黄金のビーズ

2005年4月8日(木) ペドレガル

nishizaki


希望の朝
morning 日食当日。
パナマに来てから前日までほとんど見えなかった太陽が、朝から姿を見せています。
この天気なら日食を見られそうという期待を抱きつつも、気温が上がったらまた雲が発生してしまうのではないかという不安もありました。

日食は午後から。
午前中は特にすることがないので、近くの商店街や公園を見物したり、住宅街を散歩して植物を眺めたりして時間をつぶします。

楽々準備
pedregal 午後から前日下見をした観測地に移動。
今回は金環日食の継続時間が短いので、太陽を追尾することにあまり神経質になることはないため、赤道儀を使わず望遠鏡を三脚に載せるだけ。

他の人も三脚だけだったり、赤道儀であってもセッティングが大まかだったりで、すぐに準備が終わりました。

そのうちに近所の子供たちが集まってきました。 望遠鏡の前方に行かないように警備の人にお願いしていたので、皆すぐ後ろではしゃいでいます。
日本語とスペイン語では言葉は通じませんが、日食メガネで交流を図るなどして子供たちに「アリガト」を広めることに成功。

熱帯性どっちつかず気候
cloud 地上の準備は整いましたが、問題は空。
日食開始の時間が近づくとやはり悪い方の予想が当たり、青空が減って雲が広がってきてしまいました。
雲の状態は一定ではなく、濃さや風向きが短時間で変化するので5分先の状態も予想ができません。

曇天日食スタート
thermometer1 雲が晴れないまま日食開始。
日食開始時の気温は32℃。 湿度は測っていませんが、前日までと比べれば間違いなく低くなっているので、少なくとも悪い方向へ向かっているのではなさそうというのが拠り所。

波状攻撃雲
partial 雲には濃淡があり、薄い部分では減光フィルターを付けなければならないほどですが、濃い部分に入ると太陽の姿すら見えなくなります。
全体的に見えない時間の方が長く、時々薄い部分に入ったところで部分日食を撮影。

食が進行するにつれて厚めの雲の面積が多くなり、金環食の30分ぐらい前からは全く見えない状態が続くようになってしまいました。

黄金のビーズ
金環まで10分を切り、いよいよ覚悟をしなければならない時が近づいた思ったその時、太陽付近の雲がやや薄くなってきました。
金環の5分ほど前、雲越しに細く欠けた太陽が出現。
減光フィルター無しでちょうど見られる雲の濃さです。
雲の状態はそこで大体安定し、雲のフィルターを通したまま金環日食の時刻を迎えました。

太陽より月がほんのわずかだけ小さいため、月の周囲の凸凹でとても細い太陽の弧が伸び、切れ切れのリングにつながりました。
糸のように細いというより、雲にカッターで円形の筋を入れて、そこから光が漏れているというような印象です。

計算上では金環食継続時間は13秒でしたが、輪らしく見えていたのは10秒もありません。
ビーズのように切れ切れの光が一歩の筋につながったと思った1, 2秒後には、もう反対側が切れ始めていました。
感動を味わう暇も無く、あっというまに金環日食が終了。

annular1 annular2
annular3 annular4

QuickTime ダウンロード
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影の移動ムービー
shadow 上空を覆った雲に映った月の影が移動する様子の映像です。
5分間が5秒間になるように60倍速に早回ししています。音は入っていません。

画面の下やや左から、上やや右へ向かって大きな影が動いているのがわかります。
中央上方の光が太陽ですが、この映像では明るすぎてつぶれてしまっています。 影の中心がさしかかり、光が一番小さくなった時が金環日食です。

連続奇跡
thermometer2 金環終了時の気温は26℃で、6度下がったことになります。 乾燥地の皆既日食なら10℃ぐらい下がるので、やはり湿度が高いということでしょう。

金環終了後しばらくすると、太陽はまた雲に隠れてしまい、そのまま姿を見せることはありませんでした。
アイスランドに続き、またも雲を通しての金環日食。 細い金環ならと期待したプロミネンスやコロナなどは見られませんでしたが、切れ切れリングの光をそのまま肉眼で見られたことは、全く希望がないと思っていた天候状態を考えれば奇跡的と言えるかもしれません。


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