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ここでは、今までにいただいた様々な質問のうち、物語の内容と関わってくるものにお答えしたいと思います。
本を全部読んだ方が、ご覧下さい。 予告なく内容を変更することがあるので、ご了承下さい。 Q1:ギーは人がうそをついていることがわかるのに(p44)、なぜトルンのうそを見抜けなかったのですか? p44を見ると、ギーは接触することで、相手が本当のことを言っているかどうかがわかるようです。 トルンが自分のことを話しているとき(p92)、特にギーは興味を示しませんでした。 リディアでエルがうそをついたとき(p80)は、能力を使わず、推論でうそを見破っています。 頼まれればその能力を使うけれども、あえて自分から使うことは、あまりないのでしょう。 Q2:トルティア高原で馬車に追い抜かれてなにかを叫んだ旅人たちは、「皇帝の手」ザハンに皇帝が代わったことを教えていたのですか? 私としては、暴走馬車や「皇帝の手」に対する悪態というイメージだったのですが、そういうことを教えてくれる親切な旅人だったのかも知れません。(^^) Q3:エルは逃げたいのですか? そうでもないのですか? よくわかりません。 これは作者の叙述が未熟といえば、それまでなのですが……。 やはりギーに対する恐怖が大きかったと思います(特にp83以降)。だから、ギーが止まったとき逃げる決心をするのです。 あとはトルティアへの興味も少しはあっただろうし、ザハンへの情も少しはわいていたので、いまいち逃げたいという切迫感が見られないのではないでしょうか。 また、リディアでジンが助けてくれようとしたとき、エルが逃げなかったのは、人が傷つくよりは、自分が連れていかれた方がましだという感情が働いていたのです。 Q4:「皇帝の手」は強いんですか? 弱いんですか? 当然、強いです。ギーよりは弱いけれども、大盗賊ジンとほぼ互角に打ち合えるというのは、相当の強さです。 Q5:ザハンはエルを途中で捨てて、別の歌のうまい娘と取り替える、という手もあったのではないですか? 確かに。 ザハンほどの男がそういうことを考えないはずがありません。 しかし、別の女の子をさらうというのは、困難な仕事なのです。 カプティア郡はわりに恵まれた地方で、身よりもなく一人で暮らしているような女の子はめったにいません。 そして、農村部の住人はこの政情不安の時世、若い娘やこどもには特に気を使って、なるべく一人で外を歩かせないようにしています。街道一人旅なんて、もってのほかです。 さらに、もし首尾よくトルティアに連れていけそうな娘を発見しても、融通のきかないギーを説得するのが、また大変になります。 そんないきさつが知りたければ、こちらをご覧下さい。→リュナの話 Q6:ギーは皇帝の命令をザハンに守らせるのが任務なのに(p50)、なぜザハンが歌姫でないエルを連れ帰ることには、何も文句を言わないのですか? これは説明不足ですが、「皇帝の手」を手伝うデイゴンは、期限までに帰ることの方を優先させます。 いかに「皇帝の手」が腹心とはいえ、あれだけの強さを持つデイゴンを長期にわたって貸し与えるのは、皇帝にとっては不安なのです。 (デイゴンは自分自身の意志を持つので、皇帝の意に沿わないことは決してしないはずですが) とにかく目的を果たせずとも期限までに戻ってくれば、罰するなり次の命令を与えるなりできるので、皇帝にとっては安心というわけです。 Q7:都市の門は夜は閉じているのではないですか? ザハンはどうやってカプティアに入り、どうやって出たのでしょう? 841年のアウレシア再統一戦争の終結を受け、842年の法令で都市は門を閉じてはいけないことになりました。 ただ、さすがに最近の政情不安を受け、夜は夜警を置くようになりました。 ザハンは入市のさい身分を明かして認められたので、退市のさいはフリーパスでした。 Q8:アウレシアは古代・中世の社会のようなのに、「民主主義」「平等主義」的すぎる。ケルティウス基本法など特に。納得できません。 アウレシア帝国には貴族という特権階級が存在し、国民の参政権は限定的なものなので、現代世界の民主主義とはまた違います。 ですが、奴隷はなく、男女も一応平等、そして「その意に反して生き方を変えられてはならない」と、基本的人権のようなものまで存在するのは、ありえないと思われるかもしれません。 私はこのような世界を意識的に作りました。 なぜアウレシア帝国がこのような国になったのか、読者のみなさんに納得していただけるよう、今後の作品を書き進めていくつもりです。 Q9:ザハンは平民出身で、「皇帝の手」になる前は使用人だったのに、なぜ貴族か兵士にしか許されていない剣の扱いに精通しているのですか? 貴族は他家のものから命を狙われることがあるので、一部の使用人は剣を訓練して貴族を護衛する必要があったからです。 ザハンの場合は仕えていたオーディヌスを護衛するために、剣の腕を磨いたのです。 使用人の身分は兵士でも貴族でもありませんが、一部の護衛は法律で帯剣を認められています(ただし守るべき貴族が近くにいるときのみ)。 参考までに基本法の引用を載せます。 補足第七条 近年暴力を用いて人の自由と財産を脅かす徒党の増加することに鑑み、帝国の平和をより強固なものとするために以下の補足を定める。 帝国暦888年以降、兵士及び別に定める法で許可された者をのぞき、いかなる理由があっても殺人のための武器を携行することを禁ずる。 また、私的な武器取引を禁ずる。さらに、別に定める法による認可を受けていない武器の所有を禁ずる。 (貴族や貴族の護衛、「皇帝の手」は、「法で許可されたもの」にあたる) Q10:「人に差別があってはならない、男女の能力に優劣をつけてはならない」という基本法があるのに支配階級に男性しかいないのはなぜでしょうか? 実はアウレシア人が、「男女は対等である」けれども、「女性は兵士にはなれない」という区別を設けているからなのです。 軍事組織と行政組織が一部融合しているアウレシアでは、郡をたばねる総督も、そして皇帝も軍人でなければならない、つまり男性でなければならない、ということになります。 そのため、現時点で公的に女性がなれる最高位は、各官庁の長官か民会議長となっています。 歴史的にも女帝はいませんでしたが、摂政、大后として権力を握った女性はいたようです。 一方、一時期北アウレシアを支配した諸王国の中には女王を戴く国もあり(p193)、女性が武器をとったこともあったようです。 Q11:リディアでの話ですが、ジンさんがエルを助けようとしてあんなに必死に戦って流血の事態になったにもかかわらず、その後、ジンさんに関してのコメントがないのはなぜでしょうか? 確かにあれだけの大騒動になったのに、馬車に乗ったあとのエルは淡々として、事件に対する自分の思いを明らかにしていません。 正直言って(エルも作者の私も)突然のなりゆきに驚いたことと、もっと大変なことになる前にリディアを去ることでなにかほっとしたことで、それ以上ジンさんたちについて考えることを無意識にさけてしまったようです。 しかし、「二度と皇帝に生活を破壊される人間をつくらせない」というジンさんの熱い思いは、必ずエルに伝わっているはずです。いつかジンさんへのエルの思いが書かれるときがあると思います。 Q12:エルは笛はきちんと吹けるのに、なぜ自分で自分の歌が下手だとわからないのでしょうか? これは、基本的には謎です。しかし、いろいろな理由が考えられます。 まずエルは、歌についてはちゃんと教育を受けていないので、基本がなっていません。 そのために、発声時に正確な音程がとれないようです。(くるった笛のようなもの) そして自分の音程が正しいと思って歌っているので、音程の許容範囲が広い。 そのために、自分では自分の歌はわりとまともに聞こえているけれども、人には不快に聞こえる。 歌に入りこめば入りこむほど、それがひどくなり、リズムもくるうようです。 それに対して、笛はしっかり音程が定まっているので、音をピタッと出せるみたいです。さほど思い入れがないので、冷静に吹くこともできるのでしょう。 ……これは現時点でのひとつの仮説であり、いつか新しい別の理由が明らかにされるかもしれません。 ちなみに、ギーを狂わせたのはエルの声に含まれる超音波だという説が有力です。 以上、言葉たらずの面もありますが、ご理解いただけましたでしょうか。 また質問がございましたら、どうぞお願いします。 |