蒲 松 齢(ほ しょうれい)作
聊斎志異(りょうさいしい)より
「侠 女」(きょうじょ)
金陵(南京)の顧(こ)という生員は多芸多才の人でしたが、家は貧しく、老母の元を離れる訳にもいかず、自分の書画を売って暮らしていました。
生員は庶民より一段上の教養人なので、その身分につり合う妻を迎える必要があるのですが、それにはお金がかかるし、そんな家柄の娘を貧乏人の家に嫁にやる親もありません。
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そんなわけで、十代後半で結婚する男が多かった当時、二十五歳になっても独身だったのです。
ある日、顧(こ)は母親の部屋から若い女が出てくるのを見かけました。
十七八のすばらしい美人なのですが、顧に挨拶するでもなく、凜として取り付く島もない感じです。
母親に聞けば、空き家だった向かいの家に母とふたりで越してきた人で、裁縫の道具を借りに来たのだということです。
翌日顧の母は挨拶にかこつけて向かいの様子を見に行ったのですが、本心は娘を顧の嫁にと考えたからなのでした。
相手は顧の家に輪を掛けた貧乏で、その日の食べ物にも事欠く様子です。
娘の母親は耳の悪い人で、結婚話に乗り気のようでしたが、娘の方は迷惑そうな様子で返事をしません。
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