聊斎志異より 「画壁」 5/6

壁画を見ると、さっきまでお下げだった少女が高髷(まげ)に結っているではありませんか。
「これは、いったいどうした訳でなのでしょうか」
ふたりが老僧に聞くと、
「この世の出来事はすべてまぼろしです。まぼろしは、それぞれの人が作り出すもの、愚僧ごときに何がわかりましょうぞ」
ふたりは呆然として寺をあとにしたのでした。
 
異史氏曰く(作者の評)──
みだらな心に汚れた境地が生じ、汚れた心から恐ろしい境地が生ずる。
仏は愚かな人々を悟らせるために、さまざまなまぼろしを見せるが、これは自分で自分の心の中に作り出すに過ぎない。
老僧の教えに悟って出家しなかったのは、惜しいことであった。