9月に大映時代の座頭市シリーズがボックス化されるのに合わせたのか、北野版座頭市の公開に合わせたのか、ともかくこの二本が DVD化されるのはめでたい。ただちに私に一枚よこしなさい。ポチ。
『新座頭市 破れ! 唐人剣』は、当時『片腕ドラゴン』で日本でも知られた香港のスター、王羽を招き、1971年に作られた安田公義監督作品。この年は、『燃えよドラゴン』で香港カンフーアクションがブームになる3年近く前のことである。そのあたりにも勝新太郎の天才性を感じずにはいられない。どうせならそのまま片腕ドラゴン対座頭市にすれば、あまり類例のない身体障害者ヒーロー対決になったのだが(*注)、さすがにそれは無理だったか? それでも座頭市シリーズとしては異色の対決で、かなり面白かった記憶がある。だが権利関係のせいか、今までビデオ化されたことがない、幻の一本となっていた。なんでも、香港では王羽の勝つバージョンが公開されたらしいが、見たことがないので本当かどうかは知らない。そのバージョンのフィルムは消失したと書いてあるサイトがあった。ところで、私は撮影の牧浦地志のファンで、あんまり彼の名前が語られることはないのだけど、非常に素晴らしいカメラマンだったと思う。『子連れ狼』シリーズなどでの仕事は、眼に焼き付いて忘れられないものだ。再評価、いや、ちゃんと評価してほしい。それから、音楽は、UFO大好き時代の富田勲です。こちらはぜんぜん記憶なし。すまん。
もう一本の『座頭市と用心棒』は、『新座頭市 破れ! 唐人剣』の前年の製作で、岡本喜八が監督した作品。さすがにこっちは用心棒を負かすわけにいかず、『ゴジラ対モスラ』みたいなことになっている。あ、だから音楽が伊福部昭なのか? 撮影は日本の至宝、宮川一夫。なお、このころすでに三船と黒澤の仲は冷えていたはずで、用心棒というキャラクタを黒澤映画以外で使うのはどーなの? という話があったんじゃなかったかと思うが、ちょっとはっきり記憶してません。なんにしろ、その後も三船はテレビシリーズで用心棒風のキャラクタを演じ続けることになる。どのシリーズだったか思い出せないのだけど、森谷司郎が演出した何本かに傑作があったように思う。
こうして書いているとはっきりわかるんだが、昔の日本映画って、才能のあるスタッフがたくさんいた。宮川一夫クラスの人が、どうってことのない娯楽映画(この作品のことではない)を撮ってたりするという、ある意味、ムダに豪華な使い方をされていたのだ。上では書かなかったけど、『座頭市と用心棒』の美術の西岡善信なんて人も、素晴らしい仕事をした方です。いや、現役なんで(最近では『あずみ』)、過去形で語るのは失礼なんだけどさ。
*)訂正
「片腕ドラゴン対座頭市にすれば、あまり類例のない身体障害者ヒーロー対決になった」と書いたが、これはわたしの記憶違いで、王羽の演じたキャラクタには片腕がなかった。訂正し、お詫びします。もう一つ、この話はずっと早い時期に突っ込まれており、訂正記事もすぐ書いていたのだけど、アップするのを2006年の5月まで忘れていました(てっきりアップしたつもりでいたのです)。こちらも合わせてお詫びします。
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