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客は、自分は歌はだめなので代わりの者に歌わせたいと、門の外で待っている者を連れてくるように使用人にたのむのでした。
連れられてはいってきたのは十六ばかりの美しい女です。
いい香りにうっとりとした主人の彭(ほう)は、女の手を取って席につかせました。
「遠路ご苦労でしたね」
客がそう言うので、どこから来たのかたずねると、西湖(せいこ)の船上からとのことです。
「君がさっき歌っていた『情なし男の歌』は、とてもよかった。あれをもう一度歌ってください」
女が歌い始めると、客は靴下の中から笛を取りだし、歌にあわせて吹くのでした。
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「千里のかなたにある西湖から一瞬のうちに人を連れてくるなんて、あなたはどうしても仙人に違いない」
歌が終わり笛の音がやむと、彭はすっかり感心して言いました。
「仙人というほどではありませんが、私には万里の遠くも、すぐ隣と変わりがないのです。今夜は西湖の月見も盛大ですよ。これから出かけてみませんか」
話に聞く仙人についに出会えたというので、彭は大喜びで賛成したのでした。
「おーい! 舟はいないか。西湖まで行くんだ。舟賃ははずむよ」
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