風の中のコロナ

2002年12月4日(水) セデューナ

nishizaki


のんびり準備
morning 一晩中強風が吹き続け、テントがバタバタとうるさく音を立てていたため、熟睡はできませんでした。 朝になっても風が止む様子は全くありません。
一方、地上の強風の割に空の雲の動きは鈍く、一旦太陽が隠れるとなかなか顔を出しません。

天気は心配ですが、ここまで来てしまえばその時を待つだけ。
皆既日食は夕方で、観測場所はすぐ近くの海岸かここになるため移動の心配もなく、午前中は皆のんびりと構えています。

盛り上がりじわじわ
ceduna2 空にはなぜか曲芸飛行の複葉機。
町は前日より人が増え、日食グッズの売れ行きもいいようです。
ceduna3 日食は日没近くの低空で起こるため、眺めのいい場所として人気があるのは海岸。
ほとんどは放送局や日本の旅行社によって占領されています。

風に負けるな
cliff このツアーが用意した専用の観測場所は、海岸の崖の上。 眺めは最高で、海に映る日食を見ることができそうです。
しかし海からの強風が吹き続けていることが大問題。 太陽をアップで撮影しようとすると望遠鏡やカメラが風に揺れること、機材が砂まみれになることを覚悟しなければなりません。

風の弱いテント村を観測場所にする人も多かったのですが、目の前に広がる絶景を捨てるのはもったいないので、この場所で日食を向かえることを決意。
三脚の脚の1本をポールに括り付け、風で動かないように袋に石を入れて脚に結び付けます。

曇天の日食
cloude 雲の動きは相変わらず鈍く、天候は曇りのまま。
空の大部分が雲に覆われています。
青空はわずかしか見えず、日食開始時に太陽の姿を見ることはできませんでした。

皆既日食開始まで1時間しかありません。

雲との勝負
partial 日食が進行し、ようやく欠けた太陽が雲間から見えるようになってきました。
上空の風向きが少し変わったのか雲の移動方向が変化し、雲の切れ間がだんだんと大きくなっていきます。
ほぼ絶望的な状況から、皆既時に切れ間に入るか雲に入るかの勝負、という状況まで改善されてきました。

風との勝負
pinhole 部分食中のひまつぶしであるピンホール像の撮影は困難を極めました。
像がくっきりできる時間が長く続かず、太陽高度が低いためスクリーンとなる紙を斜めにしなければ影と垂直になりません。
しかし強風のため、紙が飛ばないように、揺れないように押さえるだけでも大変。

ジャスト・タイミング
pre-total 皆既日食開始数分前。 太陽が雲の大きな切れ間に入りました。
これまでの雲の動きから考えて、この切れ間で皆既の時をむかえられそうです。

周囲はどんどん暗さを増し、僅かに残った太陽の光が揺れる海面に映る、これまで見たことがない光景となりました。

海を照らすコロナ
海の上で太陽が月に完全に隠されました。
太陽と月の大きさが近いため、赤いプロミネンスと彩層がとても目につきます。

total1 total2
total3 total4

暗い空の中で明るく輝くコロナが、暗い海面をわずかに照らしています。
太陽の真下の空は暗いまま、水平線まで影になり、左右に離れるにつれて明るく赤い空になっていきます。
その感激に浸る時間もなく、わずか30秒余りで、月のふちから太陽の光が溢れ出して皆既日食が終了。

これだけ低い高度の皆既日食を見たのは初めて。 今まで見たことがない、美しい光景でした。
夕日が大きく見えるように、皆既中の太陽がこれまでより大きく見えたように感じます。

やはりジャスト・タイミング
post-total 皆既日食終了後、もう次の雲が太陽に迫ってきました。
皆既の時間が少しずれていたら、場所が少しずれていたら、雲に阻まれてしまったかもしれません。
太陽が欠けたまま海に沈む光景が見られるはずだったのですが、水平線近くは雲が厚く、太陽が見えないまま日没となってしまいました。

皆既継続時間は自分が見た中では最短でしたが、最初にコロナを見た感激を覗けば印象度は一番。
この先何年か見やすい皆既日食はありません。 天が味方し、見事な締めくくりとなりました。


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