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郭が誘拐されてからもう三か月がたっていて、家の者は彼が死んだと思っていたのでした。
後に何人かの友人に話してみたのですが、この不思議なできごとを説明できる人はいませんでした。
巻かれていたふとんで寝るとすばらしい香りがするので、糸をほどいてみると香木の粉をまぜた最高級の綿がはいっていましたから大切にしておりました。
だいぶたってから、この話をどこかで耳にした高官が、郭から直接話を聞くと、
「仙人がそんなことをするものか。これは賈(か)皇后の故事にならったものさ。この話は口外しないことだ。相手の耳にはいったら一族皆殺しだぞ」
と言って笑ったのでした。
身分の高い人の屋敷に出入りする占い師が天界のようすを聞いて、当時絶大な権力をふるう厳東楼(げん とうろう)という高官の屋敷に違いないと言ったから、郭は青くなって家族を連れて都を離れました。
その後、厳東楼が失脚したのを聞いて、また都にもどったのでした。
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賈(か)后は晋(しん)の恵帝(290-306)の皇后で、淫乱で知られ、美男の下級役人を誘拐して天宮だと言って、この話のような形でもてなしたのでしたが、別れのときにもらった高価な贈り物からこの男が窃盗の容疑で調べられ、事件が発覚したということです。
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