「これはわしらの物ではないのだ。かわいそうだから一つくらいは上げたいが、人に頼まれて京に運ぶものなので食べさせるわけにはいかないのだよ」 下人がそう答えると翁は、 「何と不人情な人達ぢゃ。年老いた者を憐れんでこそ良き人というもの。ともあれ、くださらぬとあれば、このじじいが瓜を作って食いましょう」
下人どもは、ばかなことを言うと笑いあっていましたが、翁は落ちていた枝でまわりの地面を耕して畑のようにしてしまいました。 『こいつは何をするのだ』と、下人どもが見守るうちに、翁は吐き捨てた瓜の種を拾い集めて、耕した地面に埋めました。