今は昔、夏の頃に、瓜をのせた何頭もの馬を引いて、下人どもが大和(奈良)から京に向かっておりました。 宇治の北にあった(実の)「成らぬ柿の木」という聖木の木陰で馬から荷を下ろして休ませ自分たち用に持ってきた瓜を取り出して食べたりしていました。 すると、その辺に住む人なのか、ひどく年老いた翁(おきな)が、ひとえの着物を紐でとめ、下駄をはき、杖を突いて出て来て、そばで扇を使いながら下人どもの様子をじっと見ていました。 しばらくして翁が、 「その瓜をひとつ、わしに恵んではもらえんかな。のどが乾いてたまらんぢゃ」