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鳥捕りは二十疋ばかり、袋に入れてしまふと、急に両手をあげて、兵隊が鉄砲弾にあたって、死ぬときのやうな形をしました。と思ったら、もうそこに鳥捕りの形はなくなって、却(かへ)って、
「あゝせいせいした。どうもからだに恰度(ちゃうど)合ふほど稼(かせ)いでゐるくらゐ、いゝことはありませんな。」といふききおぼえのある声が、ジョバンニの隣りにしました。見ると鳥捕りは、もうそこでとって来た鷺を、きちんとそろへて、一つづつ重ね直してゐるのでした。
「どうしてあすこから、いっぺんにこゝへ来たんですか。」ジョバンニが、なんだかあたりまへのやうな、あたりまへでないやうな、をかしな気がして問ひました。
「どうしてって、来ようとしたから来たんです。ぜんたいあなた方は、どちらからおいでですか。」
ジョバンニは、すぐ返事しようと思ひましたけれども、さあ、ぜんたいどこから来たのか、もうどうしても考へつきませんでした。カムパネルラも、顔をまっ赤にして何か思ひ出さうとしてゐるのでした。
「あゝ、遠くからですね。」鳥捕りは、わかったといふやうに雑作(ざふさ)なくうなづきました。
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