蒲 松 齢(ほ しょうれい)作
聊斎志異(りょうさいしい)より
「彭海秋」(ほう かいしゅう)
彭好古(ほう こうこ)という人は山東省莱州(らいしゅう)の生員で、家から遠く離れた別荘にこもって勉強に励んでいました。
中秋の夜、近くに話し相手にふさわしい教養人もいないので、ひとりで月を眺めて酒を飲んでいましたが、どうもものたりません。
ひとり丘(きゅう)という生員がいたのですが、性格が嫌なやつなので、親しくつきあってはいませんでした。
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しかし、月が冴えわたるにつれて、もうがまんできず、使いをやって丘を呼び寄せ、酒を酌み交わしておりました。
と、門の扉をたたく者があって、取り次ぎに出た使用人が知識人らしいと言うので、彭が出迎えて酒宴の席に案内しました。
「揚州からの旅の者ですが、今宵の名月を眺めるにつけても宿の無聊にたえかねて、こちらは名士とうかがい、紹介もなしにおしかけてまいりました」
彭海秋(ほう かいしゅう)と名乗るその人は、服装も話も風雅で好ましい感じで、主人の彭は同姓ということもあって大いに意気投合したのです。
ところが同席の丘(きゅう)のほうは客を見下した態度で話しぶりも横柄ですから、客も皮肉を言い返すというぐあいで、主人の彭は話題を変えようと李白の詩を歌いました。
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