Web 絵草紙
「冷泉院の水の精、人の形と成りて捕へられたる語」 4/4

水を入れた大きな盥を前に置くと、翁は首を伸ばし、盥の水に映る姿を見て
「わしは水の精なのぢゃ」と言うと、盥の水にざぶりと落ち、そのまま溶けて見えなくなってしまいました。
すると盥の水が増えて、縁から溢れ、縛った麻縄は結び目のまま、盥の水に浮いて揺れています。
人々はこれを見て驚き、不思議に思っていましたが、やがて盥の水をこぼさないように持って、池に流し込みました。
 
そののち、翁が現れて人の顔をさぐることはありませんでした。
これは水の精が人の形になって現れたものだと、皆が噂したということです。