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ほんのまぐれあたりでもあんまり度々になるとた
うとうそれがほんとになる。きっと私はもう一度
この高原で天の世界を感ずることができる。)私
はひとりで斯う思ひながらそのまゝ立って居りま
した。
ひとみ
そして空から瞳を高原に転じました。全く砂は
ろくしやう
もう まっ白に見えてゐました。湖は緑 青よりも
もっと古びその青さは私の心臓まで冷たくしまし
た。
ふと 私は私の前に三人の天の子供らを 見まし
うすもの
た。それはみな霜を織ったやうな羅をつけすきと
くつ
ほる沓をはき私の前の水際に立ってしきりに東の
空をのぞみ 太陽の昇るのを 待ってゐるやうでし
た。その東の空はもう白く燃えてゐました。私は
天の子供らのひだのつけやうからそのガンダーラ
系統なのを知りました。又そのたしかにコウタン
はいし
大寺の廃趾から発掘された壁画の中の三人なこと
おどろ
を知りました。私はしづかにそっちへ進み愕かさ
ないやうにごく声低く挨拶しました。
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