2003年5月31日(土) チョルネース半島
そんなわけで、この時期の日の入りが0時近く、日の出が2時過ぎとアンバランスになっています。
つまり、午前1時はちょうど真夜中になるわけですが、夏至まで1ヶ月を切ったアイスランドは照明不要の明るさです。
とりあえず海を見下ろす崖の上で準備開始。
凍えるほどではなないものの気温は低く、風も多少あることから日本の冬並みの服装は必要です。
しばらくしてオレンジ色の太陽が見えてきました。
日本の埼玉付近では太陽は水平線・地平線に対して約54度の角度で上っていきますが、ここでは約34度というとても低い角度。
時間が経っても横滑りしているだけのように見え、なかなか高度が上がりません。
光も弱くなっていますが、直接見たり撮影したりすることはできず、減光フィルターは必要です。
低空の分だけ露出を余計にかけなければいけなかったのですが、計算をミスして露出不足となり、フィルムには部分食が写っていませんでした。
欠けた太陽が写っていたのは、デジタルカメラで撮った速報用のややブレた写真のみ。
しかし時間が経ってもなかなか高度は上がらず、黒い雲の後ろに隠れたまま。
薄雲から漏れている光で太陽の位置はわかりますが、太陽本体の光は見えません。
金環の時刻が近づき、横滑りばかりの太陽にじりじり。
太陽に比べて月の大きさがかなり小さいため、太い輪になっています。
通常なら強烈な光のため、フィルターで減光しなければ肉眼直視したり写真に撮ったりはできません。
しかし程よい厚さの雲のおかげで、太陽の輪をフィルター無しで見ることができました。写真撮影もそのままカメラまかせでOK。
これが皆既日食ならお話になりませんが、金環日食は形さえわかればいいのでこれで十分です。
むしろアイスランド北海岸に浮かぶ金環の光景を、道具を一切使わずそのまま見られるというのは通常味わえない贅沢。
太陽は高度約4度という低空に加え、雲を通しているため太陽は黄色っぽいオレンジ色。
高度が高いと金というより銀やプラチナに近い色になるので、これぐらいの方が金環と呼ぶのにふさわしいとも言えそうです。
その後も太陽は雲に隠れたまま。
結局日食が終わるまで、そしてその日の日没となる20時間後まで、太陽の姿を見ることはありませんでした。
後になればなるほど、あの数分間が夢のように思えます。
唯一残念だったのが、恒例のピンホールによる欠けた太陽像を撮影できなかったこと。
穴あきクラッカーなどを用意していましたが、雲を通した光では像は全くできませんでした。