Web 絵草紙
「外術を以て瓜を盗み食はれたる語」 4/4

下人どもは出発の準備に馬に荷を付けようとすると、籠はあるのですが、中に瓜がひとつもはいっていません。

皆、おどろいて
「何と! 翁はわれらの目をくらまして、この籠から瓜を取り出したのだ」
と、大いに悔しがったのですが、翁はどこに行ったとも知れず、どうすることもできないので、すごすごと大和に帰って行きました。
通行人たちは、これを見て笑ったり不思議がったりしたのでした。
 
けちらないで瓜を二つ三つ与えたら、こんなことにはならなかったのに、翁も物惜しみを憎んでこんなことをしたのでしょう。
翁は人間ではなかったのかもしれません。
その後も、この翁がどういう人だったのか、わからないままに終わったということです。