モトラの話(1999年)

ある日の出来事


「タイヤでケチするもんじゃないのぉ」
 ある日
 とても天気の良い日曜日、中山峠の駐車場でモトラを止めて休んでいました。たまたまそこにピッカピカのシルバーゴリラに乗ったお姉ちゃんと、さらにバリバリのチューニングゴリラの兄ちゃんが来たので声をかけ、見知らぬ三人でモンキー話なんかして楽しい時間を過ごしました。私のモトラはタイヤが丸坊主で、カーカス(補強の繊維)が見えるくらいの状態でして、2人に信じられないという目つきで見られてしまいました。

 その帰り道、先に峠を下っていったチューニングゴリラ氏が、芝生にバイクを止めて困っている場面に遭遇。工具やプラグ等を貸しつつ調べてみると、キャブが詰まっているのか、ガスが燃焼室に来ていない感じで始動しません。彼は友人の車を携帯で呼び、いったん帰ってから自分の車でゴリラを取りにくる事にした様です。さぞかし愛するバイク(しかもただでさえ盗まれやすいゴリラ)を置いて帰るのは不安だろうなと思いつつ私はその場を後にしました。

 その翌日・・・
 モトラで走っていると、タイヤから妙な音がするな・・・と思い縁石に乗り上げたところ、グニャっと後輪が横滑り。直ぐに「タイヤがイッタな」と分かりました。普段からパンク修理剤は持ち歩いているのですが、走行中バコンバコンっと音が聞こえる程ならさすがに修理出来ないだろうと思いました。実際見てみると、露出した繊維部分が2センチほど裂けて大穴が開いていて、たとえ修理剤でチューブだけを塞げたとしても気休めにしかならない事は確実でした。結局、前日の彼の心境を味わう事に・・・。モトラを近所の駐車場に押して行き、5駅分をJRに乗って帰り、車でカバーを持って再度現場に行き、とりあえず一晩置いておく事にしました。あー心配。

 その後、ホンダウイングに行きタイヤを注文。ホンダ純正の部品なら大抵翌日とか中1日とかで届くので、もし在庫があるなら、それを直接現場に持って行き、路上でタイヤ交換しようかと思っていました。しかし、タイヤはブリジストンから取り寄せる上、現在は使われていないサイズのタイヤのため、地元に在庫は無いとの事。ちなみにサイズが合っていれば、どのパターンのタイヤでも良かったのですが全て(と言ってもブリジストンでは三種類)在庫が無いそうです。結局、関東以北には無いらしく大阪から取り寄せることになったのですが、届くまで1週間掛かるとの事。

 さらに翌日・・・
 さすがに1週間もモトラを放置するわけには行きません。結局、車でモトラの後輪だけ外して持って帰り、応急処置をする事にしました。幸運なことに片側のビードが外れていたので簡単にチューブを引きずり出せました。以前、パンクを自分で直そうと思いホイールを開けた事があったのですが、どうしてもビードが外れず、結局諦めて店でチューブを交換してもらった事がありました。どうやらその時、店で外した過去があった為にビードが簡単に外れたようです。
 応急修理
 さて、チューブは自転車用のパンク修理キットで、パッチ張りすることにしました。普通のパンクならこれで十分な筈です。ゴムのり等はキットの物で十分ですが、パッチは大版サイズのハサミで切って使う奴にしました。今回はタイヤ側にも大きな穴がある訳で、ここも裏側からパッチを当てました。チューブとホイールを元通りの位置に組めば、パッチは2重になるので十分だと思います。さらに、裂けた部分が広がらない様に、「シューズドクター」を表面にたっぷり塗り万全(?)の体制をとりました。(シューズドクターは電気のリーク止め、ねじの緩み止め他、応急処置に何かと活躍します。)

 さて、今度は出来あがったホイールをモトラに組みに行きます。人に見られて恥ずかし思いをしながら作業し、なんとか出来あがりました。後は車を置いてモトラで帰る番です。・・・実はモトラを置いていた所は、良く手入れされた社員用マンション(部外者立ち入り禁止の札付き)の物置裏で、盗難の心配は少なかったのですが、管理人に見つかったら追い出されそうな感じでした。幸い今まで見つかる事は無かったのですが・・・モトラをスタートし、走り出した時、なんとも運悪く管理人が帰ってきて鉢合わせになり、エライ怒鳴られてしまいました。なにせこちらはトラブルで弱気になっていたので恐縮するばかり。事情を説明し、車をしばらく駐車場に置いていく事を承諾してもらって帰ってきました。

 暫くあと
 新品のタイヤが届きました。オリジナルと同じブリジストンのレクタングル2です。たしかニットーから出ていたスズキRV90バンバンはレクタングル(の1)を履いていたなぁ・・・とか、タイヤ横に「RE2」って書いてあるけれど「RE711改」の遠い先祖だったりして・・・とか馬鹿なことを思いつつヒゲの生えた新品タイヤを撫でるのでした。思わず撮った写真が上の画像という訳です。どうです!。同じタイヤに見えないでしょう。自慢するのも変ですが、タイヤ君も成仏したのではないでしょうか。


四苦八苦した日

「ホイールがグサグサ」
 上の続きですが・・・。
 新品のタイヤは嬉しいものです。それに交換するのです。当然こんな面白そうな事を店に頼むのは勿体無いです。
 以前、店でチューブを交換してもらった事があります。最初は自分でパンク修理しようと、分割ホイールを開ける事にしたのですが、ボルトを外して中を覗いてみると砂がゴッソリ入っていて、意外にもチューブの内側(ホイールと接触する部分)に穴が開いていて重症。おまけにビード部分がホイールから外れず降参・・・というわけでした。
 ビードの外し薬
 噂に聞いていた通り一筋縄では行きません。新品ホイールでは簡単に外れるそうですが、15年以上前のホイールです。内側が錆びていて、がっちりビードと噛み合っています。あれこれやっても上手く行きません。
 素人レストアラーがこういう時、何はともあれ吹き付けてみる万能薬があります。「クレCRC」。これをホイールとタイヤの間に、流れるくらいタップリ吹き付け、錆に浸透するよう一晩置いてみました。
 翌日・・・
 写真のようにドライバー(私の持っている唯一のスナップオンかも)をビード部分とホイールの間に突き刺しテコの原理でグイッとやると、場所によってずれる事があります。1ヶ所ずれれば、あとは、その周辺をグイグイやって行く事で最後には外す事が出来ました。
 それにしても、ホイール内側の錆はひどいものです。本当は「POR−15」等の錆の上から塗っても効果の有る錆止め剤を塗りたいところですが、どこかに無くしてしまったし、下手な物を塗るとチューブに悪影響与えそうな気もしますし・・・。シリコン系のオイルなら良いのかも知れません。

チェーンの切断

「また自慢のドライバー」

 ついでに・・・
 タイヤを注文したついでに、チェーンも注文しました。それまで使っていた物はかなり伸びていて、しかも場所によって伸び方が違うのでチェーンテンショナーで調整しても上手く行きませんでした。タイヤ同様に「使いすぎ」だったみたい・・・。

 以前はどうだったか知りませんが、現在チェーンは長い物を販売店が切って売る様になっています。私は今回、緊急事態で店に行ったのでモトラのリンク数は知りません。まあ、いつもの様にどうせなら自分でやろうと思い、店のオッチャンに「チェーンカッター無しで切断するには?」と問うた所、「ジスクグラインダ持ってる?それで削るんだよ。」との事。普通そんな物持ってねぇよ!と思いましたが、幸い私はジュジァーロのデザインと聞いて衝動買いした奴を持っており、何とかなりそうな気配。しかし、アレは強烈な音がするし、イタリア人サイズなのか大きくて持ち辛いしで、殆ど使ってないんだよな・・・。

 結局、結論を言いますと、例の唯一のスナップオンをチェーンの隙間に突き立て、プラハンマーでガンガン叩くという一番簡単にして乱暴な方法で解決出来ました。ただ、新品のチェーンはドライバーを突っ込めるだけの隙間が無いので、一寸苦労しますが。

スプロケット交換

「これも工具が・・・。」

 せっかくチェーンを代えるのだからスプロケットもピッタリ合う物にするべきでしょう。写真は新旧のリアスプロケットを重ねた所です。手前に置いた古い方の歯が痩せているのが解るでしょうか。山が尖り、谷が大きくなってます。これだけ痩せていればフロントのスプロケットも同様でしょうが、モトラの場合副変速機があるせいで左クランクカバーを開けるのが面倒。今回は交換しない事にします。

 私はM113というキャタピラ式の装甲車のマニュアルを持っているのですが、それを見ると、キャタピラの伸び、キャタピラのたるみ、スプロケットの減り、等を一枚の変な形の板をゲージにして簡単に確認できるという優れ物が有るのです。多分、他の戦車等にも同様のゲージは有ると思います。そういう物をバイクにもセットして欲しいなぁ・・・と今回は実感。許容範囲がどの程度か感覚的に解り辛いですもの。

 リアスプロケットはリアホイールのハブにリングで止まっています。このリングは手持ちの工具では上手く外せませんでした。これの為にリングプライヤーを買うのもシャクなので、友人のいるガソリンスタンドに行き外して貰いました。さすが専用工具。あっという間に外れました。うーん。あの手この手を使って四苦八苦したのが馬鹿みたい。
(1999年夏)

 後日談・・・
 新しいタイヤで調子にのってオフロードを飛ばして・・・転倒! 左の肋骨に激痛が・・・でも、左側だったのは幸いで、片手運転でなんとか帰る事が出来ました。いいぞカブ系!。

 その後、自然治癒させるつもりでしたが、2週間ほどすると痛みが酷くなって、たまらず病院へ。レントゲンで骨にヒビが入っている事が分かりました。聞くと、ちょうど2週間目くらいが痛みのピークなんだそうです。それを知っていれば我慢したのになぁ・・・。


 なお、後に、副変速機を開けた事もあってフロントスプロケットも交換しました。やはり、スプロケットが減っている場合は、前後同時に交換すべきですね、チェーンがすでに伸びてます。また、リングプライヤーも安くて良いのを買いました。そしてモトラを置いて行く事件が再度・・・次もどうぞ

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