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それから三日の間は、はげしい地震や地鳴りのなかでブドリの方も、麓の方もほとんど眠るひまさへありませんでした。その四日目の午后、老技師からの発信が云つてきました。
「ブドリ君だな。すつかり支度ができた。急いで降りてきたまへ。観測の器械は一ぺん調べてそのまゝにして、表は全部持つてくるのだ。もうその小屋は今日の午后にはなくなるんだから。」
ブドリはすつかり云はれた通りにして山を下りて行きました。そこにはいままで局の倉庫にあつた大きな鉄材が、すつかり櫓(やぐら)に組み立つてゐて、いろいろな機械はもう電流さへ来ればすぐに働き出すばかりになつてゐました。ペンネン技師の頬(ほほ)はげつそり落ち、工作隊の人たちも青ざめて眼ばかり光らせながら、それでも みんな笑つて ブドリに挨拶しました。老技師が云ひました。
「では 引き上げよう。 みんな 支度して車に乗り給へ。」 みんなは大急ぎで二十台の自動車に乗りました。車は列になつて山の裾を一散にサンムトリの市に走りました。丁度山と市とのまん中ごろで技師は自動車をとめさせました。
「こゝへ 天幕を張り給へ。 そして みんなで眠るんだ。」
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