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みんなは、物を一言も云へずにその通りにして倒れるやうに睡(ねむ)つてしまひました。
その午后、老技師は受話器を置いて叫びました。
「さあ電線は届いたぞ。ブドリ君、始めるよ。」老技師はスヰツチを入れました。ブドリたちは、天幕の外に出て、サンムトリの中腹を見つめました。野原には、白百合(しろゆり)がいちめん咲き、その向ふにサンムトリが青くひつそり立つてゐました。
俄(には)かにサンムトリの左の裾がぐらぐらつとゆれまつ黒なけむりがぱつと立つたと思ふとまつすぐに天にのぼつて行つて、をかしなきのこの形になり、その足もとから黄金(きん)色の溶岩がきらきら流れ出して、見るまにずうつと扇形にひろがりながら海へ入りました。と思ふと地面は烈しくぐらぐらゆれ、百合の花もいちめんゆれ、それからごうつといふやうな大きな音が、みんなを倒すくらゐ強くやつてきました。それから風がどうつと吹いて行きました。
「やつたやつた。」とみんなはそつちに手を延して高く叫びました。この時サンムトリの煙は、崩れるやうにそらいつぱいひろがつて来ましたが、忽(たちま)ちそらはまつ暗になつて、熱いこいしがばらばらばらばら降つてきました。
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