ステップ・アップ

 インコのトレーニングで最も基本的で効果的なものが「ステップ・アップ」と呼ばれているコマンドです。手乗り訓練の最初におこなわれるこのコマンドは非常に単純なものでありながら、インコと飼い主の適正な距離、結びつきを強め、多くの問題行動の矯正にも用いられています。

 インコは元来高い場所に移ろうとする習性があり、これを利用して飼い主のコマンドとインコの行動に結びつきを生まれさせるのが「ステップ・アップ」トレーニングの目的です。

 インコの腹の前に手を置くと、手をこわがらないインコの場合はその習性で片足をあげ、乗り移ろうとします。片足を乗せてそこが安定していることを確認すると今度は体重を移動させて残りの足も手に乗せてきます。このときにゆっくりと手をすくい上げるのも有効です。逆に手を下げたりひっこめたりすると、ちょうど足を踏み外すような形になり、手に対するインコの信頼を失います。

 以上のような動作に、はっきりとしたやや大きめな声で「ステップ・アップ」と声をかけてやります。はじめのうちはインコが手に乗ったときに声をかけるのがタイミングとしては簡単です。インコが問題無く手に乗るようであればインコが足を上げたときに声かけのタイミングを早めてよいでしょう。鳥の様子をよく観察して、インコが足をあげようと決心するタイミングで「ステップ・アップ」と声をかけられれば、さらに効果的です。言葉の種類はひとつに統一していれば、どの言葉でもかまいませんが、短めできりっとした印象のある語感の言葉を選ぶとよいでしょう。英語の発音が苦手だったり、恥ずかしければ、「おいで」「こっち」などの言葉でもOKです。ただし鳥の名前は他の場面で頻繁に使うので、「ステップ・アップ」コマンドとして用いるのは混乱のもとです。幼鳥時に優良なブリーダーですごしたインコはすでにこの「ステップ・アップ」コマンドを知っていて記憶の中に眠っているかもしれません。

 動作と関連して声かけを同時にするこのトレーニングを繰り返し行うことで、人間の「ステップ・アップ」という声と手に乗るインコの動作がインコの頭のなかで結びつくようになります。「ステップ・アップ」の発声に、毎回躊躇無く、もっと極端に言えば、なかば自動的に手に乗るようになる状態がひとつの目標です。


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