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宮沢賢治幻燈館 「山男の四月」 12/12 |
そのとき山男は、丸薬を一つぶそつとのみました。すると、めりめりめりめりつ。 |
陳はちやうど丸薬を水薬といつしよにのむところでしたが、あまりびつくりして、水薬はこぼして丸薬だけのみました。さあ、たいへん、みるみる陳のあたまがめらあつと延びて、いままでの倍になり、せいがめきめき高くなりました。そして「わあ。」と云ひながら山男につかみかかりました。山男はまんまるになつて一生けん命遁(に)げました。ところがいくら走らうとしても、足がから走りといふことをしてゐるらしいのです。たうとうせなかをつかまれてしまひました。 |