今は昔、陽成院は冷泉小路を挟む南北二町にまたがる屋敷に住まわれました。 上皇が亡くなられてからは小路は開放され、北の町は人家となり、南には池などが残っていましたが、後にはそこにも人が住むようになりました。 その南の町の屋敷で、夏の夜、暑いので縁側で寝ていた人がありましたが、背丈三尺ばかりの翁(おきな)が現れ、寝ている人の顔をなでまわすのでした。 恐ろしいのでどうすることも出来ず、そのまま寝たふりをしていると、老人はそっと離れて行きました。