2001年6月21日(木) チマナ
途中、バスが小学校の前で停車すると、子ども達が金網に突進。
別にそこへ行くわけでもないのに、大声で大歓迎を受けました。
ところが突然、その集団が動き出して、皆一つの方向に向かって走り出しました。
上空をヘリコプターが通過し、何かビラのようなものをまいたのです。
皆既日食を見るときの注意書きか何かでしょうか?
不明のまま、バスは再び走り出します。
最後のガタガタ道を抜け、チマナ中学校に到着。
他の日食グループも集まり、前日よりにぎやかです。
撮影の準備をして昼食を食べているうちに、いつのまにか雲がほとんど消えていました。
日が高くなり気温が上がったおかげでしょう。
とにかくこれで落ちついて日食を迎えられます。
予定通りの時刻に部分日食が始まりました。
恒例のピンホールは、クラッカーの穴と切手の目打ちがやはりいい結果になります。
観測地への移動中に自分で買ったクラッカーより、配られた昼食の中に入っていたクラッカーの方が具合がよかったというのがちょっぴり悔しいところ。
朝方の雲は気温が上がったために消えたのだとすると、気温が急に下がることでいわゆる日食雲が出現する不安もありました。
しかし空はだんだんと暗く、色を失っていくものの、白い雲は姿を見せません。
無事に皆既日食が拝めそうです。
空とは逆に、皆の顔は次第に明るくなっていきました。
写真撮影計画は立てていたのですが、太陽を画面の中心に動かしたりしているうちに大慌てとなってしまい、望遠鏡に付けた2台のカメラがごちゃごちゃ。
シャッタースピードを変えながら段階露出をしていたのですが、一方のカメラだけが予定枚数よりずっと前にフィルムが終わり、巻き戻しが始まってしまいました。
どうやら手でシャッタースピードを操作していたカメラとは違う、もう一方のカメラのレリーズを押していたらしいと気づき、あとはアドリブで撮影続行。
広角レンズの写真は、太陽の近くにあった木星も写ってほぼ狙い通り。
画面の端に豆の木を入れてみましたが、豆のサヤのシルエットはそうと言われなければわかりにくくなってしまったのがやや残念。
カメラでドタバタしてしまいしたが、皆既時間が3分22秒とそこそこ長めだったおかげで、大きく広がり筋のように伸びているコロナを自分の目で見て、双眼鏡の視野で赤く光るプロミネンスを目に焼き付ける時間は十分にありました。
ただ、その一瞬は静止画像として使用でき、速報用としては期待以上のものでした。
日食の写真をその日のうちにネットワーク上に乗せたのは初めてで、これに関しては予想外の大成功。
歓声と共に皆既日食が終了。
遠くの国まで来て見られたという喜び、美しい姿への感激、もう終わってしまったという名残惜しさ、撮影がうまくいかなかったことの後悔と、毎度毎度言葉でうまく表現できない気持ちで一杯になる瞬間です。
温度計を見ると気温は15℃ぐらい。皆既前から比べると15℃も下がっています。
この急激な温度変化でも雲が出なかった幸運に改めて感謝。
しばらくして事情が伝えられ、バス会社でストライキが始まったためとわかりました。 外を見ると他のバスも停まっています。 日食見物で大勢の人が押しかけているため、ここでやるのは確かに効果的。 結局、旅行会社の人が運転手さんにお金を渡し、30分ほどでバスが動き出しました。
なお、もう1台のバスは途中でアクセルが故障し、なんとティッシュペーパーでコヨリを作ってその場をしのいだそうです。
どちらのトラブルも、もしも日食前だったら生きた心地がしなかったことでしょう。
でも日食が終わった後なら、何が起こっても全て笑い話で済みます。