「苦しい。あなたはどうしてそんなにつれないのです。少しゆるめて…」と言うのですが、さらに力を入れて押さえつけます。 やがて法海和尚の輿(こし)が着きました。 庄司の家人に助けられてはいってくると、口の中につぶつぶと念じられつつ豊雄をさがらせ、袈裟(けさ)を取ってご覧になれば、倒れた富子の上に三尺ばかりの白い蛇が動かずにおります。
和尚はこれをとらえて弟子のささげる鉄鉢の中に入れました。 なおも念じていると屏風のかげから一尺足らずの小蛇がはい出してきましたから、これも鉢に入れ、袈裟で封 をして輿に乗せれば、人々は手を合わせ涙を流して伏し拝んだのでした。 寺に帰られると堂の前を深く掘らせて鉢を埋めさせ、永劫に世に出ることを禁じられました。
道成寺には今なおこの「蛇(おろち)が塚」があるということです。 その後、庄司の娘は病気にかかり、なくなりました。 豊雄は無事に命ながらえたと伝えられております。 (おわり)