた位置から、中居の背中を見ている。何がどうしたのかまるで解っていなかった。

紅白が終わって、打ち上げやって、それぞれ家に帰り、そして目覚めた元旦の朝、リーダーに拉致されたのだ。
「お正月だぞ、お正月!おせちにお雑煮!」
「そうだけど!」
「それこそが正しい日本のお正月」
「だから!」
木村は中居の隣のソファに、膝をついた。
「これは何!?」
「SMAPも今年で結成されて13年。みんなお正月はどうしてるのかなぁ〜、と思って」
「んなもん!半分くらいはライブで一緒だったろうがー!」
「10年は、大晦日まで一緒だし」
そんな抗議は、指先までピンと伸ばされた両手で耳を塞がれ中居の元には届かない。
「さ、さ、やりましょうやりましょう」
「やりましょうって、これ番組なの?」
「あ!?番組でもなかったら俺らは集まったらいけねぇのか!あ!?いけねぇってのか!?」
「い、いや・・・そ、そんな・・・」
おどおどと剛は手を振り、仕方なくソファに近づく。

マンションはシンと静かで、SMAP以外に誰がいる様子もない。もちろんカメラが回っている様子もなく、テレビでは、爆笑ヒットパレードなんかが流れている。
「もー、いい加減に座ってー!」
仕方なく、クリスマスのように5人で座ったが、テーブルの上にも、何もない。
「・・・中居、さぁ」
「んっ?」
ウキウキした笑顔の中居は、楽しそうに木村を見る。
「・・・その、鍵、さぁ・・・」
「え?合鍵?」
「・・・勝手に、作った、ろ」

え!?

中居くん、そんなまさか!!驚愕の下3人。

「うんっ」
そして、その驚愕は、中居のあっさりとした返事で、倍化される。
「だって、ハワイ行くってゆったから、クリスマスの時に。だから、いっかなーと思って」
「いっかなーって!中居ーーっ!」
「まぁまぁ、あれ?お雑煮は?」
「お雑煮ぃ?」
「おせちまでは無理だけど、お雑煮は?」
きゅるん?と小首を傾げられ、あぁ、その細い首を、きゅっ!ってやってやったら、どんなにか気持ちいいだろうか!と思っているのに、キッチンに向ってしまう木村は、性根の底から、子分体質だった。

そんな木村の腰の軽さは、下3人の腰を重くしていて、3人は、定位置に座ったまま。
中居は、そんな3人を見ながら、ソファの下から、うりゃ!!と大きな紙を取り出した。
「じゃじゃーーん!!中居正広特製SMAPすごろくぅーー!!」
「うわぁーー!!」
中居の字で、たくさんのコマの中に、ぎっしりと文字が積め込まれている。
「しらねー!こんなのー!!」
それは、SMAPの歴史そのものとも言えた。

ぷちん。

慎吾の線が切れた。
「コマつくるコマ!中居くん、サイコロは?」
「じゃーん!」
「きゃーー!!サイコロキャラメルぅーー!」
慎吾がきゃあきゃあ喜んでいたところ、ドアが乱暴に開いた。うわ!帰ってきたんじゃあ!と吾郎、剛が、びくう!としたところ。
「どーーゆーーことよぉーーーー!!!」
「お、来た来た」
「えっ?森くんっ?」
そして、登場したのは、3段重ねのお重を持っている森だった。
「何で、脅されてるの!?俺!」
「脅してないじゃん。おせちもってこなかったら、2001年、確実に悪いことが起こるかもってゆっただけじゃん」
ケケケケ!と中居は笑い、キッチンから出てきた木村が、ほい、と小皿を森に手渡す。
「・・・木村くん・・・」
「あけおめ」
「あ、あけおめ・・・」
その大きな瞳の中に、森は確かに見た。
諦めの、静かな色を。
「木村ぁー!お雑煮ぃー!早くぅー!」
「早くったって・・・。えーとえーと」
勝手に冷蔵庫をあけ、食糧庫をあけ、当面の準備をする。
「おとそとー、つまみとー」
「つまみあるある!森のおせちがあるから、お雑煮ぃー!」
「あのなぁー!ここは俺んちじゃねんだからよぉー!」

ん?

中居は木村を見上げる。
「木村んちだったら、すぐにでもお雑煮できるってこと?」
「・・・え?いや、餅は、あるけど・・・」
「よぉーーしっ!」
すっくとソファの上に立ちあがった中居は声を張り上げた。
「てっっしゅーーーーーー!!!」
「え?」
「て、撤収・・・?」
自分たちもコマ作ろうーとか、森くんのおせちおいしそー、とかゆっていたメンバーたちが硬直する。
「木村んちにいく!」
「俺んちかーーー???」
すでに、ダシを取っていた木村も硬直する。
「だって、餅あんだろ?いこいこ。そっちでやろうぜ。後、SMAPカルタもあるし」
「SMAPカルタ!」
「いや、ちょっとまって、ちょっとまって?」
メンバーたちは、カルタが見たい!とかなり楽しい気持ちになってきていた。この段階で、地に足がついているのは木村だけだ。
「何?なんで俺んちなの?」
「餅があるから」
「餅、あるけど。でも、普通の、切り餅だよ?鏡餅とかじゃなくて!」
「鏡餅あっても、雑煮にはいれねぇべ」
「すごろく持ったよー」
「おせちも持ったー」
いかん。
と木村は思った。
もう、完全に自分のうちに行くつもりになっている。別になんの問題もないが、このテンションの上がりっぷりからいくと、ボニータが当分怯えて部屋から出てこれないくらいさわぐつもりだ。
酒はあっただろうか。6人くらい寝られる部屋だが、冬場は布団が足りない・・・。

「ぐずぐずしてんなよー。先行くぞー!」
「先いってどーすんだよ。はっっ!」

木村は、中居の指先に揺れるものを見て、目を丸くし、顔の色を失った。
「・・・これ、なーんだ」
「・・・ま、まさか・・・・・・・・・・・」
「ふふふ・・・」
「俺のうちの、鍵・・・!」
ケケケケケーー!!と南の島の鳥のような、はたまた夕闇に紛れて鳴く、この世のものではない生き物のような笑い声をあげ、木村以外のメンバーをしたがえ、中居はさっさと部屋を出ていった。

2001年1月1日。
木村拓哉宅で、SMAPのまさしくシークレット新年会が(強制的に)行われた。
最初はお客さん!と喜んだボニータが、いやー!うるちゃーい!お酒くちゃーい!と玄関に逃げ出したほどの騒ぎを、先頭にたって煽っていたのが、木村拓哉だったことは言うまでもない。
SMAPカルタ、SMAPすごろく、SMAP福笑いの商品化がまたれる。


その58

「世にも奇妙な」

相楽洋二はため息をついた。前髪をふんわりと下ろしている額には、一生消えないといわれている刻印がある。ぱっと見には解らないけれど、そこには『永久女』と刻まれていた。
大人免許は見事取得した彼だったが、男免許がどうしても取れなかったのだ。
だからといって、永久子供に比べれば生活に支障はないのだが、やっと入った会社での出世はおそらく望めない(女性重役の数はまだまだ少ないのだ)。
こうなったら。
なんでか知らないけど、海外で働きたがる女性たちのように、俺も永久女として渡米すべきだろう!

と、渡米した先で出会ったのが、日本からの留学生、湯ノ本ナオキだった。

洋二のバイト先にやってきたのがナオキで、なんでそんな仕事をしているのかと無邪気に尋ねてきたのだ。
「なんでって・・・、人の仕事に文句つけんなよ」
「文句じゃないよ。興味でしょ?」
何の勉強してるんだか知らないが、ちゃらけたルックスの割に、大学近くのこの店に毎日やってくるということは、マジメに通っているんだろう。
「興味って・・・」
「興味もつじゃん!なんで、日本からわざわざきて、ダイナーのウェイトレスよ!」
「似合わない!?」
昔の森高千里のようなミニスカートに、足元ローラースケートで、頭は可愛いキャップの洋二は、トレイを高く差し上げながらポーズを取る。
「いや、似合うとか似合わないじゃなくて、なんで!?って!」
「だって、女になったんだよ!?俺は永久女だから、女としての栄達を願ってんじゃん!この店から、プレイメイトになって、将来は自家用ジェットだよ!!」

「・・・コ、コヨーテ・アグリー・・・!」

いつから女の栄達がそういうものになったのか解らなかったけれど、こないだ女になったばかりではまだ解らないのだろうとナオキは思った。
そしてナオキは、洋二の女としての栄達を見守るべく、ダイナーにますます通うようになったのだった。

そのナオキが春休みだから、実家に帰っているため、洋二はヒマだった。
女の栄達というのは、そういうものではなく、とうるさく言うナオキだったが、日本語まるだして会話ができる存在は貴重だった。
見守っているつもりのナオキと、口うるさいと思っている洋二の間には、深くて暗い溝がある。
実家か・・・。
家族はどうしているのかと、洋二はまたため息をつく。
そういえば、母は、男の子が二人つづいた後、女の子が欲しかったと3人目の子供である洋二にいったものだ。
あの時の呪いか・・・。
「ハァーイ!ヨウジィー!」
「ハァーイ!」
ペチコーーン!
可愛いおヒップに触ろうとする客を、笑顔のままトレイでぶったたく技にもなれた。
ふ。まぁ、待ってろよ、かあちゃん。そのうち、この俺が、プレイボーイの表紙を飾るからよぉ!!

元気出さなきゃ!と顔を上げたところで、店に入ってこようとするナオキと目があった。
「あ、お帰りぃ」
呼びかけられ、顔を上げたナオキは。
「・・・どしたの。その顔」
なんとも奇妙な顔をしていた。
昔の少年アニメの主人公のような、キラキラとした目をしている。頬はバラ色といってもいい。
「時差ぼけ?」
「洋二」
窓際の席に座ったナオキは、夢見るような瞳で、つぶやいた。
「プレイメイトもいいけど、やっぱり世界平和だよな?」
「・・・あ?」
『あ』に濁点をつけたような口調だったが、ナオキは気にしない。
「俺も闘える・・・!時期が来たら・・・」
「時期ってなによ。それより、家族、元気だった?」

「・・・・・・俺、妹がいたんだ」
しかし、そのことを口にした時は、苦しい表情になった。
「妹がいた、ってどーゆー意味だよ。あ!オヤジの隠し子!?」
「・・・隠し子ってゆーか・・・」
「何歳くらいの?二十歳とか?美人?美人だよなぁ、ナオキの妹だったらなぁ〜」
永久女はそんなことを気にしてはいけないのだが、洋二は気にする。
「な?美人だろ??」

のぞきこんだナオキの表情は、放心、だった。
魂を手放し、ふわふわと宙に浮かべたまま、何かを忘れようとしている。
「・・・い、妹、美人、じゃなかったんだ・・・」
「美人じゃないってゆーか・・・。10歳、なんだけど・・・」
「10歳じゃあ、範囲外だなぁ」
「・・・どう見ても、男ってゆーか・・・、オヤジより、年上ってゆーか・・・」

え。
洋二はドキっとした。

「それってまさか・・・!」
「そう!俺もそう思ったんだよ!」

「「永久女!!」」

ナオキの妹、湯ノ本マサコは、おそらく永久女だ。10年前、永久女になり、だから、心は10歳の乙女!間違いない!!

「だから、洋二も一緒に闘おう」
「は?闘うって。何?え?」
「国際特務機関湯ノ本の一員として、一緒に闘ってくれ」
「え。いや、だから。俺は、プレイメイトとして、自家用ジェットを」
「自家用どころか」
ダイナーから、洋二はずるずると引きずり出される。
「自力で飛べるぜ。多分、宇宙も」

宇宙!?
宇宙ってなに!?
自家用シャトル!?どゆこと!?何が!?

こうして、相楽洋二は、国際特務機関湯ノ本の一員として闘うことになった。しかし、一番可愛いのはこのあたし!!と騒ぐマサコとの折り合いは異常に悪い。


その59

「アロエリーナ」

あれ。
香取慎吾は、スマスマの楽屋に戻ってきた時、自分のバッグがないのに気がついた。
テーブルの上に放り出していたはずのバックは、どこ、バックはどこ・・・と探しまわると、
「なんで?」
床の上に置いてある。落ちたのではない。ただ、置いてあった。
何もないスペースに、ちょこんと置かれている自分のバック。テーブルの上には余裕があり、邪魔になったからどかされた、という感じでもないし、しかも、なんで床の上よ、もぉー。
としゃがんだところ。

「ちゃんちゃんちゃん!きぃーてアロエリーナー!」
「しまったぁぁーーーー!!!後ろを取られたぁーーー!!」
「ちょっと言ぃーにくいんだぁ〜けどっ!聞ぃてアロエリーナぁ〜、慎吾が食ってばっかっでふっとるのぉ〜!聞ぃてくれて、あぁーーりがっと、アロエリィーーナ!」

「あ、今日、慎吾がアロエリーナなんだ」
吾郎がその横を、すーっと移動していく。中居は、ふん!と鼻息も荒く、しかし満足そうに撮影の続きに出ていった。
そして慎吾は、『今日のアロエリーナ』としてしゃがみこんでいた。低い姿勢になっている時、背後から中居からこの歌を歌われると、なぜかしばらく動けなくなってしまう。これぞ、アロエリーナの呪い。自分のバックが妙なところに置かれている時は気をつけろ!が、SMAP下っ端メンバー4人の合言葉となったのは言うまでもない。


その60

「タケウチさんは悪くない」

「もう2度とここへは来るな。解ったな」
「はいカットぉ」
白い影、第5話の撮影中。カットをかけた監督は、心の底から、困ったなぁ、という顔をして、中居に言った。
「す、すみません。もうちょっと、あのー、そっけなく」
「あ、はーい」
ニコと微笑んだ中居は、直江の表情を作り、看護婦役のタケウチユーコと向かい合い。
「もう2度とここへは来るな。解ったな」
「かっとぅ!いや!だから!あの、何もそこまで憎々しくしなくても!」

「ごめんねー、タケウチさん」
そのシーンの撮影が終わった後、中居はタケウチユーコに謝った。
「何度もNGだして」
「ううん、そんな、そんな」
「だって、俺もぉ〜、ほんっとに!腹立つんだよ、あの志村ぁーー!!ううん、違うの、タケウチさんは、いいんだよ。タケウチさんは、悪くないんだけど、あの志村には腹が立って・・・」
確かに、タケウチユーコとしても、この子はどしちゃったのかなぁ、と思うことがないではない女、志村。
「また、あれが腹立つんだよね、あれ、あれ。あの、ふくれっつら!」

フクレッツラ?

「メンバーとかも見てて、言うんだよ、あのふくれっつらがやだって。あ、みんな、タケウチさんは好きなんだよ?タケウチさんはいいんだけど、志村のふくれっつらがやだってさぁ〜!」

ふくれっつらって、それって、それって。
それって、『私』、のことじゃあ、ないの?

「でも、気にしないでね、タケウチさんが悪いんじゃないから。うん、タケウチさんはいいんだよ。タケウチさんは好き。ただ志村のふくれっつらが気に食わないだけで!」
ほんと!気にしないで!
にっこり笑顔で肩を叩かれたタケウチユーコは、笑っていいとも増刊号で、九州出身の女性デュオ0930が、中居に向かって、「そんなにぱっちり二重の人には(自分たちの気持ちは)解りませんよ!」とゆった気持ちが痛いほどよく解った。
中居正広、確信的に失礼な男だった。


その61

「小さいから可愛いとは限らない」

身長150cm以下の女の子4人で結成されたグループがあるという。
小さくて可愛いね、なんて言われているんだろうと思ったら、その男は、むしょうに腹が立った。
「小さいから可愛いなんて誰が決めたよ!誰が!大きくったって可愛いもんはあるんじゃねぇか!?そうだろ!?大きくて可愛いもんだって!大きくて、つぶらな瞳の犬は可愛くねぇのか!?身長2mでもピカチュウは可愛いだろ!?」
「慎吾ママも大きいけど可愛いよね!」

シーン

「なんでよー!可愛いじゃん、慎吾ママー!誰か返事くらいしてよー」
「はいはい。慎吾ママは可愛い、可愛い」
「なんでよー!なんで吾郎ちゃん、投げやりよー!!慎吾ママは吾郎ちゃんのファンなのにー!ファンの心を裏切ったぁー!」
「とにかく!」
ばぁん!と机が叩かれる。
「『小さい』=『可愛い』を俺は認めない!大体、可愛いってのは独立して使われるべきなんだ。小さいから可愛いじゃなくて、可愛い上に小さい!これが本当なんだ!」
すっく!と立ちあがった中居正広は、どーしちゃったのこの人、という顔をしているメンバーを見下ろし、言い切った。
「可愛い上小さいのは俺!俺なんか、ミニモニ5組分は軽く可愛い!!!誰かなんか言えぇーーー!!」

「えーっと、あれ?次どれ着るんだっけ、木村くん」
「ちげーよ、それ、順番変わったし」
「聞けぇーーー!!」
「あれー、慎吾そのブーツって前から持ってた」
「あ。これ、昨日買ったんだけど、ちょっとキツくってさぁ」
「だから聞けぇーーー!!ミニモニ8組分以上可愛い小さい俺の話を聞けぇーーー!!」

そんなそもそ大して可愛くないものを8倍されたって、そんなに可愛くはないってことに気づかない中居だった(笑)


その62

「くりゅたん刑事(デカ)とひろちゃん刑事(デカ)」

くりゅたん刑事はかっちょいい刑事だ。
人質をとって立てこもっている犯人に向かって丸腰で向かっていくなんて日常ちゃめしだ。
広い道路で、いきなりドリフトターンもするし、ハーレーを走らせながら、両手離しでマグナムだってぶっぱなす。
ヘリコプターに乗って200m先からの狙撃だってお手のものだ。お茶の子さいさいだ。
今日も今日とてくりゅたん刑事は、凶悪な犯罪に立ち向かっている。

それは、くりゅたん刑事がフェラーリテスタロッサ仕様の覆面パトに乗っていた時のこと。
無線で連絡が入った。
「なんですって!?爆弾が!?」
きゅきゅきゅきゅぅーーーー!!タイヤに悲鳴を上げさせながら、いきなり車を反転させ、本部に戻るくりゅたん刑事!急げ!くりゅたん刑事!

「課長!」
「おぅ、くりゅたん!」
課長は強面だが、部下をニックネームで呼ぶフレンドリーなお人柄だ。
「爆破予告って・・・!」
慌てて、みんなが集まっているところにいったくりゅたんに、
「お疲れ様です」
とお茶が渡される。
「ひろちゃん・・・」
にこ、っと笑っている、彼がくりゅたん刑事の同期、ひろちゃん刑事だ。
ひろちゃん刑事は現場には行かない。ひろちゃん刑事の仕事はもっぱらこれだ。
「予告電話がかかってきたんだ。要求についてはまた電話をかけると・・・!」
課長が怒り狂っていると、課内の電話が鳴った。
「はい!捜査一課!」
怒りのままに電話をとった課長が、はっ、と顔色をかえ、ひろちゃん刑事に目で合図する。こくっ!とうなずいたひろちゃん刑事はすばやく席についた。
「何?10億だと!?ふざけるな!」
課長がいかつい顔を赤鬼のようにしながら、怒鳴っている。他のメンバーも、スピーカーから音を聞いていた。
「待て!爆弾はどこに・・・っ!ちっ!」
がしゃん!と乱暴に受話器を叩きつけた課長以下、全員の目線がひろちゃん刑事に集中する。

「逆探、失敗しました!」

「そうか・・・!」
「課長!」
他の刑事が走りこんでくる。
「犯人のものと思われる車のナンバーが解りました!」
「何!」
その刑事はひろちゃん刑事の元に行き、ひろちゃん刑事は、こくっ、とうなずいて、真剣な表情で端末を叩く。全員が見守る中、はっ!とひろちゃん刑事は顔を上げた。

「盗難車です!」

「盗難車かぁー・・・!」
「課長っ!」
続いて別の刑事が飛び込んできた。
「その盗難車が見つかりました!中に犯人のものと思われる指紋が!」
その刑事はひろちゃん刑事の元に行き、ひろちゃん刑事は、こくっ、とうなずいて、真剣な表情で端末を叩く。全員が見守る中、はっ!とひろちゃん刑事は顔を上げた。

「前科(まえ)はありません!」

「おまえはなんの仕事してんだよー!」
「なんだよー!盗難車なのも、前科がないのも、俺のせいかよぉー!!」
しかし、逆探の時には、頼まれるたびに、あれ、どうやってやるんだっけ、と思い出しながらやってることは、くりゅたん刑事にも秘密、と思っているひろちゃん刑事だった。

<つづく>


その63

「くりゅたん刑事(デカ)とひろちゃん刑事(デカ)2」

くりゅたん刑事は、真摯な刑事だ。
彼は地道な捜査も大事にする。張り込みだって、とても大切な仕事なのだ。
目立たない車に乗り、古びたアパートの一室を、くりゅたんは、じっと見つめる。必ず犯人(ホシ)はここに戻ってくる・・・!
くりゅたんはそう確信していた。
しかしその張り込みも、交代しながらすでに五日目。くりゅたんの横顔には、うっすら披露の色があった。
そこに。
コンコン、とウィンドウをノックする音。
「さし入れです」
ひろちゃん刑事が、コンビニ袋を掲げていた。
「あ、悪いな」
「どう?」
もちろん、中身はアンパンと牛乳だ。牛乳は三角テトラ。
「そうだなぁ・・・」
窓から袋だけを入れ、ひろちゃん刑事は、外に立っていた。これを渡したらすぐに帰るつもりだったのだ。
そこに。

「あっ!」
ひろちゃん刑事が、ぽかんと口を開け、何かを指差した。
指差されたのは、車の1m前まで近づいてきていた、犯人。
「あ」
指差された犯人も、一瞬ぽかんとしたが、すぐさまターン!すぐさまダッシュ!!
「なんで指差すよーー!!」
「だってびっくりしたんだもんよぉーー!!」
狭い路地に入られて、走って追いかけるしかないくりゅたん刑事だった。

翌日。
でもまぁ、捕まってよかったや、とひろちゃん刑事は銀行に向かっていた。
くりゅたん刑事は、ちょっとへとへとで、呼吸困難に陥っていたけど、若いし、大丈夫だろうと思う。
そしてひろちゃん刑事はお使い中だ。
課長のキャッシュカードを渡されて引き落としを頼まれるくらい、ひろちゃん刑事は信用されている。
「課長の暗証番号は〜、奥さんの誕生日ぃ〜。2番目のぉ〜。部長の暗証番号はぁ〜、竹下景子の誕生日ぃ〜。びみょぉ〜♪」
暗証番号の歌を歌いながら、ご機嫌にお金を引き出していたひろちゃん刑事だったが。
その時。
「動くなぁ!!」
銀行強盗がやってきて、ひろちゃん刑事はまんまと人質に取られた。
「あ、あり・・・?」
ただちに緊急通報があり、駆けつけてきたのは、もちろんくりゅたん刑事たち。
課長は、あの銀行の中にひろちゃん刑事がいるのでは!と気が気でなかったが。
「あっ!」
視力5.0という噂のくりゅたん刑事が、ガラス窓の側に集められている人質たちの中から、ひろちゃん刑事を見つけた。
「てめぇーーーっ!!」
メガホンを引っつかみ、銀行に向かって怒鳴りつける。
「何捕まってんだぁーーーっ!!」

ガラスを振動させるほどの大音量に、銀行強盗たちも驚いた。
そして、大事そうに課長のキャッシュカードを胸元で抱えているひろちゃん刑事を見る。
「なんだ!おまえ警察か!?」
銀行強盗たちは殺気だっていた。
人質たちは、え、この人、警察・・・!?と苦しい中から、一縷の望みをかけたくてひろちゃん刑事を見上げる。
銀行中の注目を集めたひろちゃん刑事は、きゅっ、と唇を噛み締め、きっ!と銀行強盗を睨みつけた。
人質たちは、あぁ・・・!と心の中で手を握り合わせ、銀行強盗たちは、なんだこの迫力は・・・!とたじろぐ。
そしてひろちゃん刑事は言った。

「ただのフリーターです!」

ひろちゃん刑事。自己保身の怪物であった。
「じゃ、じゃああのわめいてるのなんだよ!」
「え?あれは、人質になんかなりやがって、お上の手を煩わせるんじゃねぇよ、愚民どもが、って思ってる国家権力の犬が遠吠えしてるんじゃないんですか?」
「愚民だとぅーーー!!!」
銀行強盗は単純だったため、別に自分が言われた訳でもなかったのに、怒りに任せて外に飛び出していきあっさり捕まった。
「俺の力だ」
とひろちゃん刑事は自慢しているが。
本当に、そうかな?

<つづく>


その64

「どの色にする?」

「12色あるんだって」
中居が言った時、メンバーは、何が?と思った。
「ジューニショクって、何が?」
率直に聞いたのは慎吾だ。
「ジャケット」
「衣装の?」
木村の言葉に、中居は、やれやれと首を振る。
「なんで衣装が12色も必要なんだよ」
「じゃ、何が12色?」
「12色丼」
「ジャケットってゆってんだろうがよ!大体、何が入ったら12色になるんだ!」
「そぼろ、桜でんぶ、ほうれん草、入り卵、さやいんげん、スイートコーン、いくら、キャビア、鶏の照り焼き・・・」
「もういい!吾郎の寝言は聞きたくない!」
ジャケットだ!ジャケット!!中居は、うきー!と地団太を踏んだ。
「ジャケットが12色って、だから何だよ、中居くん」
それ、と、中居は剛を指差す。
「ジャケットが12色あんだよ!何色にする!?」
何が・・・。
4人は、何のことやらさっぱり解らないという顔をするばかりだが、何色!と指を突きつけられ、木村は、あ、赤・・・?と答えてみた。
「ん。木村は赤な。・・・赤松だから?おいおい〜、今回は赤・青・黄色・緑・桃・白ってあるわけじゃねんだよぉ〜?12色もあんだから」
「だから、何の話だって聞いてんだろーがよ!」
「ベストのジャケットだって!」

ベストの、ジャケット・・・・・・・・。

4人は思考停止した。

「つよぽん。袖のないジャケットってあんの?」
「ベストの意味って、なんだっけ」
「バカ、中居が言うことだぞ。なんか勘違いしてんだよ」
「こらまてぇぇ!!」
中居の両手が、後ろから確実に木村の首を締める。
「オレだって、ジャケットとベストが違うことぐらい解ってるっつーの!そうじゃなくて、ベストのジャケットだっつってんだよ!!」
「死ぬ!木村君が死んじゃう!」
「やめてーーー!!木村くんいなかったら、SMAPもうアルバムなんてだせなーーい!」
「それだ!」
剛と慎吾の叫びに、中居はようやく木村の首から手を離す。
「ベストアルバムのジャケットが12色あんだよ」
「・・・ベストアルバム・・・?」
「去年出るらしいという都市伝説があった?」
「ぐるじい・・・」
的確に急所を押さえられて、意識失う3秒前だった木村以外は、ベストアルバムが出るのか?とキョトン、としてしまう。
「中居くん、そんな話、俺は聞いてないんだけど・・・・・・・、ってそれは、俺だから?」
「そうそう。吾郎ちゃんだから。・・・じゃないよ!だって俺だって知らないのに!こらーー!ビクター!!!」
「俺も知らなかったぁ。また、中居くんと、木村くんだけ知ってるような話?」
「またってなんだよ、俺も初耳だっての!」
「ハハハハハ!!」
中居は高らかに笑う。
「安心しろ!俺も今聞いた!!」

「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」(それってどうなのかなぁ、と、ちょっぴりブルーになった5人)

「・・・で、そのジャケットが12色あんだって。何色がいい?」
「何色があんだよ、12色って・・・」
「ピンク、バイオレット、イエロー、シアン、コバルトブルー、オレンジ、レッド、グレー、ホワイト、グリーン、ライム、ライトブルー」
ポケットからチラシを出して読み上げる中居の顔を、いやそーーーに木村、剛、慎吾は見る。吾郎は平気な顔。
「それがやだもん、俺」
けっ、と木村はそっぽを向く。
「日本語でいいじゃん!青色、赤色、桃色で!何。シアンって。シアンって何色だよ」
「青色だよ、ほら」
中居がチラシを指差していい、それをじっと見た慎吾がおかしいじゃないか!と文句を言う。
「コバルトブルーとライトブルーがあるのに、シアンも青!?なんで、中居くんばっか!」
「あ、いいや、俺。だって、イエローとライムは、まぁ、黄色系でしょ」
「そーゆー問題なの?」
桃色系には、バイオレットも入るよね、とひっそり思いながら、吾郎は尋ねる。もちろん吾郎には、シアンが何色かなんてことは解っている。解らない人がいるということに驚いたくらいだ。
「いいからおまえら、色選べって」
中居はいい加減疲れてきている。
「なんで色選ばなきゃいけないんだよ」
根本的なことを木村が尋ねて、あれ、なんだっけ、と考えるほど疲れている。
「だってさ、レコード会社が、見本版として、12色分全部あげましょうとかってメーワクなこと言うからさ」

「赤!俺赤!」
「えーとね、じゃあ、うーん、グリーンだとまんまだから、うーん。そうだなー、うーん」
「俺、バイオレットね。うん、なんとなく・・・」
「んーと。ライム!・・・あ、でも、うーん、グレーとかも渋いかな、暗いかな・・・」
12枚も押しつけられてたまるか!と一生懸命色を選ぶ4人だった。

で。
「ん?中居は?何色にしたの?」
木村の質問に、中居はあっさり答えた。
「限定150万枚出荷した後の、普通版」

その深いSMAPへの思いに感じ入り、静かに拍手を送る4人であった。


その65

「石垣島」

そんな訳で、雨宮はバカンスを石垣島で過ごすべくやってきた。紫外線カット100%といううたい文句の日焼け止めは、やっぱり単なるうたい文句で、ノースリーブの肩がすでに赤い。
しかし、この人に比べればマシだろう!というほど、久利生公平の顔は黒かった。
「何やってるんですか?」
麦藁帽子を被らされ、波打ち際を久利生について歩けば、そこにあるのはイカの干物。
「んー、これがさぁ、こないだから、やたらと盗まれるんだよねぇ」
「はぁ」
雨宮は少々引きつった笑顔で答える。
馴れたつもりだったけれど、この人は本当にどこまでやるつもりなのか・・・。
「出来の悪いヤツだけ置いていくんだよなぁ〜・・・」
もう一度イカに顔を近づけて、くせっ、と鼻にシワを寄せる久利生。
「でも、あれですね」
焚き火の後を見て、雨宮が言う。
「とって、すぐ食べるって、合理的ですよね」
「合理的かな」
振り向いた久利生は首を傾げる。
お、出ましたね、久利生さんの小首傾げ攻撃。久しぶりだから、ちょっとドキドキな雨宮。
「これって合理的?」
その上、焚き火の前にしゃがんで上目遣いされた日にゃあ!
美鈴さーーん!美鈴さぁーーん!!私、女として負けてますぅぅぅーーー!!
「え、だって・・・。すぐ食べれて・・・」
しかし、あくまでも冷静を装う雨宮だ。
「でも、夜中だよ?こんなとこ、電灯なんてないんだから夜なんか、真っ暗だよ。月でも出てりゃいいけど、昨日は、曇ってた」
「どういうことですか?」
「・・・別にここじゃなくったって、食べる場所はいくらでもある」
「・・・そう、ですよねぇ」
今は、真昼間で、天気も非常によく、綺麗な海を眺めながら、ここでできたばかりのイカの干物を焼いて食べるのは、いかにも幸せな光景だろうが、それが真夜中だと思うとどうもピンとこない。
「と、言うことは?」
「と、言うことは」
砂を払いながら立ちあがった久利生は言った。
「イカを食べられる個人的なスペースがない、ってこと」
一人暮しなら盗んだものだろうがなんだろうが、家で食べればいい。家族と一緒でも、まさか盗んだイカだとは思われない。
「・・・旅行者、だろうな。それも、普通に宿には泊まってない。後」
「後?」
「・・・北海道出身じゃないかと思う」
「何で!?」
「いや、イカのどれがいいかって、俺にはよく解らないけど、それをばっちり見切ってるからな。北海道の人間が怪しいかなと」
北海道といえばイカ、と、根拠のないことを久利生は言ったが、哀しいかな。雨宮はそれに馴れてしまっていて、こくり、と頷き、言った。

「じゃあ、やっぱり」
「うん、あれだろう」

二人で話している間にも、ちらちらと気になった物体があった。
海からは少し離れて、ぽつんと立っている木のそばにある黒い物体。
それは、二時間前には、日陰になっていただろう場所だ。太陽の動きとともに、ものすごい日差しを受けているだろうに、微動だにしない黒い物体。
「あれ、黒のロングコートですね」
「8月の石垣島に、あれだけ不自然なもん、ないよな」
しかし北海道はまだ寒いのかもしれない。
「死んでんじゃないですか?」
さらさらとした砂浜を歩き、黒いコートの側まで行き、ちょっと突ついてみる。
「あっ!動いたっ!」
「きゃっ!」
「い、生きてんじゃんっっ!?」
「いやですよぉ!死んでたらぁ!」
きゃーーきゃーーきゃーー!!と二人が騒いでいると、黒いロングコートがもぞもぞと動き、ぱたん、と仰向けになる。
「あ。直江先生だ」
「え、知ってるんですか?干物泥棒」

実は知っていた。

キャスター襲撃事件で、被疑者のアリバイを確かめるため小樽に向かった時に会っている。
小樽についたらすぐ様、お墓も、証人も見つかってしまったため、えー、じゃあ、観光でもしようかなーと思って向かった支笏湖に直江はいた。じっと湖を見つめている。
「なんかさぁ、背中に貼ってあんだよ」
「なんてですか?」
「え?今から入水自殺しますってさ」
「・・・えぇ?」
「俺さ、時々そーゆーの解んだよ。あ、やべーなーと思ってみてたら、なんか持ってる訳」
「遺書」
「いやいや。それは、足元に置くだろ。そじゃなくって、なんかね。手の中に握り込んでて、それが悪そうだったんだよ」
「悪いって?」
「いや、なんか、感じ悪いってゆーか。モノにも、念とかこもるって言うじゃん」
「言いますかぁ?」
「言うんだよ!で!だから!『それ、捨てた方がいっすよ』っつったの」

後ろから呼びかけられる選手権日本代表、世界選手権でも優勝候補の直江は、またかと振り向いた。
「それ」
左手を指差され、直江は首を傾げる。知らない男だった。モノトーンの自分とは違う、やけに鮮やかなオレンジのダウンを着ていた。
「これ・・・?」
「そう。なにか、体に悪そうだから。捨てちゃった方がいっすよ」
直江の手の中にあったのは、ガラスのかけら。キラキラと光り、とても綺麗だと思う。これを捨てるなんて、できないと思った。
「ね、それ、ほんと。離した方がいいですって」
雪の中だというのに大またで近づいてきた男が、そのガラスを取って、有無を言わさず湖に投げた。

途端に、目の前の世界が変わって見えた。

「・・・あれ?」
「ね?あれ、いらないっしょ?」
「うん。あれ?ん?なんで?」
「あ、もう大丈夫かな」
ぽんぽんと背中を叩かれる。
「もう死ぬ気、ないでしょ?」
「死ぬ気?うん。ない、けど・・・、あれ!?」
でも、さっきまでは死ぬ気まんまんだった。家には、ビデオレターまで置いてきた。あの看護婦のことだ、勝手に部屋に入っていないとも限らない。あのビデオを見られていたら、このままじゃあ帰れない!
「よく、犯人は北に逃げるって言うけど、なんか、元気出したくなったら、南に来てみたらどうですか?俺も、多分、・・・石垣くらいに行かされるし」
自分の過去が明らかになった時点で、久利生には想像はついていた。面倒を嫌う検察庁が、久利生をそのままにしておくはずがないと。そして、全国の検察の今の状況などをチェックして、おそらくは石垣!と目星もつけていた。
海好きなので、望むところよ!とも思っていた。

「だからって、干物泥棒しなくても」
仰向けに倒れ、片手を軽く胸のうえに重ねている直江を見下ろしながら、久利生は言った。
「俺を尋ねてくればいいじゃんねぇ」
「・・・久利生さん、名乗ったんですか?」
「・・・あ、名前は」
「・・・いつものカッコだったんでしょ。誰が検事だって思います?」
「あ」
「あ、じゃないでしょー!」

いいから助けてくれ・・・!
何かから逃れるようにやってきた挙句、食べるものといえば、好物のイカの干物のみ。あげくいつまでも黒いコートで、今や完璧脱水症状の干物泥棒直江庸介は、支笏湖で助けられた命が、いまゆっくりと消えていこうとするのを感じていた。

大変くりゅたん!直江先生を助けて!

<つづきません>

いえね、ユエ様が、干物泥棒は直江先生じゃ!?ってゆったのが、めちゃ面白かったんで・・・(笑)


その66

「石垣島再び」

照りつける太陽の下、水槽から飛び出した夜店の金魚のように、ただ来るべき死を迎え入れるしかないのか。
直江庸介は、静かに自分の運命を受け入れようとしていた。しかしその時。

「怪我人が!!」
「きゃーーー!!」
「お医者さんは!お医者さんはいませんか!!」

医者・・・。

「いたいよぉー、いたいよぉー!」
「僕!しっかりして!しっかりしてちょおだい!すぐにお医者が来ますからね!」
「ママぁ〜、いたいよぉー、いたいよぉー」

俺は、人である前に、医者・・・、だ・・・!
今にも開きそうになっていた瞳孔に、いきなり光が走り、
「うわっ!」
「きゃっ!」
直江はいきなり上半身を起こした!
「あああ!」
「無理ですって!」
しかしそのままへなへなと崩れ落ちた。両側から、久利生と雨宮が体を支える。
「俺は・・・、医者、だ・・・」
「医者って・・・」
なおも立ちあがろうとする直江。久利生は、雨宮の頭にあった麦藁帽子を直江の頭にかぶせる。
「雨宮、そっち持て」
「え、こっちですか?」
「運ぶぞ」
「え!運ぶって久利生さん、これは!」
久利生が直江の肩を、雨宮が足を持っての運搬。
「それは違うでしょう!!」
「余計苦しいか」
「苦しいでしょお!おんぶでしょお!おんぶ!」
「お姫様ダッコじゃなくて?」
「いや、久利生さんが、このくそ暑い中、黒のロングコート着て死にかけてる麦藁帽子を被った男を、男らしくお姫様だっこしたいって言うんなら止めませんけど」

「あ」
「なんですか?」
「これ、脱がせばいいんじゃねぇの?」
そんなことに今更気づいた二人が、足元に直江を置いたままうだうだ喋っている間に、その直江の体はずるずると動き出していた。
「俺・・・は、い、しゃ・・・」
「あああ、ちょっと雨宮、背中に!」
「はいっ!いきますよぅーー!」
少林寺拳法の使い手雨宮にとって、かるーい直江の体など持ち上げるくらい簡単だ。
よいせ!と持ち上げて、うりゃ!と久利生の背中に持たせかけると、その直江をかついだ久利生が、声の方にダッシュ!
あぁ、砂浜を走る彼を止められるものは何もない。
うっとり、となった雨宮は、いけない!だから、黒のコートがあるからいつまでも暑いいんだってば!を伝えるべく、後を追った。

泣いていたのは、貝殻で足の裏を切ったという子供。
ふらふらと久利生の背中から降りた、というか、落ちた直江は、よろよろしながら、海水浴客が持っていたミネラルウォーターのペットボトルをつかみ、子供の足をひっつかんで、水をかけていく。
「いたいよぉーいたいよぉー」
久利生の目には、その水だけで血は洗い流されてしまい、どこに傷が?と解らなくなるほどだったのだが、直江の目は真剣だった。
額に汗を滲ませながら、つかんだ足首を離さない。
「×●◎を」
「へっ?」
直江の言葉が聞き取れなくて久利生が聞き返すと、直江は首を振っていた。首を振って、ぐらっとなる体を、気力で支えた。
「こんなところにある訳がない」
それは、病院においてはポピュラーな消毒液の名前だった。傷口は確かに小さい。しかし、場所ば場所だけに消毒は大切だ。海で怪我した挙句、傷口に小さなフジツボが入っていて、膝の皿の内側がフジツボで一杯、とかいう、あまりに気持ち悪い話を聞いたこともある。
嘘かホントか知らないが。
しかし消毒薬がないなら仕方がない。
ここは、この子供を、さっきから側にいるワンピースの女性におんぶしてもらい、自分も歩けそうもないので、支笏湖で会った男におんぶしてもらい、ちゃんとした病院にいくしか・・・!しかし。

「あるよ」

目の前に差し出されたそれは、確かに消毒液!
「これだ!」
直江はその消毒液をひっくり返し、ダバダバと子供の足の裏にかける。
「いたいよぅ〜〜」
「我慢しろ!」
自分の大声に、自分でくらくらしながら、直江は1本丸まる消毒液をかけきった。後は、清潔なガーゼと、包帯。

「あるよ」

あるんだ!!
最近のビーチはそんなものまで!?

「なんで?」
「嘘でしょぉ・・・」
夏のビーチがある意味異常に似合う男、センタバのマスターの姿を石垣のビーチに発見し、呆然とする久利生と雨宮であった。

しかし、直江先生は気力で持ってるだけで、すでに体の中の血液はドロドロだぞ!どうするくりゅたん!!

<もう続かないよ、きっと(笑)>


その67

「三度石垣島」

からり。ぱたん。からり。ぱたん。
直江の耳に、その音はリズミカルに届いていた。
うっすらを戻ってくる意識。ぼんやりと目をあけると、そこは涼しく薄暗い部屋。からり。ぱたん。という音は、隣の部屋からしている。
布団に黒のコートのまま寝かされていた直江は、ゆっくり音のする方を向いて、ひっ!と息を呑む。
障子に浮かび上がった影には角があった。
山姥!?
小さい頃は、おばあちゃんから、様々な民話や昔話を聞かされていた直江庸介。精神の根本に叩き込まれているのは、そういう世界だ。
からん。ぱたん。じゃなくて、しゅっ、しゅっ、だったら、間違いなく包丁を研いでると思うところだが、この音だって何をしているか解らない。
に、逃げねば・・・!
よろよろと直江は布団から抜けでて、明るい部屋と反対にあるふすまをあけた。

押し入れだった。

・・・に、逃げなきゃ・・・。

別の障子を開けた。

はめ殺しの窓があるだけだった。

に、に、逃げ、な、きゃ・・・。

ずるずると畳の上を這っていると、からり。ぱたん。の音が止まっていた。
き、気づかれた・・・っ!で、でも、動けない・・・!
何分、コート着たままなため、そのコートが敷布団と絡み合って直江の動きを封じている。
どうして人間は恐ろしい時、その恐ろしいものから目が離せないんだろうか。
直江は、近寄ってくる影をじぃーっと見つめていることしかできなかった。

「起きたぁ?」
「ぎゃーーーーー!!!!」
「何がっ!?」
直江の悲鳴に久利生と雨宮が部屋に飛び込んでくる。
「どしたんです!?何!?ハブ!?」
「ハブぅ?」
「南の島にはハブが!」
「石垣にもハブっていんのかな。いないとも言えないけど、ハブ?」
敷布団に絡まっている直江に聞くが、直江は首を振るばかり。そして、倒れたまま、久利生のスネにキックをいれた。
「いって!」
「なんだ、その格好は」
「え?これ?」
久利生は、頭の両側についている妙なアンテナに触れる。
「これってさ、集中力アップなんだよね」
「石垣でも通販やってんですか?」
「島嶼部って、送料高いんだぁ〜」
「それより、直江先生。おなかすいてませんか?夕食作ったんですけど」
「おまえが!?」
「なんですかぁ?私が料理しちゃ、おかしいですか?」
「おまえ!?おまえがぁ!?」

目が覚めてくるにつれ、直江庸介はいつもの直江庸介に戻ってきた。驚愕する久利生にも、作りましたよ!と膨れる雨宮にも目もくれず、
「いや、俺は・・・」
とアルコールと煙草の夕食にしたい気分だったが。
「でも、せっかく作りましたし!」
とちゃぶ台に引きずられていく。
その途中、機織り機があった。さっきの音はこれか、と思うが、なぜ?という疑問は消えない。
そしてちゃぶ台の上には・・・!

どうしていつまでも黒のコートを!?どうして直江先生!

(これは続くね。おそらく)


その68

「もういい加減に石垣島」

<前回の続き>
そしてちゃぶ台の上には・・・!

「なんだこりゃあ」
「なんだこりゃって、見れば解るでしょう」
「いや、見て解らないから尋ねているんだ」
直江は、丁寧な口調で、失礼なことを言う。
「何か変です・・・?」
「何か?今、何かっつったか?何かって!これは、食物(ショクモツ)か!?」
「だから、他に何に見えるんですかぁー!」
「おまえ、コンタクト入ってないだろ!なぁ!」

「ぎく。何故それを」

う、と視線を逸らした雨宮はちゃぶ台の上に、その視線を投げかけていたものの、実際そこにあるものが見えてはいなかった。
「だ、だって!砂浜ダッシュしたじゃないですか!そしたら、転んで、かっ、顔からいったんですけど、でも、誰も助けてくれないし、子供泣いてるし、恥ずかしいし、速攻立ちあがって走ったんですけど、もう、めっちゃくちゃ!目が痛くって!いたーーい!ってひっそり泣いてたんですよ、私ぃ!」
「・・・あれ、そなの?」
「大人の女は人前で泣いたりはいたしません」
「そうだな」
直江は静かに頷いた。
「下手に人前で泣くとつけ込まれる」
「・・・なんで、そんな重たそうに発言するんですか・・・」
「つけ込まれるぞ」
つけ込まれるんだ・・・と、どこか遠くを見ながら呟く直江。
なんだか、恐い・・・と思った久利生たちだったが、あ!と顔をあげる。
「それで、コンタクトどうしたって?」
「あ、それで、ひっそり泣いてたら、コンタクト流れていっちゃって、でもまだちょっと・・・」
「痛いのか」
遠くを見ていた直江は、黒いコートの内ポケットから出してきたもの。それは。
「ぎゃ!目医者さんの!」
「じっとして」
優しい医者の顔になり、すちゃ!と頭に目医者さんグッズを装着した直江は、雨宮の目をじっと覗きこむ。
「あぁ・・・」
「えっ」
「えっ!雨宮の目はもうダメなんですか!」
「私の目はもう!?」
「雨宮には盲導犬が必要!?」
「私の光は!?」
「・・・落ちつきなさい。ちょっと、傷があるみたいだけど、目薬で治せるから大丈夫」
すちゃ、と目医者さんグッズを外し、コートに戻す直江。
そうか。このコートは、言わば、お医者さんバッグなんだ、と久利生は理解した。
そして、それがとても欲しいと思った。
コートの形をしてバッグ・・・!手ぶらなのに、たくさん持てる!欲しい!
しかし、今までの通販番組で見たことがない、ということは、石垣織物(名前テキトー)を趣味で作っている自分が、その布を使って作るべきじゃないのだろうか。
ということは、必要なものはミシン!ぴかちゅうの刺繍ができるヤツ!後は、このコートをひっぺがして、パターンを起こして・・・。
・・・脱げるんだろうな、このコート・・・。この先生から生えてる訳じゃないよな・・・。
じっと直江と、そのコートを見つめる久利生。
じゃあ、この目薬を、と、なんだかどろっとした目覚ましを、黒コートの右ポケットから受け取った雨宮。
それにしても、さっきの子の怪我よりも、よっぽどこっちの方がひどいだろうに。可哀想に、顔も腫れていると、元々ふっくら顔の雨宮に、またも失礼なことを思ってしまっている直江。
思いは千々に乱れつつも、久利生、直江が、ちゃぶ台から目を逸らそうとしているのはごまかしようのない事実だった。

料理経験、家庭科の授業のみ(ただし、教科書通りなので時間はかかるが完璧だった)な雨宮が、視力右、0.03、左、0.06で作った石垣料理(雨宮談)とは一体!?

(どうなっちゃうの!ちゃぶ台の上!)


その69

「石垣だと思ったら大間違い。なんてったってアイドル4」

『中居、いっつもそれ飲んでるけど、美味いの?』
『いや、マズイよ』
『何言ってんの、一口』
『いや、美味しくないってば!』
『一口!』
『ちょっと、こら!零れるってば、もぉ!ちょっと、怒るぞ!も、怒るぞっ!もぉーっ!ちょっとちょちょっと!』

「・・・」
「・・・どぉ」
「いやぁーーー!かぁわいぃぃぃーー!!何、中居って、田中麗奈より可愛いのぅーーー???」
「まぁ、アロエヨーグルトじゃなくて、いいちこだけどな♪」
CMでは、頭に可愛くタオルを巻いている田中麗奈だが、中居は、おっさんくさく手ぬぐいを首から下げている。もちろん、手にしているのは、可愛くスプーンが刺さったアロエヨーグルトではなく、愛想もなーーーーんもない無骨なガラスのコップに入っているいいちこだ。
そのグラスを掲げて、ニヤリ、と笑う中居は、すちゃ、と携帯電話を取り出した。
「は・・・っ!そ、それは・・・!」

『明日朝、早いんだぁ〜。7時だぁ〜。私起こしてあげようかぁ?私、朝、強いよぉ〜?』
とろける笑顔に、作り声で言った中居は、ぴっと電話を切って、かける真似をする。そして、一転低いいつもの声で。
『あ、もしもし、お母さん?明日ね、起こして。絶対よ!』

「ああああぁ〜〜!かぁわいぃ〜〜!」
『私、朝、強いよぉ〜?』
「そうそう、強い強い!」
『明日ね、起こして。絶対よ!』
「でも、嘘なんだぁ〜〜!」
『も、怒るぞっ!もぉーっ!』
「いやぁーー!怒られるぅ〜〜!」
『ちょっと、あなた失礼です』
「なっちゃーーーーん!」
『あり?』
歴代なっちゃんのCMをやりまくる中居に、木村は、床に置かれたいいちこの瓶が倒れるくらいの勢いで、地団太踏みまくった。
近くの部屋にいた人たちは、微震・・・?と思ったらしい。


その70

「今度こそ石垣島」

「じゃ、目薬いれてきます!食べててくださいね!」
明るく雨宮が言って、そしてその場を離れてしまった後、久利生と直江の間には、重たい沈黙が満ちた。
「食べろって言われても・・・」
「色彩が・・・」
南の島の魚は色鮮やかだ。その色鮮やかな魚が、醤油で煮つけられていて、不可思議な色合いになっている。
「これは、熱帯魚なんじゃあ・・・?」
「まぁ、魚は魚だから、食べれるんじゃないの?」
しかし久利生とて、青やら、ピンクやらが鮮やかな魚が、茶色くにごっている様というには、あまり嬉しくない。
そしてその魚に添えられているものは、海草。
南の、色鮮やかな海草が、添えられている。緑やら、赤やら、青やら。
「切ってねーじゃん・・・」
採れたままの、ナチュラルなサイズで。
「うわー、水玉・・・」
メインの魚料理が、食欲をそそらないので、副菜に目をやると。
「こ、これは・・・」
「マカロニサラダと、ポテトサラダ・・・」
簡単お手軽サラダは、マヨネーズたっぷりだ。しかし。
「どうして、黒ずんでるんだ?」
直江の疑問は当然だった。真っ白なマカロニ、明るいアイボリーであるべきポテトサラダが、黒ずんでいる。
「・・・黒酢を使ったな・・・」
「え!」
久利生が好んで借りた家は、古い民家。台所も暗い。暗いけど、電気くらいある。あるのに、夕方の光の中、目もろくにみえないくせに、雨宮はそこで料理をし、手作りマヨネーズまで作った。黒酢で。
そしてできた黒っぽいサラダ。
「ご、ご飯!」
「あ、ご飯、豆ご飯にしましたぁー!」
目薬をさして、ようやく落ちついた雨宮が帰ってくる。
「お豆さんが色々あったから、いいかなと思って」
「・・・おまえ、それって、あのガラスの・・・?」
久利生が雨宮に問い掛ける。
「え?はい。豆のストック」
「・・・それは、オブジェだ・・・」
ガラスの中に、色合いだけを重視して詰められていた豆たちは、食用になるのかどうか、今一つ解らない。
「えっ!?」
もう炊きあがっているからと炊飯器を開けてみると。
「なんか、匂いはいいですけど」
目薬を差しただけで、まだちゃんと目が見えてない雨宮が動物的に発表する。
その雨宮を押しのけて炊飯器をのぞきこんだ、久利生と、直江は、静かにその蓋を閉じた。
「え、だ、ダメ・・・?」
「・・・とりあえず色合いがやだ」
「やだですかぁ?」
「それと多分、だが・・・」
直江は眉間にシワを寄せ、難しい顔で行った。
「あの、黒い小さい粒は、動物性だろうと思う」
「いやーー!言わないでぇーー!!」
久利生が耳を塞ぎ、直江も困った顔になり、雨宮は首を傾げる。
「動物性・・・?虫!?」
「虫だよ、虫!どーすんだよ!この炊飯器!」
「えーー!!なんで虫なんかー!!」
「だから、この豆はオブジェで食用じゃねぇってのに!」
「だったらなんでキッチンになんか置いてるんですか!」
「似合うじゃねぇか!」

きぃーー!!と言い合いをする二人を見ながら、直江は、もう一度ちゃぶ台を見た。今の、炊飯器の中を見てしまった後なら、あのまだらな魚も、黒っぽいサラダも、マシに見えるかもしれないと。

・・・しかし、飽食日本で生まれ育った直江に、それはできなかった。

これなら、昨日まで食べていた、スルメの方がいいに違いない。
直江は、その静かな存在感で、二人に気づかれることなく、久利生のうちを出てビーチに向かう。
日差しはもう傾いているから、黒いコートを着ていても平気だ。
あのイカは美味しかったな、なんてことを思いながら歩く直江。
夕暮れの中、白いなまめかしさが遠くに見える。まだ、干したばかりだろうか。いや、奥にあるのはできているはず。
そんなことを考えていた直江は。

これ以上盗まれてたまるかいーー!!と生産者が自衛手段として掘った落とし穴に見事はまった。

「あ」
「かかったぞぅーー!!」

こうして、直江は干物泥棒として検察に突き出され、だから、こんな入れ物に入っている豆を、またそのままご飯を一緒に炊こうっていうその魂胆が気に入らない!すぐにいれても炊ける訳ねーだろ!とこんこんと雨宮に向かって説教していた久利生から、彼女の倍、こんこんと説教される羽目に陥った。

『あぁ・・・!』
冷蔵庫の中で嘆いているのは、たまねぎドレッシング。
警官の妻が作り、検事さぁ〜ん♪とプレゼントされてきた、血液サラサラ食品。
その他嘆いているのは、これまた警官の妻手作りの味の濃いお豆腐。このお豆腐に、血液さらさらドレッシングで暑い南の島だって、黒いコートを着たまんまで健康的に乗り切れる!はずだったのに。
でも、今度こそ!
たまねぎドレッシングは決意していた。
私の力で、絶対サラサラ血液にして見せる!まってて、直江先生!と、正座させられしびれ切れかけでも表情を変えない直江に熱いメッセージを送りつづけるのだった。

がんばれ!たまねぎドレッシング!直江先生のMMも治してやってくれ(笑)!


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