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私の町の博物館の、大きなガラスの戸棚には、剥製(はくせい)ですが、四疋の蜂雀がゐます。
生きてたときはミィミィとなき蝶のやうに花の蜜をたべるあの小さなかあいらしい蜂雀です。わたくしはその四疋の中でいちばん上の枝にとまって、羽を両方ひろげかけ、まっ青なそらにいまにもとび立ちさうなのを、ことにすきでした。それは眼が赤くてつるつるした緑青(ろくしやう)いろの胸をもち、そのりんと張った胸には波形のうつくしい紋もありました。
小さいときのことですが、ある朝早く、私は学校に行く前にこっそり一寸(ちょつと)ガラスの前に立ちましたら、その蜂雀が、銀の針の様なほそいきれいな声で、にはかに私に言ひました。
「お早う。ペムペルといふ子はほんたうにいゝ子だったのにかあいさうなことをした。」
その時窓にはまだ厚い茶いろのカーテンが引いてありましたので室の中はちゃうどビール瓶のかけらをのぞいたやうでした。ですから私も挨拶しました。
「お早う。蜂雀。ペムペルといふ人がどうしたっての。」
蜂雀がガラスの向ふで又云ひました。
「えゝお早うよ。妹のネリといふ子もほんたうにかあいらしいいゝ子だったのにかあいさうだなあ。」
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