聊斎志異より 「彭海秋」 6/6

その席に何人かの歌姫が呼ばれたのでした。
「娟娘(けんじょう)がいないようだが、どうした」
娟娘は病気でこられないと使用人が答えると、公子は怒って、
「あの女、近頃少しばかり名前が売れて思い上がっているな。首に縄を付けてでも引っ張ってこい」
この三年忘れたことのない名前ですから、彭(ほう)が胸ときめかせておりますと、やってきたのは間違いなくあの月夜の女です。
公子に命じられてお酌に来た女に『情なし男の歌』を歌ったことを憶えているかとたずねると、女は驚いてじっと彭を見つめていましたが、やがてその歌を歌い出しました。
女は公子に彭の接待を命ぜられ、ともにすごしたその夜の寝物語に、仙人の約束のことや、彭のハンカチを大切に持っていることを話しました。

翌日、彭は公子に事情を話し、義兄から借りた金で娟娘を身受けして家に連れ帰ったのでした。
 
のちに、ふたりで別荘に行ったことがありましたが、娟娘は以前の月見の場所をよく憶えていたということです。