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「先生、けれどもこの仕事は まだ あんまり不確かです。一ぺんうまく爆発しても間もなく瓦斯が雨にとられてしまふかもしれませんし、また何もかも思つた通りいかないかもしれません。先生が今度お出(い)でになつてしまつては、あと何とも工夫がつかなくなると存じます。」
老技師はだまつて首を垂れてしまひました。
それから三日の後、火山局の船が、カルボナード島へ急いで行きました。そこへ いくつもの やぐらは建ち、電線は連結されました。
すつかり仕度ができると、ブドリはみんなを船で帰してしまつて、じぶんは一人島に残りました。
そしてその次の日、イーハトーブの人たちは、青ぞらが緑いろに濁り、日や月が銅(あかがね)いろになつたのを見ました。 けれども それから三四日たちますと、気候はぐんぐん暖くなつてきて、その秋はほぼ普通の作柄になりました。そしてちやうど、このお話のはじまりのやうになる筈の、たくさんのブドリのお父さんやお母さんは、たくさんのブドリやネリといつしよに、その冬を暖いたべものと、明るい薪(たきぎ)で楽しく暮すことができたのでした。
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