三人の雪童子は、九匹の雪狼をつれて、西の方へ帰つて行きました。
まもなく東のそらが黄ばらのやうに光り、琥珀いろにかゞやき、黄金(きん)に燃えだしました。丘も野原もあたらしい雪でいつぱいです。
|
雪狼どもはつかれてぐつたり座つてゐます。雪童子も雪に座つてわらひました。その頬は林檎のやう、その息は百合のやうにかをりました。
ギラギラのお日さまがお登りになりました。今朝は青味がかつて一そう立派です。日光は桃いろにいつぱいに流れました。雪狼は起きあがつて大きく口をあき、その口からは青い焔がゆらゆらと燃えました。
「さあ、おまへたちはぼくについておいで。夜があけたから、あの子どもを起こさなけあいけない。」
雪童子は走つて、あの昨日の子供の埋まつてゐるとこへ行きました。
「さあ、ここらの雪をちらしておくれ。」
雪狼どもは、たちまち後足で、そこらの雪をけたてました。風がそれをけむりのやうに飛ばしました。
かんじきをはき毛皮を着た人が、村の方から急いでやつてきました。
「もういゝよ。」雪童子は子供の赤い毛布のはじが、ちらつと雪から出たのをみて叫びました。
「お父さんが来たよ。もう眼をおさまし。」雪わらすはうしろの丘にかけあがつて一本の雪けむりをたてながら叫びました。子どもはちらつとうごいたやうでした。そして毛皮の人は一生けん命走つてきました。
|