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「夜、きれいな花を手に入れ、その香りや手ざわりを楽しんでも、眺めることができなければ、気が狂ってしまうでしょう」
と郭が言うと女は笑って、仙洞と呼ぶいつもの部屋の中であかりをつけることをゆるしたのでした。
そして、夜明け前、また小間使が送って前の部屋にもどりました。
ちょうちんの光で見る仙洞は朱塗りの柱、白壁の美しい部屋で、ベッドや部屋の敷物の厚さは30センチもあるのです。
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夕方になると女が、今度は約束どおりあかりを持ってはいってきました。
それで、一緒に食事をして、ともに寝るのでした。
そんなしあわせな日々がしばらく続いたあと、ある夜、はいってきた女が言うのでした。
「いつまでも、こうして暮らしていたかったのですが、何も思うようにはいかないもので、こんど仙界で大掃除をすることになったので、あなたをお隠ししておくことができなくなりました。今夜、お酒を酌み交わしてお別れの宴といたしましょう」
郭(かく)はがっかりして泣き、使っている化粧品か身につけている物を形見にいただきたいと願ったのでしたが、女は聞き入れず、金の延べ板と真珠百粒を贈ったのでした。
そして杯を上げて二三杯飲むと、郭(かく)はまた最初の時のようにひっくり返ってしまいました。
気が付くと、郭はふとんで巻かれ、ヒモでしばられて自分の書斎にころがっていたのです。
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