宮沢賢治幻燈館
「黄いろのトマト」 2/15

「どうしたていふの話しておくれ。」
 すると蜂雀はちょっと口あいてわらふやうにしてまた云ひました。
「話してあげるからおまへは鞄(かばん)を床におろしてその上にお座り。」

 私は本の入ったかばんの上に座るのは一寸(ちょっと)困りましたけれどもどうしてもそのお話を聞きたかったのでたうとうその通りしました。
 すると蜂雀は話しました。
(注:このあと、脈絡の合わない一文があり、さらに原稿が抜けているようです)
 その時僕も
『さやうなら。さやうなら。』と云ってペムペルのうちのきれいな木や花の間からまっすぐにおうちにかへった。
 それから勿論小麦も搗(つ)いた。
 二人で小麦を粉にするときは僕はいつでも見に行った。小麦を粉にする日ならペムペルはちゞれた髪からみじかい浅黄のチョッキから木綿のだぶだぶずぼんまで粉ですっかり白くなりながら赤いガラスの水車場でことことやってゐるだらう。ネリはその粉を四百グレンぐらゐづつ木綿の袋につめ込んだりつかれてぼんやり戸口によりかかりはたけをながめてゐたりする。
 そのときぼくはネリちゃん。あなたはむぐらはすきですかとからかったりして飛んだのだ。それからもちろんキャベヂも植ゑた。