聊斎志異より 「画壁」 5/6


ところで、こちらは友人の孟(もう)の方ですが、老僧に広くもない庭などを案内されて、もとの建物に戻ってみますと、さっき壁画に見入っていた朱の姿がみえません。
老僧に聞くと、
「説教でも聞きに行かれたのでしょう」と、すましています。
「説教? どこへですか?」
「なに、すぐ近くですぢゃ」
老僧はちょっと笑って、指で壁画の壁をコンコンとたたいたのでした。
「もう、戻られては いかがですかな」
すると、不思議なことに壁画の中に朱の姿が現れ、あたりを見まわして聞き耳をたてているようです。
「お連れさんがお待ちかねですよ」
老僧がそう言うと、朱は壁画を抜け出し、ふわふわとただようようにして床に降り立ったのでした。